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れんびんなんて俺には必要ない
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ちょっとぽっかり心に穴が空いた。これ喪失感ってやつだな。ペットロスか。
もう孤高の黒鉄魔狼ではない。孫を先に無くしたじーさんの気分だった。
結局は一人で霧の森の頂点である俺に戻っただけで獣らしく生きればいいだけだ。数百年前にも確かに人里に降りたが、こんなイベントだらけじゃなかった。だからこうして今回ダメージが大きい。明らかに人選ミスというか運が悪かった。それだけだ。
いつもの夜の狩りをして満腹で惰眠を貪るんだ。
「なのに何故まだいる、お前たち」
ふと顔をあげるとプーの残したメルヘンランド跡地がおかしな事になっていた。
ガーデンテーブルセットにチェスト、果てには小さな小屋らしき物まで。魔術で施行組み立て早すぎるだろ。ツーバイフォーなのか?
「ループス殿が泣くなんて驚いたんですよ。興味深い魔獣です。それにこの森は不思議なんです。何故霧が晴れないんですか、しかも何故地上近位だけ。魔力の利かない特異点、そして大陸と違う魔物に植物に、極めつけは炎竜にお目にかかりたいですね!自国大陸にこもってた事が勿体ない!でなければこんな遠い小さな島に来ようとは思いませんでしょう、本で事足りますから!」
どこからか持参したティーセットに茶を既に入れたようで、ラズは満足したように一口飲み古書を読み始めた。本の上には魔術の明かりが浮いている。
いや、それは困る。容易くプーとの思い出の場所をぶっ壊しておいて更には居座る気なんだろ?俺に少し優しさって物を与えてもいいんじゃないか。魔物には無理か。魔物というだけで討伐対象だったか。
諦めの目でチラと見てまた伏せた。これはスルーだ。自己中魔族は一人でやってればいい。
「魔狼様、いえ、ループス、そのこの本を呼んでも良いですか、字も読んでみませんか?」
クロウは視界に入るように書を掲げた。「黒鉄魔狼」「光球虫その生態」の二冊だとクロウは言う。全然字はわからないな。
「これですね、気になる部分があったんです。『魔狼の能力は個体で様々といわれ中には人化するものもいたと云われる』どうですか。人になってみても面白いかもしれませんよ」
「はあ?何で人になる必要がある」
「人に紛れて魔獣が生きるなんて凄い事ですよ!」
「阿呆が。何故わざわざ疲れる世界で生きなきゃならんのだ。クロウ、お前も解っているから俺についてきたんだろう? それに古書をもっと読め、テイマー時期のだ。魔物は人と相容れないと書いてるんじゃないか?」
「ええー、できるかどうかだけ…」
「知らんな、それにここでもし人化できて俺が美青年だったらラズに尻を鞭打たれるんだろ?いやだね」
「ええー…」
俺は伏せたまま気怠そうに返答した。折角獣で生きて来たのに、また面倒ばかりの人の世に何故飛び込まなきゃいかんのだ。
「あ、あとですね、光球虫の生態ですが筆者は見たそうですよ。『霧散した跡地からまた再生する一粒がいたのだ』と一文があってですね、繰り返し生きる魔獣のようです。可能性があるかと、」
「何だと」
俺はまたあのもちもちプーに会えるなら賭けてもいいかと思った。スライムとかアメーバ系だから細胞分裂のような感じか。
クロウと目を合わせ、ゆっくり後ろを振り向いた。
・・・跡地。
既にそこにはツーバイフォー施行済。
その手前には見た目二十代、中身が二百歳近い老年魔族が一人。
「ああぁ…そうですね、師が」
「クロウ、あれを抹殺しようではないか」
先に小屋を破壊だろ、その後場所を住処の上に変えてだな、跡地に結界を張ってと打ち合わせをする魔狼とクロウ。
その夜、霧の森は雷鳴と暴風と火旋風の局所的天変地異が起きたのを山頂に住処を持つ炎竜は見た。魔物が音に驚き近隣の村まで押し寄せ大混乱になったのだった。
もう孤高の黒鉄魔狼ではない。孫を先に無くしたじーさんの気分だった。
結局は一人で霧の森の頂点である俺に戻っただけで獣らしく生きればいいだけだ。数百年前にも確かに人里に降りたが、こんなイベントだらけじゃなかった。だからこうして今回ダメージが大きい。明らかに人選ミスというか運が悪かった。それだけだ。
いつもの夜の狩りをして満腹で惰眠を貪るんだ。
「なのに何故まだいる、お前たち」
ふと顔をあげるとプーの残したメルヘンランド跡地がおかしな事になっていた。
ガーデンテーブルセットにチェスト、果てには小さな小屋らしき物まで。魔術で施行組み立て早すぎるだろ。ツーバイフォーなのか?
