夢の中で

茅秋

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榛side

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いつも見る夢がある

大好きな君が、優しく僕の頭を撫でてくれる。
すっ、と頬を撫でるから、僕はその手にキスをしながら「好きだよ」って言う。

すると君は、

「え、なにそれ。気持ち悪い」

って、おかしそうに笑う。

その顔を見ながら、僕はそうだね、って言う。



最初にこの夢をみたのは、中学生になってすぐのこと。
家が隣の 真樹まさき は、  産まれた時から一緒にいたから、自分の横にいつもいるのが当たり前だと思ってた。

でも、ある日真樹が告白されているのを偶然見てしまった。
それを見て、いつか自分の側から真樹が居なくなるのか、と思ったら、嫌で嫌で仕方なくて、お願いだから断って、と思った。それが通じたのか、真樹は「ごめん」と静かに言って、去っていった。

その次の日から、僕は真樹のことをとっても意識した。歩いてるときに、あ、肩があたった、とか、家で一緒に雑誌を読んでいた時に、顔が近い、とか。
いつも通りが出来なくなって、あぁ、僕は真樹が恋愛の意味で好きなんだ、と分かった日の夜、あの夢を見た。

最初は血を吐くかって思うぐらい苦しくて、悲しかった。朝、迎えに来た真樹の機嫌を見て、よかった、いつも通りだ。とほっとする日が続いた。それからすぐ、自分のこの気持ちは異常だと言うことを知った。その時、あぁ、だから夢の中の真樹は気持ち悪いって言ったんだ、と納得した。

真樹への気持ちをもて余してた僕は、これは隠し通せばいいんだ、とわかってスッキリした。それまで多少違和感があっただろう真樹との関係も、やっと普通に出来て安心した。真樹が好きでどうしようもなくなってしまっても、夢の中の真樹が僕に言い聞かせてくれる。だから、これからも大丈夫、と。
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