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第18話 嫌われ者
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俺がその現場に辿り着くと、既にいじめっ子3人が寄ってたかって乱暴をする姿がそこにあった。
「うるせえんだよお前、ガタガタ言ってんじゃねえ」
「遊んだら返すつってんだろ」
「お前が口答えするからこうなるんだぞ」
1人を囲んで、殴ったり蹴ったり――。
それを見た俺は走りだす――。どこに行ったか見失って少し遅れてしまった。やっと見つけたのは人気の少ない校舎の裏だった。
「おいやめろお前ら。何やってんだよ」
いじめっ子を押しのけて、庇いに入る。すると、そこには何かを抱えてうずくまる人間っぽい子の姿があった。
さすがに血が出ていたり、ひどい傷はないけれど、思っていたよりひどいことをされている。服や髪が乱れていて、すすり泣くような声を出している。
何かあったのかもしれないけど、小学生がやることにしては酷すぎる……。本当にこいつらがやったのか……。まさか魔物っぽい子は凶暴な性格に成長するとか……。
いや、今はいい……。
「やりすぎだろ。暴力は見過ごせないな」
俺はタナカの肩に手を置いて言った。
「なんだよ、優等生の王子様じゃねえか。俺たちになんか文句あんのか?」
「てめえには関係ねえだろ。あっちいけよ」
しかし、肩に置いた手は払われた。
「関係あるね。同じクラスの仲間だろ。いじめなんてやめて仲良くするんだ?」
「仲間?お前が?」
「なんだよ。ずっと同じクラスじゃねえか」
「ははははは。こいつと俺たちが仲間だってよ」
いじめっ子3人は、声を出して笑う。わざとらしく大きな笑い声だ。
「で、俺たちに何しろって?」
「……だから、謝って二度としないと約束しろ」
「いいぜ。ごめんごめん、悪かった」
「俺にじゃねえよ、こいつにだ。今みたいなふざけた謝り方じゃなくてちゃんと――」
「――嫌なこった」
タナカのほうを向いて話していたら、横から俺の頬にこぶしが飛んできた。1発目から容赦ないグーパン。
痛くはない――。ただ、それで頭に血が上った――。
「あんまり調子に乗るなよ……小学生のガキが……」
「うっせえ。こいつもボコすぞ野郎ども」
最初に向かってきたやつのパンチを躱して足をかける――軽く蹴ってやったので思い通りすっころんだ。次に左右両側から殴りかかってきた2人のこぶしは、両手で同時に受け止めた。そして、手首を180度捻った。
3人は一気にかかってきたけれど、何も問題はなかった。鍛え方が違う。身体能力強化の魔力で身を包めば、自分より体がデカかろうとなんてことはない。
相手のこぶしは文字通りハエが止まったくらいに軽いし、振り上げた段階で距離を詰めて止めることだってできる。仮に当たっても痛くないのでよける必要すらないのだが。
さすがに、怪我をさせるつもりはなかったので手加減した。
けれど、最終的には1人を踏みつけ、残り2人の胸ぐらを掴んで持ち上げる形で、いじめっ子3人との喧嘩は決着した。
「さあ、謝るんだ……」
相手は苦しそうに息を切らしているけど、俺は至って平然。それどころか程よくアドレナリンが放出されていて、弾む鼓動が心地よい。
こちらからは1回も殴ったり蹴ったりしていないが、これでもやりすぎたと思う。俺は、相手がもう向かってこなくなると、瞬時に反省した。少々大人げなかった。
「ほら、早く……これからはクラスの輪を乱すようなことはするなよ」
いじめっ子3人をちゃんと立たせて、人間っぽい子に向い合わせる。
いやあ、いい行いをした――これで、一件落着――。
そう、思っていたのだけど……。
「……ふざけんな」
「ん?」
「……嫌だ。誰がお前みたいな嫌われ者の言うこと聞くかよ。1番クラスの輪を乱しているのはお前だろうがっ」
「え?嫌われ者?俺が……?」
「そうだよ。勉強ばっかで頭でっかちのお前には分かんねえだろうな。お前男子みんなから嫌われてんだよ」
「クラスの仲間でも、友達でも何でもねえのに俺たちにかかわってくんじゃねえよ」
「うぜえんだよ。調子乗んな」
いじめっ子3人は負けを認めたように見えたが、開き直って勢いづき、今度はありったけの言葉の暴力を俺に放った。
「女子にモテようとかっこつけやがって」
「そうそう。いっつも手上げてさ。気持ちわりい」
「強いのだって……そりゃ王様の血を引いて才能があるから強くて当たり前だよ。強くて羨ましいなあっ。才能だけのクソ野郎」
俺は予想外の展開に衝撃を受けて、すぐには何も言い返すことができなかった。
嫌われていたのか……俺は……。
「学校終わったらすぐ帰って、友達と遊んだこともねえかわいそうな奴。いや、そもそも友達なんていねえけど。みんなお前のこと嫌いだから……こいつだってそうだぜ。お前はこいつを助けたけど、こいつも前にお前のこと嫌いって言ってたからな」
さらに、今庇ってあげた人間っぽい子もその言葉を否定しなかった。タナカが指さす方向を見ると、ただ怯えて目を泳がせる少年の姿がそこにあった。
知らなかった……いつからだろう……。
「ちょっとあなたたち!もう休み時間終わって次の授業始まるよ!」
そのタイミングで担任の先生が校舎裏に現れる。
「こんなところで何してるの?もう、服が土で汚れてるじゃない」
「シェード君が遊んでたら急に怒りだして……」
「え?」
「俺たち止めようとしたらちょっと転んだりしちゃって……」
タナカは人が変わったように上手く嘘をついた。俺から見ても本当にそうだったように見える達者なものだった。
「そうなの?シェード君」
「…………」
「まあ何であれ、あなた力が強いんだから遊ぶときは手加減してあげないとね。ほら、皆教室に戻るわよ」
最後にタナカが先生の後ろから、立ち尽くす俺に振り返る。
俺は何も言い返さなかった。何も悪くないのに、俺が悪いことにされたけど……ただ呆然と目の前で起こっている光景を脳に吸収することしかできなかった……。
そうか……そうだったのか……。
「うるせえんだよお前、ガタガタ言ってんじゃねえ」
「遊んだら返すつってんだろ」
「お前が口答えするからこうなるんだぞ」
1人を囲んで、殴ったり蹴ったり――。
それを見た俺は走りだす――。どこに行ったか見失って少し遅れてしまった。やっと見つけたのは人気の少ない校舎の裏だった。
「おいやめろお前ら。何やってんだよ」
いじめっ子を押しのけて、庇いに入る。すると、そこには何かを抱えてうずくまる人間っぽい子の姿があった。
さすがに血が出ていたり、ひどい傷はないけれど、思っていたよりひどいことをされている。服や髪が乱れていて、すすり泣くような声を出している。
何かあったのかもしれないけど、小学生がやることにしては酷すぎる……。本当にこいつらがやったのか……。まさか魔物っぽい子は凶暴な性格に成長するとか……。
いや、今はいい……。
「やりすぎだろ。暴力は見過ごせないな」
俺はタナカの肩に手を置いて言った。
「なんだよ、優等生の王子様じゃねえか。俺たちになんか文句あんのか?」
「てめえには関係ねえだろ。あっちいけよ」
しかし、肩に置いた手は払われた。
「関係あるね。同じクラスの仲間だろ。いじめなんてやめて仲良くするんだ?」
「仲間?お前が?」
「なんだよ。ずっと同じクラスじゃねえか」
「ははははは。こいつと俺たちが仲間だってよ」
いじめっ子3人は、声を出して笑う。わざとらしく大きな笑い声だ。
「で、俺たちに何しろって?」
「……だから、謝って二度としないと約束しろ」
「いいぜ。ごめんごめん、悪かった」
「俺にじゃねえよ、こいつにだ。今みたいなふざけた謝り方じゃなくてちゃんと――」
「――嫌なこった」
タナカのほうを向いて話していたら、横から俺の頬にこぶしが飛んできた。1発目から容赦ないグーパン。
痛くはない――。ただ、それで頭に血が上った――。
「あんまり調子に乗るなよ……小学生のガキが……」
「うっせえ。こいつもボコすぞ野郎ども」
最初に向かってきたやつのパンチを躱して足をかける――軽く蹴ってやったので思い通りすっころんだ。次に左右両側から殴りかかってきた2人のこぶしは、両手で同時に受け止めた。そして、手首を180度捻った。
3人は一気にかかってきたけれど、何も問題はなかった。鍛え方が違う。身体能力強化の魔力で身を包めば、自分より体がデカかろうとなんてことはない。
相手のこぶしは文字通りハエが止まったくらいに軽いし、振り上げた段階で距離を詰めて止めることだってできる。仮に当たっても痛くないのでよける必要すらないのだが。
さすがに、怪我をさせるつもりはなかったので手加減した。
けれど、最終的には1人を踏みつけ、残り2人の胸ぐらを掴んで持ち上げる形で、いじめっ子3人との喧嘩は決着した。
「さあ、謝るんだ……」
相手は苦しそうに息を切らしているけど、俺は至って平然。それどころか程よくアドレナリンが放出されていて、弾む鼓動が心地よい。
こちらからは1回も殴ったり蹴ったりしていないが、これでもやりすぎたと思う。俺は、相手がもう向かってこなくなると、瞬時に反省した。少々大人げなかった。
「ほら、早く……これからはクラスの輪を乱すようなことはするなよ」
いじめっ子3人をちゃんと立たせて、人間っぽい子に向い合わせる。
いやあ、いい行いをした――これで、一件落着――。
そう、思っていたのだけど……。
「……ふざけんな」
「ん?」
「……嫌だ。誰がお前みたいな嫌われ者の言うこと聞くかよ。1番クラスの輪を乱しているのはお前だろうがっ」
「え?嫌われ者?俺が……?」
「そうだよ。勉強ばっかで頭でっかちのお前には分かんねえだろうな。お前男子みんなから嫌われてんだよ」
「クラスの仲間でも、友達でも何でもねえのに俺たちにかかわってくんじゃねえよ」
「うぜえんだよ。調子乗んな」
いじめっ子3人は負けを認めたように見えたが、開き直って勢いづき、今度はありったけの言葉の暴力を俺に放った。
「女子にモテようとかっこつけやがって」
「そうそう。いっつも手上げてさ。気持ちわりい」
「強いのだって……そりゃ王様の血を引いて才能があるから強くて当たり前だよ。強くて羨ましいなあっ。才能だけのクソ野郎」
俺は予想外の展開に衝撃を受けて、すぐには何も言い返すことができなかった。
嫌われていたのか……俺は……。
「学校終わったらすぐ帰って、友達と遊んだこともねえかわいそうな奴。いや、そもそも友達なんていねえけど。みんなお前のこと嫌いだから……こいつだってそうだぜ。お前はこいつを助けたけど、こいつも前にお前のこと嫌いって言ってたからな」
さらに、今庇ってあげた人間っぽい子もその言葉を否定しなかった。タナカが指さす方向を見ると、ただ怯えて目を泳がせる少年の姿がそこにあった。
知らなかった……いつからだろう……。
「ちょっとあなたたち!もう休み時間終わって次の授業始まるよ!」
そのタイミングで担任の先生が校舎裏に現れる。
「こんなところで何してるの?もう、服が土で汚れてるじゃない」
「シェード君が遊んでたら急に怒りだして……」
「え?」
「俺たち止めようとしたらちょっと転んだりしちゃって……」
タナカは人が変わったように上手く嘘をついた。俺から見ても本当にそうだったように見える達者なものだった。
「そうなの?シェード君」
「…………」
「まあ何であれ、あなた力が強いんだから遊ぶときは手加減してあげないとね。ほら、皆教室に戻るわよ」
最後にタナカが先生の後ろから、立ち尽くす俺に振り返る。
俺は何も言い返さなかった。何も悪くないのに、俺が悪いことにされたけど……ただ呆然と目の前で起こっている光景を脳に吸収することしかできなかった……。
そうか……そうだったのか……。
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