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第17話 人間っぽい子と魔物っぽい子

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 次の日も、そのまた次の日もいつもと変わらない学校生活が続いた。

 テストの成績も学年で1番、魔法体育の成績も学年で1番、そんな校内無双生活。授業中に手を挙げれば、皆が頭を抱える応用問題も軽く答えてみせたし……前世で言うところの50m走だとか、シャトルランみたいな体力テストの記録も歴代1位の記録を叩き出してやった。

 前世では中学生レベルの数学が出されたりしても、俺にとっては何も難しいことはない。うっかり書き間違いをしないように気を付けるだけだった。

 学力も運動能力も魔法も、何歳も上のレベルで大人顔負け、そんな俺のことを周りの大人たちは神童だと言った――。俺もその通りだと思う――。

 音楽だとか図工だとか、そういう授業もあって、それらに関しては目立つほど得意では無く、大人しくしていたけれど……。


 学校生活の中で、クラスメイトの子供たちの観察も継続して行った。この世界では王族の暮らししか知らない俺は市民の暮らしも気になったのだ。俺はかなり豪華な部屋に住んでるけど、この子たちはどうなんだろうって。

 好みの授業じゃないときや、問題を解き終わって暇なとき、前の席や隣の席の子をじっと見たり、休み時間になると話し声に耳を傾けたりした。

 感覚で言えば、動物を観察するのに近い。この子はいつもこの時間に同じ行動を取っているな……角がある子は考えるときに自分の角触りがちだな……そういうのを把握していくのが楽しかった。

 別に見下したり、馬鹿にしている訳ではない。ただ、興味があったし、子供ってかわいいなあという気持ちだ。

 魔族は人間に近いほど優秀、それはほぼ間違いなくて、もっと言うとおそらくそこに差別の概念もある。人間に近い魔族が、魔物に近い魔族を下に見ることがある。

 これまた直接教えられた訳ではないけど、図書館で読んだ本や、性格の悪そうな騎士同士が話しているのを聞いたことがあった。

「俺は目が3つなくて良かったぜ――」

「肌に色が付いてたら恥ずかしくて生きていけねえよ――」

 聞いたその時は分からなかったけど、後から差別的な発言だということが分かった。

 俺にはそんな考えはない。肌の色の違いや、体の形の違いがなんだと言うのだ。くだらない。皆同じ国で生まれた1人の人間だ。

 かなり魔物っぽい子と話すときもちゃんと、他の子と変わらぬ態度で接していた。

 ずっとずっと前から――してはいけないと教わってきたことである。生まれ持ったものの違いで人のことを判断してはいけない。人として最低の行為だ。

 俺以外の多くの人も同じ考えだと思う。差別があるらしいと言っても日常的に感じるほどではない。

 特に小学生のクラスでそんなことはない。自分が人間みたいだからと言って同級生の友達をいじめるなんて全くなかった。

 ――けれど、実は最近その逆のことが俺のクラスで起こっていた。

「おいお前、いいもん持ってんじゃねえか。ちょっと貸せよ」

「あ、やめてよ」

「いいだろうが。ちょっとくらい。はいパス」

 1人の悪魔みたいな見た目をしている男子が、人間みたいな男の子から水晶玉を取り上げて仲間にパスする。

「お、なんだこれ?食えんのか?」

「バカっ。食べ物じゃねえよ。もう1回こっちにパスしろ」

 受け取った力自慢のドッスルは水晶玉を食べようとした。たぶん何かの魔法アイテムか、貴重な宝石で食べ物ではないのだが。

「ほいよ」

「ナイスパス!」

「返してよ。それ大事なものなんだ」

 悪魔みたいな子と、鬼みたいな子、そしてもう1人ブタみたいな子。クラスのいじめっ子3人の間を、水晶玉が行き交う。それを少し気弱そうな人間っぽい男の子が追いかける。

 よくあるっちゃよくあるいじめだった。相手の大切なものを雑に扱って遊ぶ。

 こういった光景を見るようになったのはここ数か月のことである。前は皆仲良く遊んでいたのだけれど、クラスの魔物っぽい男子3人が人に悪さをするようになった。人間っぽい子を対象にだ。

 今やられている子ともう1人くらい、嫌がらせをされている子がいる。学校生活に慣れてきたからだろうか、そういう刺激を求めだしたのだ。

 人間っぽい子を標的にしているのはたぶん、自分たちと容姿が違って、現在の腕力で勝てる環境がそうさせているのだと思う。大人になれば立場は逆転するというのに……。

「返してほしかったら、取り返してみろよ。おい、お前ら外行こうぜ」

「待って。お願いだから返して」

 いじめっ子のリーダー格である悪魔っぽい子が言った。悪魔というよりはインプ、体格は小柄だが頭でっかちで、耳がとんがっていた。名前はタナカ、奇跡的に前世でも聞いた名であった。

 タナカは仲間と共に教室の外へ出て行って、それを追って人間っぽい男の子も出て行った。

「はぁ……」

 そして、俺もため息を吐くとそれを追って教室を出た。

 優等生として黙って見過ごすわけにはいかないからである。
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