「ループス殿が泣くなんて驚いたんですよ。興味深い魔獣です。それにこの森は不思議なんです。何故霧が晴れないんですか、しかも何故地上近位だけ。魔力の利かない特異点、そして大陸と違う魔物に植物に、極めつけは炎竜にお目にかかりたいですね!自国大陸にこもってた事が勿体ない!でなければこんな遠い小さな島に来ようとは思いませんでしょう、本で事足りますから!」
どこからか持参したティーセットに茶を既に入れたようで、ラズは満足したように一口飲み古書を読み始めた。本の上には魔術の明かりが浮いている。
いや、それは困る。容易くプーとの思い出の場所をぶっ壊しておいて更には居座る気なんだろ?俺に少し優しさって物を与えてもいいんじゃないか。魔物には無理か。魔物というだけで討伐対象だったか。
諦めの目でチラと見てまた伏せた。これはスルーだ。自己中魔族は一人でやってればいい。
「魔狼様、いえ、ループス、そのこの本を呼んでも良いですか、字も読んでみませんか?」
クロウは視界に入るように書を掲げた。「黒鉄魔狼」「光球虫その生態」の二冊だとクロウは言う。全然字はわからないな。
「これですね、気になる部分があったんです。『魔狼の能力は個体で様々といわれ中には人化するものもいたと云われる』どうですか。人になってみても面白いかもしれませんよ」
「はあ?何で人になる必要がある」
「人に紛れて魔獣が生きるなんて凄い事ですよ!」
「阿呆が。何故わざわざ疲れる世界で生きなきゃならんのだ。クロウ、お前も解っているから俺についてきたんだろう? それに古書をもっと読め、テイマー時期のだ。魔物は人と相容れないと書いてるんじゃないか?」
「ええー、できるかどうかだけ…」
「知らんな、それにここでもし人化できて俺が美青年だったらラズに尻を鞭打たれるんだろ?いやだね」
「ええー…」
俺は伏せたまま気怠そうに返答した。折角獣で生きて来たのに、また面倒ばかりの人の世に何故飛び込まなきゃいかんのだ。
「あ、あとですね、光球虫の生態ですが筆者は見たそうですよ。『霧散した跡地からまた再生する一粒がいたのだ』と一文があってですね、繰り返し生きる魔獣のようです。可能性があるかと、」
「何だと」
俺はまたあのもちもちプーに会えるなら賭けてもいいかと思った。スライムとかアメーバ系だから細胞分裂のような感じか。
クロウと目を合わせ、ゆっくり後ろを振り向いた。
・・・跡地。
既にそこにはツーバイフォー施行済。
その手前には見た目二十代、中身が二百歳近い老年魔族が一人。
「ああぁ…そうですね、師が」
「クロウ、あれを抹殺しようではないか」
先に小屋を破壊だろ、その後場所を住処の上に変えてだな、跡地に結界を張ってと打ち合わせをする魔狼とクロウ。
その夜、霧の森は雷鳴と暴風と火旋風の局所的天変地異が起きたのを山頂に住処を持つ炎竜は見た。魔物が音に驚き近隣の村まで押し寄せ大混乱になったのだった。
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