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受け視点~現在③【※登場人物に女性追加】
22話 いじわる
しおりを挟む「ん………」
二つの唇が重なり合う。体温と鼓動を感じながら、ただお互いの存在を感じるだけの触れ合いだ。そっと離れていくと、閉じていた瞳が交差して、照れくさく少し顔を背ける。
「本当に……こんなんで……いいの?」
散々色々な事をしたというのに、甘酸っぱい青春のような口づけだけで別れようとしている事に照れくさくて顔がどうにも火照ってしまう。
「そりゃもう。君を少しでも感じれるだけで今日も一日頑張れるよ。ありがと……じゃあもう時間だから行くね」
「あ、うん……がんばって、ね」
先ほどまで抱き寄せてくれていた腕が離れ、心地良い体温が離れていく事に名残惜しさを感じながら、彼を見送った。
───あれから、少しの時間でいいからと社内でも逢引を再開していた。もちろん濃厚な行為を繰り返すほどの時間はないけれど、抱きしめたり、キスをするだけでいいから、と彼の要望に押されたからだ。ちょっと触れてはすぐに離れてしまう時間というものに、あまり価値は見いだせなかったけれど、これはこれでいいかもしれない。と、回数を重ねる毎に自分も思うようになってきた。
あまりにもお互いに深く繋がりを求めすぎて、もっと単純な触れ合いの大切さを忘れてしまっていた気がする。彼にゆっくり会う機会が減ってしまった事は寂しいけれど、それはゆっくり会う機会が出来た時の楽しみにとっておこう。少ない時間でも会うようにしてから、無性に身体を持て余してしまう事にも減ってきたように思う。
と、いいつつ自分もそう余裕を見れる訳でもなく、食事の時間も惜しい時すらある。まずは現実を乗り越えてからにしよう。
「よし、今日も頑張るか」
パンと頬を叩いてから仕事に向かった。
休憩室を出るのはできるだけ時差をつけるようにしている。シフトも確認できるだけは確認しておき、人気のない時間を狙ってはいるが、念には念を入れるに越した事は無い。
自分の席に戻ると、この間仲良くなった同僚たちがデスクに噛り付き、必死にキーを打っている。自分が戻った事も気づかないほど集中している様子だ。この間、仲良くなった女性も、今日ばかりは余裕がなさそうだった。
ふう、と一息吐いてからポケットに入れていたスマホをデスクに置こうとすると、着信がある事に気付いた。
(あれ……彼からだ……?)
つい気になってそのメッセを開くと、ぎょっと目を見開くハメになってしまった。
『君が一人でシてる時って、俺としてる時とは違う可愛さがあるよね』
(!?!?)
以前にもまるで一人でシてる時を見られているようなメッセを貰ったことがあった。まさか本当に……?
メッセは二件あり、二件目も見て見るとそれは確信に変わった。
『でも最近あまりシてないね。どうしたの?』
ぶわ、と顔から火を噴きそうになる。やはりだ。それにしても何故いまこのタイミングで送ってくるのだろう。彼はストレスが溜まってくると、妙に意地悪な時がある。恐らく、仕事の付き合いのストレスを逃がす為に、息抜きにこちらを辱めて気を紛らわしているのだろうか。きっとこちらが羞恥心を抱いている事を面白がっているのだろう。
『えっち!帰ったら盗聴器は外すからね!』
そこまでされるのは嫌なので、素直にそう返した。すると即座にニコニコした可愛らしいスタンプを送ってきた。
彼の手のひらの上を転がされてるようで、ぐぬぬと少し悔しさで唇をかんだ。
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