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【オメガバース】α嫌いのΩとオメガ嫌いのαが番になった話

10話 やっぱり最低だ【受け視点】

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「いい加減一人の時間が欲しい……」
「そんな寂しい事いうなよ」

懲りずに家に上がり込んでくる源にため息混じりの悪態をつくと、言われた本人は気にもせずしれっと返す。

「一人の時間欲しいとか思わないのか?お前」
「ん?んーそうだな。俺、兄弟多かったせいか、別にっていうか。人の出入りも激しい家だったし」

源は仕事場でも誰かしら一緒にいるか、話をしっぱなしだった気がする。そう思い出している川上は、一人で黙々とこなすタイプで、必要以上のコミュニケーションはしない。

「むしろ誰かしらいた方が気が楽かも」
「……お前末っ子だろ?」
「お、アタリ。そっちは真ん中?」
「………アタリ」
「中間はどこも辛いよなあ」

ケラケラと源は言葉だけの同情を返す。こんな些細な会話でも楽しそうにしているのが川上にとって不思議でならない。それが人を惹きつけるものなのかもしれないが、川上はどことなくこのテンションが苦手だった。

「お前こそ末っ子なのに"央(なかば)"なんて変な名前だな」
「さてなあ。適当に目についたの付けたんじゃないか?」

普通、自分のことは親にとっても特別なものであってほしい。名前も、子を思いやって名付けたもので欲しいと願う。しかし源はどこか他人事のように自分のことも家族のことも話しがちだ。この感覚の違いもアルファなりのものなのだろうかと、川上はどこか訝し気に思うのだった。

「あ、今日は晩飯オレが用意するから先に風呂いけよ」
「いいの?大丈夫か?」
「されてばっかじゃ流石にな」
「んじゃお言葉に甘えて。先風呂行くわ」

夜食といっても、疲れてあまり空腹を感じない。軽いものでいいだろうと、久々に冷蔵庫にあるものでいくつか作る事にした。



   ◆


プシュっと缶ビールの開ける音が静かな夜に響く。

「ぷはーやっぱ風呂上りはコレだよな」

簡単な夜食を作り、並べ終えた頃合いに風呂から上がってきた源が食卓に座り、食前酒と洒落こんでいる。

「お前は飲まない系?」
「好きではないな」

もそもそと自分が並べた食事を口にしていると、ちびちび吞んでは少量を口に運ぶだけの源とは圧倒的に差が出来、まだまだ皿は空きそうになかった。

「ごちそうさま。じゃあオレも風呂行く」
「ん」

源が飲みながら手を振って了解の合図を送る。川上は自分の分の食器を片付け、風呂場に向かい、少し長めにゆっくり浸かったのだった。

川上が風呂から上がると、やっと食べ終わって空になった皿とまだちびちび呑みながらスマホを弄っている源がいた。
簡単なものとはいえ自分が作ったものを完食してくれているのは何だかんだ心に暖かいものを感じる。

「なんだ。まだ飲んでたのか」
「んー…まだ2缶目」
「明日も早いんだから、もう寝支度しろよ」

源の食器を台所へ運び、スポンジに泡をつけて洗う。水道で洗い流し、終わるころに背後に気配を感じた。


「なあ川上ぃ」
「なんだよ」

2缶目とはいえ、若干呂律が回らない口調と共にふわりとビール独特の匂いが漂う。それに気づいた瞬間、ぎゅっと後ろから抱きしめられた。

「っ!」
「やっぱ薬効いてないかも……」
「な、なに」

薬、とはまさか源がアルファの発情・ラットを抑える為の薬のことだろうか。
突然の事で言葉を詰まりながら事の説明を源に求める。

「………したい」
「……っ……」

その低い声を後ろから耳元で囁かれ、思わず肩が跳ねる。

「まだ理性あるし……嫌だったらちょっと外行って頭冷やしてくるけど」

その言葉にハッと現実に戻される。そうだ、明日も早いんだ。こんな事してたら寝坊するかもしれない、しかも病み上がりでまだ朝が辛い。

一言。頭冷やしてこい、バカ。と言えば済む話だ。

それだけだったのに。

そう川上の理性は判断していたはずなのに、気付けば二人は寝室のベッドの上だった。

「ふ……ぅ……っ」

夜闇の薄暗い部屋で、二人の影が重なる。
服を脱ぎ捨てることすら抵抗がなかった。

川上はぼんやり、どうしてこんな事になっているんだろう。と、思いながらも流されるまま身を任せている。

(───ああ、番だから……これが番としてのヒートなんだろうか)

むしろ数日、何もなかったのが奇跡に近かったのだろうか。それとも源がこちらの身体に障らないよう気を使っていたのか。
それはわからない。

ヒートで倒れてしまった時と違うのは、苦しい発情ではないこと。むしろ心地良さすら感じる。
しかし理性では、こんな事をしていたら朝起きれないかもしれない。その警鐘が頭の隅でなり続けているにも関わらず、その通りに身体が制御できない。

源の手が滑るように身体を伝う度に、川上が唇を噛み締め、漏れそうな吐息を抑えている。
そんな姿に、源はぞくりと背筋が震え、欲情するかのようにほくそ笑んだ吐息を漏らす。

「我慢すんなって」
「ん、ぁあっ」

源が川上の首に顔を埋め、番になった時に付けた噛み痕をぺろりと舐める。途端にびくりと身体を震わせて反応した。


「ここ、気持ちいい?」
「や、ちが、」
「じゃ、ここは?」
「んん……!や………!」

源は場所を変えて首に何度も吸い付き、痕を残していく。その間も川上は小さく喘いでいた。

「も、そこ、やめ、」
「ん、わかった」

源がようやく口を離すと、耳元に唇を寄せられる。

「んぅ……う」

体中が過敏になっているのか呼吸をする吐息だけで、ぞくりと全身が粟立つのが分かる。その間も身体の際どいラインを手で辿られていて、思わず腰をよじりだしてしまう。

それを合図と取ったのか、源が下半身のそこへと手を伸ばす。そこは濡れそぼってきていてはいるが、まだ潤いが足りないと判断したのか源がサイドテーブルに置いておいたローションを手に取る。そこに潤いを足されて解されていくだけでゾクゾクと体中がしびれていく感覚が川上に走る。

「っ、く……うぅ」
「痛くない?」

色情の熱毒と、微かに残った理性で頭が溶けそうな川上はこくこくと頭を上下させるしかできなかった。

「ん、よかった」
「あ、あ、あ……!」

ゆっくりと指を出し入れされるだけでも、そこからじんわりとした快楽が川上の思考を鈍らせていく。
二本目を入れ、指を拡げながら内壁を刺激していき、次第に三本入る頃には、川上の理性と表情はぐずぐずに蕩けてしまっていた。

体勢を変え、仰向けにした川上の腰の位置に源が移動すると、ゴムを取り付け、ゆるゆるとローションと愛液で滴るそこへ源のものが擦り付けられていく。
それを藻けきった川上は恍惚と期待の目で見守り、擦り付けられている部分が欲しがるようにきゅうきゅうと蠢いているのがわかる。

「欲しい?」
「……っ」

その言葉に顔を赤く染めた川上だったが、素直に首を縦に振る。すると、源はその光景を見て満足そうに口角を上げた後、一気に貫いた。

「っ、うく…あ…っ!」

中へ挿入されたそれはどくんと脈打ち、すぐにでも達してしまいそうになるのを源は堪えていた。
川上の方も、入れられた衝撃で軽くイッてしまったのか、ぴゅっと精が溢れ出ている。

呼吸を整えるためにしばらくじっとしていると、サイドテーブルに置いていた源のスマホが鳴った。恐らく電話のコール音だ。
気にはなったものの、源もきっと放っておくだろうと川上は思った。しかし、源はその電話をあろうことか取り、川上は目を見開く。

「はい」
「………っ!?」

取ってもすぐに切るだろうと思った。しかし源は、こんな状況なのに普通に、いつも通りに会話していた。
それどころか、こちらをチラリと見て、口角を上げて源は楔を動かし始めた。

「っ、っ、……!!」

咄嗟に口を手で塞ぎ、信じられないという気持ちで源を睨みつける。しかし相手はむしろ楽しんでいるかのように口角を歪ませた。

「ん、今?飲み会?……ちょっと身体動けそうにないから……悪いな」

ゆっくりと、ねっとりとした腰の動きは川上に甘い痺れを与え、激しくはないのに確実に身体に快楽を響き渡らせていた。

「うん、……うん。今度埋め合わせする」

源は相槌を打ちつつ、律動を続ける。

「ん、また連絡するわ」
「ふ……ん、んん……ん……!」

電話を切った事に気付かず、川上は声を抑える事に必死だった。
すると源は律動を次第に激しく奥へと叩き込み始めた。


「や、やめ、ぁああ……ッ!」

その激しさに思わず覆っていた手が外れ、思わず堰き止めていた声があふれ出して止まらなくなる。
そんな川上の反応を楽しむように、源は動きを止めなかった。

「ひ、ぅああッあ、くっ、あぁア……ッ!」
「く……っ、はあ……!」

身体の奥がきゅうきゅうと蠢き、相手のものを絞り出すように収縮しているのを同調するように源にしがみつくように足を絡ませて、お互いに果てた。

───アルファという生き物はやはり理解できない生き物だと、ぼんやり川上は思いながら、その重たくなっていく意識をゆっくり沈ませていった。
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