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最初の村

そりゃ、捨て身ですよもう。

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前世の、小学生のころ、木で酒を造るって本を読んだことがある。
へー、木も食えるんだって思った。

「食えるなら……食品! 食品なら発酵する!! これが俺のチートスキルだ!!」
土煙を上げる中、砦の外側にいた帝国軍は分断できた。
残ったのは、赤い髪の男と老人、あと数人だけ。
えー俺レンは14歳、農作業で鍛えていますが、栄養が足りてない感は若干ありますね。
……ちょっと勝てないかな。

「よくやってくれた」
「え、あの……」
「これで、部下たちが逃げられそうだ。礼を言う」

青い鎧の人! なんでまだここに!?
「逃げてって言ったじゃないですか!」
「団は副官に任せてきた。ここからは……意地と誇りの戦いだ」
「いやいや、あなた死んじゃいますよ!」
「私が逃げれば、少年は生き延びるのか?」
「いや……そうじゃないけど」
「なら、戦おう。王国騎士団の誇りかけてな」

「はー、頭が悪い」
赤い髪の男が首を振る。
「こんな瓦礫、我が精鋭たちと、暫定同盟軍たちはすぐに突破しますよ。おい、ナジーロ」
「はっ」
「あの愚か者たちに、報いを受けさせて差し上げなさい」
「はい、倍加……ファイアボール」
老人が杖を振りかざすと、巨大な火球が現れる。
さっきまでのファイアボールとはレベルが違う。

「はぁ……よかった」
「少年、すまない。死地に巻き込んでしまって」
「うん、まぁ、それはあきらめてるんですけど……」
わずかに、足元が揺れた。

「バレなくてマジでよかったーって」

砦の崩壊は、きっかけに過ぎない。
俺のチートスキルで起こった振動。
「あの……やっぱり木ってなかなか食べ物認定されないみたいで、ちょっと時間かかっちゃって」
「何の揺れだ?」
「木って、根っこで地面を支えてるんですよ。だから、森を切って土砂崩れがー、みたいなニュースよく見てて」
「……何の話だ?」
「つまり……土砂崩れってことだよ!!」
全ての木々をドロドロに溶かされた、谷が崩壊する。

「勝とうなんて思ってない、足止めだけで十分だ!!」

轟音と土埃が、視界を埋め尽くした。
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