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第8話

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 思わぬサプライズデートから数日が経ち、舞踏会を明日に控えた今日。

 任されている公務もなくて部屋でダラダラ休んでいると部屋のドアがノックされ、勢いよく開いたドアに驚いた。

「姫様、姫様!」
「どうかしたのソフィー……」

 いつもなら王女専属侍女としての振る舞いをする彼女がものすごくテンションが高い。

 母専属の侍女頭に見られたらものすごく怒られるだろうというほどに、年頃の女の子のように目を輝かせていた。

 ソフィーからばさっと花束を渡された。それは様々なピンク色の種類の花束だった。

「どうしたのこれ」
「シュタインベック男爵様からの贈り物ですよ!」
「アーデルヘルムから?」

 剣術に人生を全振りして色恋術ゼロのあの男からこんな洒落た贈り物が届くとは思わなくて本気で驚いた。たぶん母に言っても「あの鈍感男が?」と同じように驚くだろう。

 それにこの色はデートの時に私が選んだ宝石の色と同じだ。

 彼の、好きな人の瞳の色と同じだと思って買ったあの色と。

 まさかそのことがバレたとか?いやいや、あの鈍チン男と呼ばれてもおかしくはない男のことだ。単純に私がこの色が好きなんだと思って贈ったに違いない。

「それと、こちらも届いていますよ!」

 一人悶々としていると、ソフィーが廊下に待機していたのか侍女数人を部屋の中に入れる。

 その手にはたくさんの箱が抱えられており、部屋に置かれたそれを開けるとそこには綺麗な緑色のドレスが入っていた。

「これ……」
「明日の舞踏会のドレスですよ!」

 ソフィーが丁寧に取り出して目の前に掲げてくれる。

それは薄い緑色のオフショルダーのドレスで、豪華な大きなフリルにそれに合わせた白いジュップには緑の糸で施された刺繍があり、全体的に落ち着いた雰囲気の私好みのドレスだ。

 長年側にいただけに好みをちゃんと把握しているから憎めない。しかしこれは……

「姫様の瞳の色のドレスを贈るなんて、男爵様もやりますね……!」
「!!」

 やっぱり!? と顔を向けるとソフィーは力強く頷くので顔に熱が集まる。

 無意識なのか意図的なのか分からないが、私の瞳を思い出してドレスを贈ってくれたなんてこんな嬉しいことはない。

 しかも、婚約発表される日に大勢の前で相手の瞳の色のイヤリングをして相手に贈ってもらったドレスを身につける。

 なんだかアーデルヘルム色に染まっているようで恥ずかしい。でも嬉しい。

 王族に産まれたからには政略結婚で好きな人と結ばれることなど到底ないと諦めていた初恋の人と結婚できるなんて、子供の頃の私が知ったらどう思うだろうか。

 あぁ、早く明日になってみんなに私を自慢したい。
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