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第4章 ケース3:みなみな私のもの
第41話 震え
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「全部わたしのものなのに……」
3階であるはずの窓からこちらを見ている霊。その顔はより一層ひきつっていた。
「そいつのせいで……」
霊が睨みつける先は春山。たぶん春山が持っている目の付いた芋虫。
音を立てながら割れた窓ガラスは床に散らばった。数メートルはあろう距離から足元まで小さな破片が転がってきて靴にぶつかる。
見当違いで霊もその中へ足を踏み入れてきそうだった。だから、凛太は春山の手を掴んだ。
「ああ……ああ……」
しかし、霊は手すら中に入れずその場にとどまった。そして、こちらを睨みつけたままで頭を抱えて、また痙攣を起こす。
短い痙攣だった……。窓枠から見える上半身が震えた。それが終わると、霊は窓から一瞬で姿を消す……。
霊の行動に気を抜けないまま固まる……一瞬も落ち着けない。そして、次に震えたのは凛太達が立つ床だった。
霊が3階に現れた時と同じように、霊が消えた方角のどこかから大きな音がする。それと同時に足から伝わる小さな振動。外を見なくても感覚で何が起こっているかは分かる。この家に何かが強くぶつかっている。
そして、その何かは1つしかない。いや1人しかいない。
凛太は窓にあまり近づかずに外を確認した。ガラスの破片をゆっくり踏みしめながら、ちょうど正面に見えた夜空に浮かぶ月に近づく。
やけに綺麗に見える……こんな時なのに、いつも月なんて見ることは無いのに凛太は目を惹かれた。
その間も、壁からの大きな音と振動は繰り返された。場所を徐々に変えて……上に下に右に左に。
窓から顔を出さなければ、どうやら確認できそうにない……。別に見ても見なくても状況は変わらないかもしれない。凛太は月を見ながらそう思った。
しかし、凛太は窓に向かって足を踏み出した。大きな音が遠くなる瞬間を計って。
予想通りというと、少し間違っているかもしれない。それが、想像以上に気持ち悪かったからだ。霊が何をしているかはしかと目に捉えることができた。
家の外壁を力いっぱい殴りつけている。壁に張り付き這って移動しながら場所を変えて、腕を振り上げ叩く。壁を這う速さと動きは人のものではなかった。止まっては動くを繰り返し、まるでゴキブリのように壁を這い回る。
その霊と不意に目が合って、霊が凛太に気づくと凛太を狙いに定めて這い寄ってきた。凛太はすぐに身を引いた。
「春山さん。さっきの赤い部屋に行こう。……春山さんっ」
また動けないでいる春山。横に開いた口から見えるは小刻みに震えていた。そんな春山を大声で呼んで動かし、凛太が向かったのは赤い光の部屋だった。
あそこは家の中心部で、窓も一つしかないので家の中では安全で落ち着けそうな場所だと考えた。暗いよりは不気味な光でもあったほうがいい。
短い距離なのに赤い部屋にたどり着いた凛太は息が荒くなっていた。気付かぬうちに息を止めてしまっていた。
「春山さん……大丈夫?」
これから、どうしようか……どうなるのか。そう考えながら、とりあえずで言った言葉だった。この家はあの霊の攻撃にどこまで耐えられるのか。もし、ここまで侵入してきてしまったらと考えるとぞっとする。
「もうこれ以上……家を壊さないで……あの子を止めて」
その時、聞こえてきたのは春山の声ではなかった。それが分かった凛太は急いで声がしたほうを見る。しかしそこにいたのは春山だった。
「喋ってる……」
春山も不可解だというように眉間にしわを寄せてそれを持ち上げた。
「誰か私を助けて……」
喋っていたのは芋虫だった。
3階であるはずの窓からこちらを見ている霊。その顔はより一層ひきつっていた。
「そいつのせいで……」
霊が睨みつける先は春山。たぶん春山が持っている目の付いた芋虫。
音を立てながら割れた窓ガラスは床に散らばった。数メートルはあろう距離から足元まで小さな破片が転がってきて靴にぶつかる。
見当違いで霊もその中へ足を踏み入れてきそうだった。だから、凛太は春山の手を掴んだ。
「ああ……ああ……」
しかし、霊は手すら中に入れずその場にとどまった。そして、こちらを睨みつけたままで頭を抱えて、また痙攣を起こす。
短い痙攣だった……。窓枠から見える上半身が震えた。それが終わると、霊は窓から一瞬で姿を消す……。
霊の行動に気を抜けないまま固まる……一瞬も落ち着けない。そして、次に震えたのは凛太達が立つ床だった。
霊が3階に現れた時と同じように、霊が消えた方角のどこかから大きな音がする。それと同時に足から伝わる小さな振動。外を見なくても感覚で何が起こっているかは分かる。この家に何かが強くぶつかっている。
そして、その何かは1つしかない。いや1人しかいない。
凛太は窓にあまり近づかずに外を確認した。ガラスの破片をゆっくり踏みしめながら、ちょうど正面に見えた夜空に浮かぶ月に近づく。
やけに綺麗に見える……こんな時なのに、いつも月なんて見ることは無いのに凛太は目を惹かれた。
その間も、壁からの大きな音と振動は繰り返された。場所を徐々に変えて……上に下に右に左に。
窓から顔を出さなければ、どうやら確認できそうにない……。別に見ても見なくても状況は変わらないかもしれない。凛太は月を見ながらそう思った。
しかし、凛太は窓に向かって足を踏み出した。大きな音が遠くなる瞬間を計って。
予想通りというと、少し間違っているかもしれない。それが、想像以上に気持ち悪かったからだ。霊が何をしているかはしかと目に捉えることができた。
家の外壁を力いっぱい殴りつけている。壁に張り付き這って移動しながら場所を変えて、腕を振り上げ叩く。壁を這う速さと動きは人のものではなかった。止まっては動くを繰り返し、まるでゴキブリのように壁を這い回る。
その霊と不意に目が合って、霊が凛太に気づくと凛太を狙いに定めて這い寄ってきた。凛太はすぐに身を引いた。
「春山さん。さっきの赤い部屋に行こう。……春山さんっ」
また動けないでいる春山。横に開いた口から見えるは小刻みに震えていた。そんな春山を大声で呼んで動かし、凛太が向かったのは赤い光の部屋だった。
あそこは家の中心部で、窓も一つしかないので家の中では安全で落ち着けそうな場所だと考えた。暗いよりは不気味な光でもあったほうがいい。
短い距離なのに赤い部屋にたどり着いた凛太は息が荒くなっていた。気付かぬうちに息を止めてしまっていた。
「春山さん……大丈夫?」
これから、どうしようか……どうなるのか。そう考えながら、とりあえずで言った言葉だった。この家はあの霊の攻撃にどこまで耐えられるのか。もし、ここまで侵入してきてしまったらと考えるとぞっとする。
「もうこれ以上……家を壊さないで……あの子を止めて」
その時、聞こえてきたのは春山の声ではなかった。それが分かった凛太は急いで声がしたほうを見る。しかしそこにいたのは春山だった。
「喋ってる……」
春山も不可解だというように眉間にしわを寄せてそれを持ち上げた。
「誰か私を助けて……」
喋っていたのは芋虫だった。
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