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word28 「お隣さん 本当の姿」①
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何気なく始まった朝に違和感を感じた。何もかもが作り物のような気がして、自分自身も本当の自分なのか分からなくなる。
見た目はいつも通りの朝だった。澄んだ朝日が窓から差し込んでいて、それに当たると体が暖かくなる。
その暖かさは心まで暖かくして落ち着きを感じられる……と、言いたいところだけど、芯までは届いていなかった。
これが偽りの温もりだと分かっているからだ――。
僕は朝食を無言で口の中に入れていった。あまり好みではないメニューだった。味覚も薄いし食欲もない。それでも食べないと今日一日のエネルギーが不足するからひたすら胃の中に送り込んだ。
食べ終わった後に牛乳を一気飲みしても嫌いな味が舌に残っていたから、僕はいつもより時間を空けずに歯磨きをした――。
「いってきます」
玄関のドアを開ける。起きてから家の中で家族とすれ違っても挨拶は返さなかったけれど、これだけはちゃんと言って家を出た。
外へ出ると、やっぱり空は青くて、いつもの世界がそこにあるだけだった。僕は靴へ入り切っていないかかとを地面を蹴って押し込みながら、いつも通り高校がある左の方向へ曲がる。
スクールバッグを肩にかけてから数歩、僕はちらりと横を見る――。そこには僕の悩みの原因があった――。
他のものと同様にいつもの姿でそこに。昔からあるお隣さんの家だ。ただの変人だと思っていたけれど、その実、宇宙人だと判明したお隣さんの家。2階建てだけど少し瘦せていて、その代わり庭が広い。
知ってから家を見ると、周りの家と同じような雰囲気なのに窓の形なんかも気になってしまう。
確か……お隣さんが僕の家の隣に引っ越してきたのは僕が小学生の頃だったと思う。正確な年や季節は覚えていないけれど、小学生の中でも1年生から3年生くらいの前半だったはず。
そんな時から近くで人生を送っているのに僕はお隣さんについてほとんど知らなかった。
あまり見かけることも無かった。子供がいない家のことを子供は知らない。町内でなにかイベントがあっても、会うのは子供は子供と、大人は大人とだ。
興味もあまりなかった。父や母がお隣さんについて何か話しているのが聞こえてきても耳を傾けようと思わなかった。
ただ知っているのはお隣さんが変わり者であるということだけだった。
お隣さんの噂話で聞こえてくるものは悪い噂ばかりだった。ある時は、いつもは町内の集まりには来ないのにいきなり来て料理を食べるだけ食べて帰っただとか、犬の散歩をしている時にすれ違ったら急に笑顔で犬を撫で始めただとか、深夜に公園で望遠鏡を覗いているだとか、犯罪ではないけどいつか何かやらかしそうみたいな、そんな話ばかりだ。
聞こうとしなくても近所のおばさんや親が話すのが聞こえてきていた。でも僕に向かってそんな話がされたことは無いし、僕が直接お隣さんの奇行を目撃したことは無かったから別にどうでも良かった。
周りの人が変な人だと言っていなければそうは思わなかっただろう。むしろ僕は、自分が直接何かされたわけでもないのに変な人だという風に見るのはやめようという気持ちすらあった。
それでもやっぱり……こうして僕を見ると、必ず立ち止まって両手で手を振ってくるお隣さんと出くわすと、変な人だとしか思えないのだ……。
見た目はいつも通りの朝だった。澄んだ朝日が窓から差し込んでいて、それに当たると体が暖かくなる。
その暖かさは心まで暖かくして落ち着きを感じられる……と、言いたいところだけど、芯までは届いていなかった。
これが偽りの温もりだと分かっているからだ――。
僕は朝食を無言で口の中に入れていった。あまり好みではないメニューだった。味覚も薄いし食欲もない。それでも食べないと今日一日のエネルギーが不足するからひたすら胃の中に送り込んだ。
食べ終わった後に牛乳を一気飲みしても嫌いな味が舌に残っていたから、僕はいつもより時間を空けずに歯磨きをした――。
「いってきます」
玄関のドアを開ける。起きてから家の中で家族とすれ違っても挨拶は返さなかったけれど、これだけはちゃんと言って家を出た。
外へ出ると、やっぱり空は青くて、いつもの世界がそこにあるだけだった。僕は靴へ入り切っていないかかとを地面を蹴って押し込みながら、いつも通り高校がある左の方向へ曲がる。
スクールバッグを肩にかけてから数歩、僕はちらりと横を見る――。そこには僕の悩みの原因があった――。
他のものと同様にいつもの姿でそこに。昔からあるお隣さんの家だ。ただの変人だと思っていたけれど、その実、宇宙人だと判明したお隣さんの家。2階建てだけど少し瘦せていて、その代わり庭が広い。
知ってから家を見ると、周りの家と同じような雰囲気なのに窓の形なんかも気になってしまう。
確か……お隣さんが僕の家の隣に引っ越してきたのは僕が小学生の頃だったと思う。正確な年や季節は覚えていないけれど、小学生の中でも1年生から3年生くらいの前半だったはず。
そんな時から近くで人生を送っているのに僕はお隣さんについてほとんど知らなかった。
あまり見かけることも無かった。子供がいない家のことを子供は知らない。町内でなにかイベントがあっても、会うのは子供は子供と、大人は大人とだ。
興味もあまりなかった。父や母がお隣さんについて何か話しているのが聞こえてきても耳を傾けようと思わなかった。
ただ知っているのはお隣さんが変わり者であるということだけだった。
お隣さんの噂話で聞こえてくるものは悪い噂ばかりだった。ある時は、いつもは町内の集まりには来ないのにいきなり来て料理を食べるだけ食べて帰っただとか、犬の散歩をしている時にすれ違ったら急に笑顔で犬を撫で始めただとか、深夜に公園で望遠鏡を覗いているだとか、犯罪ではないけどいつか何かやらかしそうみたいな、そんな話ばかりだ。
聞こうとしなくても近所のおばさんや親が話すのが聞こえてきていた。でも僕に向かってそんな話がされたことは無いし、僕が直接お隣さんの奇行を目撃したことは無かったから別にどうでも良かった。
周りの人が変な人だと言っていなければそうは思わなかっただろう。むしろ僕は、自分が直接何かされたわけでもないのに変な人だという風に見るのはやめようという気持ちすらあった。
それでもやっぱり……こうして僕を見ると、必ず立ち止まって両手で手を振ってくるお隣さんと出くわすと、変な人だとしか思えないのだ……。
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