40 / 45
第4章 ケース3:みなみな私のもの
第40話 探す
しおりを挟む
そうだ……たぶんそうだ。いや、間違いない。ここにいればとりあえず安心かもしれない。
でも、だとしてもこれからどうする……。
「それで、どうするつもりなの春山さん。俺にはもう正直何が何やらで、どうしていいか分かってない。この夢は今どうなってるのか分かる?」
「ごめん。私にも全然分かんない」
「分かんないけど、そいつは助けたいと」
「うん」
もし、相手が思い人で無ければ、カッとなってしまうような発言と状況ではあるけれど、凛太の心に怒りは全く無かった。それどころか、どうやって春山の望みを叶えようか親身になって考えていた。
「たぶんここは安全だ。だからそう仮定して、ゆっくり整理しようか。俺たちはバイト中で、患者さんの悪夢に入った。それは間違いないよね」
「うん」
「で、患者さんと会ってここまで来た。でも、患者さんは幽霊みたいになった」
「じゃあ、あれは患者さんじゃなかった」
「……そうなるね」
言いながら、凛太も頭の中を一つづつ整理整頓していった。さっさと抜け出したくなる赤い部屋の中。緊張状態が逆に頭の働きを円滑にする。
「つまり、患者さんは別にいるのか」
「あ、それだ。本物の患者さんがどこかにいて、その人が夢だと分かってくれればこの芋虫さんを殺さなくて済むよね」
「うん……そうだね」
二人で話し合い、導き出された答えは思いの外シンプルだった。急なことで面を食らってパニックになっていたようだ。でも……。
「でもさ、現実の患者さんの悪夢ファイルは気持ち悪い生物がいるってやつだったよね。やっぱり辻褄が合ってない」
「うーん……今日はたまたま幽霊も出てくる夢を見ちゃってるんじゃない」
「そんな話なの?」
「夢っていつも全く一緒じゃないから。前のバイトでも悪夢ファイルの内容と夢の内容がずれてたことはあるよ」
「へー。じゃあそうなのかも」
「うん、だからこの家にいるかもね本物の患者さん」
話はそういう形に落ち着いて、凛太と春山は家のまだ行っていない場所を探すことにした。別々に分かれて隣の部屋から三階まで、暗いながらも一つずつドアを開けて確認していいく。
その間も霊は襲っては来なかった。静かだった。凛太の予想は確信に変わっていた。けれど、ただ待たれているというのも怖い。家の玄関でただずっとそこにいる。
家を捜索する間も凛太は霊の姿がちらつく。春山には絶対に1階には行かないほうが良いと言っておいた。
しかし、全ての部屋を見終えても本物の患者らしき姿は見当たらなかった。
「そっちもいなかったか……」
「もっとよく探してみようか」
こうなれば収納の中やベッドの下まで、人が入れそうな場所を全て見ていくしかないかと凛太は思った。
しかし、その時止まっていたはずの霊は動いた――。
凛太と春山が行き着いた3階の月明かりが最も差し込む部屋。その壁に何かがぶつかったような大きな音がする。そして次の瞬間、窓が割れる。
「そこで何してんだよ……話が違う」
窓から顔を出し現れたのは霊だった。
でも、だとしてもこれからどうする……。
「それで、どうするつもりなの春山さん。俺にはもう正直何が何やらで、どうしていいか分かってない。この夢は今どうなってるのか分かる?」
「ごめん。私にも全然分かんない」
「分かんないけど、そいつは助けたいと」
「うん」
もし、相手が思い人で無ければ、カッとなってしまうような発言と状況ではあるけれど、凛太の心に怒りは全く無かった。それどころか、どうやって春山の望みを叶えようか親身になって考えていた。
「たぶんここは安全だ。だからそう仮定して、ゆっくり整理しようか。俺たちはバイト中で、患者さんの悪夢に入った。それは間違いないよね」
「うん」
「で、患者さんと会ってここまで来た。でも、患者さんは幽霊みたいになった」
「じゃあ、あれは患者さんじゃなかった」
「……そうなるね」
言いながら、凛太も頭の中を一つづつ整理整頓していった。さっさと抜け出したくなる赤い部屋の中。緊張状態が逆に頭の働きを円滑にする。
「つまり、患者さんは別にいるのか」
「あ、それだ。本物の患者さんがどこかにいて、その人が夢だと分かってくれればこの芋虫さんを殺さなくて済むよね」
「うん……そうだね」
二人で話し合い、導き出された答えは思いの外シンプルだった。急なことで面を食らってパニックになっていたようだ。でも……。
「でもさ、現実の患者さんの悪夢ファイルは気持ち悪い生物がいるってやつだったよね。やっぱり辻褄が合ってない」
「うーん……今日はたまたま幽霊も出てくる夢を見ちゃってるんじゃない」
「そんな話なの?」
「夢っていつも全く一緒じゃないから。前のバイトでも悪夢ファイルの内容と夢の内容がずれてたことはあるよ」
「へー。じゃあそうなのかも」
「うん、だからこの家にいるかもね本物の患者さん」
話はそういう形に落ち着いて、凛太と春山は家のまだ行っていない場所を探すことにした。別々に分かれて隣の部屋から三階まで、暗いながらも一つずつドアを開けて確認していいく。
その間も霊は襲っては来なかった。静かだった。凛太の予想は確信に変わっていた。けれど、ただ待たれているというのも怖い。家の玄関でただずっとそこにいる。
家を捜索する間も凛太は霊の姿がちらつく。春山には絶対に1階には行かないほうが良いと言っておいた。
しかし、全ての部屋を見終えても本物の患者らしき姿は見当たらなかった。
「そっちもいなかったか……」
「もっとよく探してみようか」
こうなれば収納の中やベッドの下まで、人が入れそうな場所を全て見ていくしかないかと凛太は思った。
しかし、その時止まっていたはずの霊は動いた――。
凛太と春山が行き着いた3階の月明かりが最も差し込む部屋。その壁に何かがぶつかったような大きな音がする。そして次の瞬間、窓が割れる。
「そこで何してんだよ……話が違う」
窓から顔を出し現れたのは霊だった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ナオキと十の心霊部屋
木岡(もくおか)
ホラー
日本のどこかに十の幽霊が住む洋館があった……。
山中にあるその洋館には誰も立ち入ることはなく存在を知る者すらもほとんどいなかったが、大企業の代表で億万長者の男が洋館の存在を知った。
男は洋館を買い取り、娯楽目的で洋館内にいる幽霊の調査に対し100億円の謝礼を払うと宣言して挑戦者を募る……。
仕事をやめて生きる上での目標もない平凡な青年のナオキが100億円の魅力に踊らされて挑戦者に応募して……。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
儀式
ケン・G
ホラー
会社を辞めた敦史は飲み屋街で偶然出会った先輩、芳樹にとあるアルバイトに誘われる。
「廃墟に一週間住めば20万出すけど」
不安を感じていた敦史だったが投稿ホラービデオの撮影と言われ承諾する。
足音、笑み、疑心、女、そして儀式。
『盆綱引き』
篠崎俊樹
ホラー
福岡県朝倉市比良松を舞台に据えた、ホラー小説です。時代設定は、今から5年前という設定です。第6回ホラー・ミステリー小説大賞にエントリーいたします。大賞を狙いたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
怪異に襲われる
醍醐兎乙
ホラー
様々な怪異に襲われる短編集です。
救いはありません。
人の抵抗など怪異の前では無力なのです。
それぞれが独立したお話で、繋がりはありません。
カクヨムにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる