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第4章 ケース3:みなみな私のもの
第27話 しょうもない夢
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シャンプーのCMに出ることが出来そうなさらさらとした長い髪、それを携えた背中の後に付いて質素な廊下を歩く。空気に乗って甘い香りも髪が揺れるたびに香ってくる。
桜田は体のパーツ全てが綺麗だった。姿勢やなりふり、纏う雰囲気まで……。
けれど、綺麗すぎて逆に異性としての魅力はあまり感じないタイプだ。桜田の背中を見ながら凛太は勝手に彼女を評価していた。
横を歩くことを考えるとたぶん今まで周りの男たちも手を出す人は少なかったんじゃなかろうか。顔もかわいいが、もう少し体に肉を付けたほうが良い。少々細すぎる。きっと男にしか分からない感覚だけれど……。
悪夢治療室のドアを開けて、院長の馬場に挨拶する。馬場も凛太を見てご機嫌そうに挨拶した。
今日は入る悪夢が怖くないことが分かっているので、気持ちに余裕がある。凛太は意気揚々と装置の中に入った。落ち着いたので入る前から眠気もあった。これから寝てもいいのは嬉しい。
今回は馬場の「おやすみなさい」の気持ち悪い声も聞こえなかった……それほど、快適な眠りだった。
そして、見た悪夢は期待通りしょうもなかった。
夢の中で桜田と降り立った場所には既に患者の姿があった。なんならそこは患者が暮らすマンションの一室だった。
「こんばんは」
パジャマ姿の患者の男に桜田が挨拶すると男は驚いた。男は机にあった眼鏡を急いでかけて、桜田のことをまじまじと見る。
随分驚いていたようだったが、ここはあなたの夢の世界であるということを伝えると、男はすぐに理解した。まだ経験は浅いが、凛太が見て来た悪夢の主の中では断トツで理解が早かった。眼鏡をかけた男は真面目で賢そうだった。
患者の男に夢の中でも話を聞くと「いつもここで寝ようとすると陽気な友達が遊びにやってきてうるさく騒ぐ」といった内容を喋った。
すると、すぐに患者の男の家のチャイムは鳴った。
「おーい。今日はゲームしようぜー。おーいおーい」
チャイムを何度も押しながら、患者の友達らしい男はドア越しに遊びの誘いを発していた。
たしかに、うるさいし考えようによっては怖い悪夢だ。何の脈絡もなく友人が訪ねてきてうるさくされたらたまったもんじゃない。
凛太と桜田は患者の男の代わりにその友人の相手をした。それが今回の悪夢治療の仕事だった。ただそれだけ……つまり一緒に遊んだ。
患者の男が眠りに入る間に、その隣の部屋で凛太はなぜか知らない人とゲームをした。桜田も一緒にコントローラーを握って謎の時間を過ごした。
桜田も患者の男もノリノリでパーティゲームを楽しんでいた。凛太もやったことがないゲームだったので普通に楽しかったが、何のこっちゃというか……色々と突っ込みたくなる時間だった。
次第に眠くなってきて……患者の友人もいなくなり……その悪夢治療は無事に終わった。
気合を入れてバイトに来た自分がアホらしくなる。本当にしょうもない悪夢だった。
さらにそれは、次の患者の悪夢も同じだった。
「夢の中でいつも好きな人に振られる」といった悪夢の中で、桜田がひたすら患者の女の恋愛相談を受けていた。恋愛に自信を無くしたという20代後半の女を桜田がポジティブにポジティブに励ましていた。
凛太はそれを適当に相づちを打ちながら聞いていた……。
これが悪夢だと言われれば、腑抜けていると言いたくなる。けれど、凛太にとってはとってもありがたい悪夢だった。とっても楽にバイトが終わった。
2人の患者の悪夢治療を終えて目覚めると、もうバイトの勤務時間終了10分前だった。目覚めたとき凛太は長い間寝ていて疲れが取れた感覚があった。
それで3日目の悪夢治療バイトが終わった。山場だと思っていた3日目はあっけなく終わってしまった。約束の一週間後まで残すところシフトに入る日は残り1日になった。
桜田は体のパーツ全てが綺麗だった。姿勢やなりふり、纏う雰囲気まで……。
けれど、綺麗すぎて逆に異性としての魅力はあまり感じないタイプだ。桜田の背中を見ながら凛太は勝手に彼女を評価していた。
横を歩くことを考えるとたぶん今まで周りの男たちも手を出す人は少なかったんじゃなかろうか。顔もかわいいが、もう少し体に肉を付けたほうが良い。少々細すぎる。きっと男にしか分からない感覚だけれど……。
悪夢治療室のドアを開けて、院長の馬場に挨拶する。馬場も凛太を見てご機嫌そうに挨拶した。
今日は入る悪夢が怖くないことが分かっているので、気持ちに余裕がある。凛太は意気揚々と装置の中に入った。落ち着いたので入る前から眠気もあった。これから寝てもいいのは嬉しい。
今回は馬場の「おやすみなさい」の気持ち悪い声も聞こえなかった……それほど、快適な眠りだった。
そして、見た悪夢は期待通りしょうもなかった。
夢の中で桜田と降り立った場所には既に患者の姿があった。なんならそこは患者が暮らすマンションの一室だった。
「こんばんは」
パジャマ姿の患者の男に桜田が挨拶すると男は驚いた。男は机にあった眼鏡を急いでかけて、桜田のことをまじまじと見る。
随分驚いていたようだったが、ここはあなたの夢の世界であるということを伝えると、男はすぐに理解した。まだ経験は浅いが、凛太が見て来た悪夢の主の中では断トツで理解が早かった。眼鏡をかけた男は真面目で賢そうだった。
患者の男に夢の中でも話を聞くと「いつもここで寝ようとすると陽気な友達が遊びにやってきてうるさく騒ぐ」といった内容を喋った。
すると、すぐに患者の男の家のチャイムは鳴った。
「おーい。今日はゲームしようぜー。おーいおーい」
チャイムを何度も押しながら、患者の友達らしい男はドア越しに遊びの誘いを発していた。
たしかに、うるさいし考えようによっては怖い悪夢だ。何の脈絡もなく友人が訪ねてきてうるさくされたらたまったもんじゃない。
凛太と桜田は患者の男の代わりにその友人の相手をした。それが今回の悪夢治療の仕事だった。ただそれだけ……つまり一緒に遊んだ。
患者の男が眠りに入る間に、その隣の部屋で凛太はなぜか知らない人とゲームをした。桜田も一緒にコントローラーを握って謎の時間を過ごした。
桜田も患者の男もノリノリでパーティゲームを楽しんでいた。凛太もやったことがないゲームだったので普通に楽しかったが、何のこっちゃというか……色々と突っ込みたくなる時間だった。
次第に眠くなってきて……患者の友人もいなくなり……その悪夢治療は無事に終わった。
気合を入れてバイトに来た自分がアホらしくなる。本当にしょうもない悪夢だった。
さらにそれは、次の患者の悪夢も同じだった。
「夢の中でいつも好きな人に振られる」といった悪夢の中で、桜田がひたすら患者の女の恋愛相談を受けていた。恋愛に自信を無くしたという20代後半の女を桜田がポジティブにポジティブに励ましていた。
凛太はそれを適当に相づちを打ちながら聞いていた……。
これが悪夢だと言われれば、腑抜けていると言いたくなる。けれど、凛太にとってはとってもありがたい悪夢だった。とっても楽にバイトが終わった。
2人の患者の悪夢治療を終えて目覚めると、もうバイトの勤務時間終了10分前だった。目覚めたとき凛太は長い間寝ていて疲れが取れた感覚があった。
それで3日目の悪夢治療バイトが終わった。山場だと思っていた3日目はあっけなく終わってしまった。約束の一週間後まで残すところシフトに入る日は残り1日になった。
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