1 / 45
第1章 バイト探しから勤務開始
第1話 バイト探し
しおりを挟む
先週から大学3年生の夏休みが始まった。前期の講義が終わると、大学生に与えられる2か月の自由な時間が今年もやってきたのだ。
この自由な時間を大学生たちは各々の考えで多種多様な過ごし方をする。実家に帰って体と心を休める者もいれば、プールやキャンプ等の夏イベントでひたすらに遊ぶ者もいる。将来の為に免許や資格を取得しようとする者もいるだろうし、何もせずに寝るだけもそれはそれでよし……。
草部凛太の場合はバイトに打ち込むのが夏休みの計画だった。
凛太も好きに遊びたい気持ちはあった。誰しもそうであることだが、若くて自由な時間を自分が思うように使いたい。しかも大学3年生の夏休みとなるともう後がないのだ。遊ばなくて何をする。
けれど、遊ぶならちまちまとお金のかからない遊びじゃなくて豪勢な遊びがしたいし、旅行に行くなら遠くに長期で行きたい。隣の県じゃなくて北海道や沖縄……なんなら海外旅行にでも。
そんな考えだった凛太はこの夏をお金を稼ぐことに特化して過ごそうと決めた。
夏を犠牲にして冬休みや後期の授業中に自主休講で大いに遊んでやることにしたのだ。もともと暑いよりも寒いが好きだし、泳ぐのが苦手だからプールや海も苦手だったので思いついたときはいい考えだと思った。
午前中、窓を開けて扇風機だけで過ごす一人暮らしのアパートで凛太はスーパーに行ったときにもらった求人雑誌をめくっている。ベッドに寝転んで足をバタつかせながら……。
昨日の夜からインターネットも使って条件の良い求人を探しているのだがこれといったものは見つかっていなかった。職種は飲食店でもスーパーでも何でも良かったし、夏は金稼ぎに専念するつもりなので深夜バイトもありだと思っていた。
でも、ちょっと勤務場所が遠かったり忙しそうに見えたら気分が乗らなくなる。スタッフ達が笑顔で映る写真が載った求人も嫌だった。
条件が良くてもスタッフ写真付きだとなしになる。めんどくさく見えてしまうのだ。同僚たちとこんな風に仲良くならなければいけないのかと、スタッフたちの顔が良くても悪くても気に入らない。
元から人間関係が出来上がっている場所に一人で入っていきたくないし仲良くなれる気もしない。凛太はただのバイト仲間として黙々と仕事できる職場が良かった。コミュニケーション能力が低いと自分で思っている訳ではないけれど。
今日中には決めて応募先へ電話してしまうつもりだった凛太はもう一周求人雑誌を見て特に目ぼしいものがなければ、いくつかチェックしている求人の中で最も時給が良いところに決めることにしていた。
未経験者歓迎……駅から徒歩5分……土日休みOK……様々な謳い文句が書かれた求人を一つずつ時給重視で審査する。そんな時に凛太の目に留まったのは「時給1800円~」という破格の文字だった。
最後にじっくり見た今回以外は気づけなかった、紙の端っこに小さく書かれているその求人。どうせ特別な免許や資格がいるようなものだと思いながらも詳しく見てみると「未経験者歓迎♪」とも書かれていた。
――「睡眠治療サポート 病院雑務」、凛太はバイト先をすぐにそこへ決めた。
この自由な時間を大学生たちは各々の考えで多種多様な過ごし方をする。実家に帰って体と心を休める者もいれば、プールやキャンプ等の夏イベントでひたすらに遊ぶ者もいる。将来の為に免許や資格を取得しようとする者もいるだろうし、何もせずに寝るだけもそれはそれでよし……。
草部凛太の場合はバイトに打ち込むのが夏休みの計画だった。
凛太も好きに遊びたい気持ちはあった。誰しもそうであることだが、若くて自由な時間を自分が思うように使いたい。しかも大学3年生の夏休みとなるともう後がないのだ。遊ばなくて何をする。
けれど、遊ぶならちまちまとお金のかからない遊びじゃなくて豪勢な遊びがしたいし、旅行に行くなら遠くに長期で行きたい。隣の県じゃなくて北海道や沖縄……なんなら海外旅行にでも。
そんな考えだった凛太はこの夏をお金を稼ぐことに特化して過ごそうと決めた。
夏を犠牲にして冬休みや後期の授業中に自主休講で大いに遊んでやることにしたのだ。もともと暑いよりも寒いが好きだし、泳ぐのが苦手だからプールや海も苦手だったので思いついたときはいい考えだと思った。
午前中、窓を開けて扇風機だけで過ごす一人暮らしのアパートで凛太はスーパーに行ったときにもらった求人雑誌をめくっている。ベッドに寝転んで足をバタつかせながら……。
昨日の夜からインターネットも使って条件の良い求人を探しているのだがこれといったものは見つかっていなかった。職種は飲食店でもスーパーでも何でも良かったし、夏は金稼ぎに専念するつもりなので深夜バイトもありだと思っていた。
でも、ちょっと勤務場所が遠かったり忙しそうに見えたら気分が乗らなくなる。スタッフ達が笑顔で映る写真が載った求人も嫌だった。
条件が良くてもスタッフ写真付きだとなしになる。めんどくさく見えてしまうのだ。同僚たちとこんな風に仲良くならなければいけないのかと、スタッフたちの顔が良くても悪くても気に入らない。
元から人間関係が出来上がっている場所に一人で入っていきたくないし仲良くなれる気もしない。凛太はただのバイト仲間として黙々と仕事できる職場が良かった。コミュニケーション能力が低いと自分で思っている訳ではないけれど。
今日中には決めて応募先へ電話してしまうつもりだった凛太はもう一周求人雑誌を見て特に目ぼしいものがなければ、いくつかチェックしている求人の中で最も時給が良いところに決めることにしていた。
未経験者歓迎……駅から徒歩5分……土日休みOK……様々な謳い文句が書かれた求人を一つずつ時給重視で審査する。そんな時に凛太の目に留まったのは「時給1800円~」という破格の文字だった。
最後にじっくり見た今回以外は気づけなかった、紙の端っこに小さく書かれているその求人。どうせ特別な免許や資格がいるようなものだと思いながらも詳しく見てみると「未経験者歓迎♪」とも書かれていた。
――「睡眠治療サポート 病院雑務」、凛太はバイト先をすぐにそこへ決めた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ナオキと十の心霊部屋
木岡(もくおか)
ホラー
日本のどこかに十の幽霊が住む洋館があった……。
山中にあるその洋館には誰も立ち入ることはなく存在を知る者すらもほとんどいなかったが、大企業の代表で億万長者の男が洋館の存在を知った。
男は洋館を買い取り、娯楽目的で洋館内にいる幽霊の調査に対し100億円の謝礼を払うと宣言して挑戦者を募る……。
仕事をやめて生きる上での目標もない平凡な青年のナオキが100億円の魅力に踊らされて挑戦者に応募して……。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
儀式
ケン・G
ホラー
会社を辞めた敦史は飲み屋街で偶然出会った先輩、芳樹にとあるアルバイトに誘われる。
「廃墟に一週間住めば20万出すけど」
不安を感じていた敦史だったが投稿ホラービデオの撮影と言われ承諾する。
足音、笑み、疑心、女、そして儀式。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
『盆綱引き』
篠崎俊樹
ホラー
福岡県朝倉市比良松を舞台に据えた、ホラー小説です。時代設定は、今から5年前という設定です。第6回ホラー・ミステリー小説大賞にエントリーいたします。大賞を狙いたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる