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・応募から入館
第1話 思い立ったが吉日
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午前十一時、ナオキは自宅のマンションのベッドに寝転がりスマホをいじっていた。起きたのは十時で一時間ずっと生産性のない時間を過ごしている。ああ、なんにもやる気が出ない。
二週間前に仕事をやめた。
高卒で入社して4年間務めた会社だった。地方のリゾートホテルを十数個運営する企業で、ナオキは朝から晩までホテルの部屋や大浴場の品質維持、品質向上のため馬車馬の如く汗水垂らして働いていた……厳しい上司の無理難題と言える条件をこなすため石鹸1つを十円安くしてもらおうと遠方まで出向いて床に届きそうなほど頭を下げたこともある。
勤務中の苦労話は挙げればキリがないその会社をミスしたことを機にいっそこのままとやめてしまった。俺がやめれば仕事が回らなくて大変だろ、そう心の中で思いながらやめることを告げたが、あっけなく人が余っている部署から二人が異動してナオキが抜けたことで空いた穴は埋められ、聞くところによると問題なく仕事は回っているらしい。
なんだかなにもかもアホらしくなった――。自分がいなくても世界は問題なく動き続けている。
適当に転職するか、はたまた今からでも専門学校や大学にでも通ってみようか、これから先のことを考えることから逃げていた。
仕事ばっかりでろくに遊んでこなかったし、趣味といえば映画や海外ドラマの観賞ぐらいで金のかかることもやってこなかったので貯金はそれなりにある。やりたいことがないわけじゃないし、もう1週間ぐらいゆっくり休んだら考えるからしっかり休ませてくれ。
ナオキは1人暮らしの狭い部屋の冷蔵庫からお茶を取り出して飲み、再びベッドに寝転がりスマホのロックを解除した。今日も一日外出せずに先週から始めたソシャゲでもやりながら気になる映画を見るコースだろう――。
何かおもしろそうなことはないかな。SNSのアプリを開いて顔も知らない映画やドラマの好みが似ている人たちの投稿をサーっと眺めた。今日はあまり気にならないくだらない自分語りばかりか――。
ん、なんだこれ?…………挑戦者募集……成功すれば100億円……?
「【挑戦者募集】成功した方には私の財産から100億円プレゼントします。」動画ファイルとどこかへ繋がるURL付きの投稿が10万回も拡散されている。とんでもない額にうさん臭さを感じるが文だけでは気になることだらけなのでナオキは動画を見ることにした。
「こんにちは。オズオワールグループ代表の伊良部和夫です。今日は皆さんにビッグな挑戦を提供させていただきます」
高そうな茶色いスーツに赤いネクタイをつけた50代前半と思われる小太りの男が画面内で話し始めた。オズオワールグループ?どっかで聞いたことがあるような気がする。太陽光の下で木々をバッグにしていて少しニヤついているのがさらに胡散臭そうだが……。
「信じられないことだと思いますが、この先にある建物には身の毛もよだつ幽霊が住みついているんです。しかもそれは1匹ではありません。複数体いるようです。私は中に入ったことがありませんが建物を所有していた方の話を聞く限りではどうやら本当のようです。…………面白いじゃありませんか。私は今回その建物を買い取りました。」
伊良部と名乗る男は木々のほうへ歩き出して山道を歩きながらゆっくりめに話した。そして日本では見慣れないヨーロッパを感じさせる白い洋館が画面内に見え始めて徐々に全貌を見せる。
「私が提供する挑戦とは、この建物内にいる幽霊の調査、また除霊です。危険も伴う挑戦だと思います……。なぜなら過去にこの建物に入って帰ってこなかった者も存在するからです。それでもチャレンジしてやるという気概がある方はこの投稿の応募ファームから挑戦の意を示してください。挑戦者に選ばれて見事成功させた方には謝礼として私から100億円プレゼントします」
……ナオキは数秒固まった後、挑戦する方向で検討した。
二週間前に仕事をやめた。
高卒で入社して4年間務めた会社だった。地方のリゾートホテルを十数個運営する企業で、ナオキは朝から晩までホテルの部屋や大浴場の品質維持、品質向上のため馬車馬の如く汗水垂らして働いていた……厳しい上司の無理難題と言える条件をこなすため石鹸1つを十円安くしてもらおうと遠方まで出向いて床に届きそうなほど頭を下げたこともある。
勤務中の苦労話は挙げればキリがないその会社をミスしたことを機にいっそこのままとやめてしまった。俺がやめれば仕事が回らなくて大変だろ、そう心の中で思いながらやめることを告げたが、あっけなく人が余っている部署から二人が異動してナオキが抜けたことで空いた穴は埋められ、聞くところによると問題なく仕事は回っているらしい。
なんだかなにもかもアホらしくなった――。自分がいなくても世界は問題なく動き続けている。
適当に転職するか、はたまた今からでも専門学校や大学にでも通ってみようか、これから先のことを考えることから逃げていた。
仕事ばっかりでろくに遊んでこなかったし、趣味といえば映画や海外ドラマの観賞ぐらいで金のかかることもやってこなかったので貯金はそれなりにある。やりたいことがないわけじゃないし、もう1週間ぐらいゆっくり休んだら考えるからしっかり休ませてくれ。
ナオキは1人暮らしの狭い部屋の冷蔵庫からお茶を取り出して飲み、再びベッドに寝転がりスマホのロックを解除した。今日も一日外出せずに先週から始めたソシャゲでもやりながら気になる映画を見るコースだろう――。
何かおもしろそうなことはないかな。SNSのアプリを開いて顔も知らない映画やドラマの好みが似ている人たちの投稿をサーっと眺めた。今日はあまり気にならないくだらない自分語りばかりか――。
ん、なんだこれ?…………挑戦者募集……成功すれば100億円……?
「【挑戦者募集】成功した方には私の財産から100億円プレゼントします。」動画ファイルとどこかへ繋がるURL付きの投稿が10万回も拡散されている。とんでもない額にうさん臭さを感じるが文だけでは気になることだらけなのでナオキは動画を見ることにした。
「こんにちは。オズオワールグループ代表の伊良部和夫です。今日は皆さんにビッグな挑戦を提供させていただきます」
高そうな茶色いスーツに赤いネクタイをつけた50代前半と思われる小太りの男が画面内で話し始めた。オズオワールグループ?どっかで聞いたことがあるような気がする。太陽光の下で木々をバッグにしていて少しニヤついているのがさらに胡散臭そうだが……。
「信じられないことだと思いますが、この先にある建物には身の毛もよだつ幽霊が住みついているんです。しかもそれは1匹ではありません。複数体いるようです。私は中に入ったことがありませんが建物を所有していた方の話を聞く限りではどうやら本当のようです。…………面白いじゃありませんか。私は今回その建物を買い取りました。」
伊良部と名乗る男は木々のほうへ歩き出して山道を歩きながらゆっくりめに話した。そして日本では見慣れないヨーロッパを感じさせる白い洋館が画面内に見え始めて徐々に全貌を見せる。
「私が提供する挑戦とは、この建物内にいる幽霊の調査、また除霊です。危険も伴う挑戦だと思います……。なぜなら過去にこの建物に入って帰ってこなかった者も存在するからです。それでもチャレンジしてやるという気概がある方はこの投稿の応募ファームから挑戦の意を示してください。挑戦者に選ばれて見事成功させた方には謝礼として私から100億円プレゼントします」
……ナオキは数秒固まった後、挑戦する方向で検討した。
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