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【名有】不感症な受けは単なる開発不足でした♡

2話 埋めるべきもの

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「ごめん……少し、少しだけ触りたかっただけなんだ……」

そこには普段は頼もしくて優しい浅海ではなく、縮こまって、まるで咄嗟に犯罪を起こしてしまった人のように、絞り出す声で懺悔を続けていた。

「ち、ちが、……お、オレこそ……ごめん」

いくらなんでも過剰反応だったかもしれない。必死だったせいで忘れていた事が色々湧き上がり、罪悪感で胸がいっぱいになりそうだった。

「いや、俺が悪かった。………ごめん、今日は居間で寝るから……」

「っ……──!」

本当にこのままでいいのだろうか。このまま、今日起きた事を、明日なかったようにしていいのだろうか。いつかは話し合わなきゃいけなかった事だった。そのせいで、浅海は、爆発した。浅海の優しさに甘えてばかりいたせいで、乗り越えるべきものを放置してきた結果がこれならば、何かしなきゃ、もっと浅海に辛い思いをさせてしまう。

「まって……」

「………ごめん、俺、一緒にこれ以上居たら、ほんと、ダメだから……」

「違うんだ」

好きという気持ちは本当。浅海だから一緒にいたかったのも本当。
女の子とも付き合った事がなくて、そもそも色恋沙汰にすら興味がなくて。
いや、興味がないフリをしていただけなのかもしれない。

今、向き合わなきゃ、きっと先延ばしにし続けてしまう。

「オ、オレ、こういう事どうしたらいいかわからなくて。それで……」

「………無理、しなくていい。……ごめん、いま俺、余裕、ない、から……話は明日に……」

「………慣れたい」

「え?」

「その、反応、うまくできないと思うけど」

触れて欲しい。触れたい。

「ね、いま、オレに出来る範囲で……してみない?」

そう浅海に告げた。

浅海がゴクリと生唾を飲んだ。

「で、できる範囲って……その」
「今のオレじゃ……できない、かな?」

行為をするのは色々デリケートな問題だ。過程はどうあれ一度拒否を示した相手と向き合うのは相当ハードルが高くなるだろう。
ましてや拙くて疎い自分では尚更だ。下手にやり直すよりも、お店とかに行った方が持ち直せるかもしれない。

「………気持ち悪くない?」

浅海は少し考えるように時間を置いてから、努めて自分に落ち着かせるような口調で、訪ねてくれた。

「へ、へいき……」

本当は怖い。正直、なんの前触れもなく、身体を触られて戦慄が走った感覚もまだ残っている。
でもこのままこの気持ちを放っておいたら、恐らく自分はもっと億劫になるだろう。

なにせ男同士だ。手でするくらいなら、きっと友達くらいの距離感でもできるに違いない。
自分のものだと思えばいい。
問題なのは、自分のものをそう扱った時が、下手くそな余り時間がかかった上に疲れるだけの作業感で終わるばかりだった事だ。処理に困って、致し方なく行ったのだが、そうなる度に面倒だ、またか、という気持ちでしかなかった。
どういう訳か、これまで生きてきてあまり女体にも興味が薄く、なんとなく目が惹かれるものだが、オカズとして扱ってみてもピンとこず、かといってどう扱けば気持ちいいのかわからないまま今日に至っている。そういう話題で周りが盛り上がっていても、へぇそうなんだ、と合わせる程度がせいぜいだ。

そんな状態で、初めて他人のモノに触れるのかと思うと自信がある方がおかしかった。
友達同士でも、そんな事をするんじゃないかと思った偏見は、あくまでイメージ。
冷静に考えれば考えるほど、他人にデリケートな部分を晒したり、触れたりするのは正気でとても出来ない。

「………そっか………うん、じゃあ……」

ぐるぐる考えが巡っていると、浅海の声にハッと我に返った。

「して………みる?」

浅海が、重なりそうなくらい顔を近づけて、熱を孕んだ表情と声で、そっと手で頬を触れた。
その熱が、伝染してきたのか、心臓がバクバクとしてきて、くらりと一瞬めまいがした。

   ◆

───たしかに言った。いまの自分の出来る範囲なら、いいよと。……けど………これは初心者には上級すぎないだろうか。

「そのまま身体を擦るだけだから大丈夫だと思うけど……なにか辛かったら言ってね。……すぐにやめられないかもしれないから……その、それなりに何回か暴れてみてもいいから……」

後ろから聞こえる浅海の声は震えている。緊張しているというよりは押し寄せている興奮を必死に抑えているせいも感じた。
………押し付けられている熱を持ったソレが、そうであると証明するかのように。

先ほどの拒絶で萎える事なく、その硬度を保ったソレは、いま自分の足の根本の間に差し込まれている。
濡れることがないそこに、本番のような滑りを足す為にローションをお互いに擦りこんで。
下半身を空気に晒し、足の間の生々しい感触は、気持ちいいかと聞かれれば傾けることは難しいが、浅海が自分を求めてくれているのが嬉しい気持ちだけでどうにか耐えていた。
対面でなく、背面である事が救いで、添い寝をするようにお互い連なって、浅海が自分の首元で呼吸を深呼吸に務めながらも荒い呼吸を繰り返し、腰をゆっくりと様子を見て動かしていく。

生暖かい感触と脈打つソレは、何か別の生き物のように自分の足の間を擦りつけられていくと、今まで感じた事がないゾワリとしたものが脳天に届く。浅海が「もう、すこし……足、締め付けれる?」と耳元で囁やくと甘い痺れのようなものを感じ、ビクリと肩を震えた。

心配そうに「……大丈夫?」と聞き返されてコクコク小刻みに頭を傾けるのが精いっぱいで、指示通り、足の間をより閉じるように力を入れる。浅海の声は先ほどよりも余裕がなくなってきているようだ。

「───っ……!」

浅海のものをもっと包み込むよう力を入れると、更に生々しい実感が伴い、その慣れない感覚に肌が泡立つ。

「あ……やばい……ほんとに、シてる……みたい……っ」

緩やかだった腰の動きだった浅海が、高揚してきたのか回した腕をより強く抱き込んで密着し、腰は肉の触感をしっかり感じるように擦り上げてくる。
ぐちゅくちゅぬちゅぬちゅと粘液の音と、浅海の吐息で鼓膜が犯され、身体の反応はおぼつか無いながらも自分も本当に交わっているような感覚に襲われてくる。欲情を向けられる事に恐怖しか感じなかったのが、自分の身体で興奮して必死に快楽を求めている浅海に愛しさを感じ始めた。

こちらの身体に回されている腕をギュッと抱きしめ、気持ちだけでもひとつになろうと浅海の興奮を必死に受け止める。

「あ……でる、みと、りぃ……!」
「っ、あさ、み……!」

びくんと腰を痙攣させて、浅海は自分の太ももに熱を吐き出した。それからしばらく、空気を求めた荒い呼吸が収まるまで、そのままお互いの感触に浸っていた。
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