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やっと前に進めるようです
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黒い犬が歩く。その後ろや横、時にはぐるりと走り廻ってみたりする飴色の毛の子犬がいた。魔狼と光球虫だ。
すっぽんぽんの子供では魔狼には服も無くどうしようもない。他に擬態は出来るかと尋ねたら子犬になったのだ。色々質問して子供の手でペシペシ叩かれるのも微妙だったからホッとした。子犬の前脚で地を叩くか頷きで返答してもらう事にした。
俺が気に入ったと一緒について来る事、違う大陸へ帰ると話しても来るという。虫と呼ばれるが高魔力の魔獣に入る魔物だという事、小さいものなら何にでも擬態可能で時間という概念を持っていたこと。無性別だということ。解ったのはこれくらいだ。
何故光らなくなったのかと生態など話せないので詳細は無理かと困惑して辞めた。
報酬は貰うと言ったが逃げて来た俺。クロウ達は仕事が終わっただろうか。
何にせよ一度合流して転移報酬を貰う事と短期間だったが一緒に過ごしたから挨拶くらいはしときたい。魔物に挨拶する習慣なんか無い。これは俺の中の人の気持ちの部分だ。
「元の場所に帰るべきか。時計塔近くの屋台だったな、まだ居ればいいが」
犬の姿の視点は低いから見回しても仕方が無い。高いとこから塔を見れればと視線をあげたら、子犬が俺の尾をくわえて引っ張った。
「そっちってことか?道知ってるのか?」
子犬はぶんぶん頭を縦に振り肯定した。元々この地下都市に息づく光球虫だから町を知っているのだろう。
「よし、案内を頼もう」
魔狼は擬態した子犬のぷりっとした尾尻を見乍ら、緑を抜けて町の喧噪に歩いて戻っていくのだった。
「ルー!やっふー!」
「来たか。見つける手間が省けた」
魔王とロズゴはまだ同じ場所にいた。
魔王は魔狼を見て呑気に笑顔で両手をぶんぶん振っている。
魔狼の目には不思議な事に今まで見えてなかった結界がくっきりと魔族二人にも魔力とでもいうのか身体を包むもやっとしたものが見えることに首を傾げる。
「…報酬を貰いにきた」
「ルー、あざおー!だいぶすっきりしたの」
あざおって何だっけ。首を傾げた俺を見てロズゴが首を傾げる。マッチョが太い首傾げたって可愛く無い。魔王にはチラッと視線だけで対応してマッチョをみる。
「あっ、ルー、なんだその視線!」
魔王は苦手だ。小さい手で菓子を鷲掴みにしてボロボロこぼしたり口の周りに沢山付けてもっもっと可愛く食べてようが苦手だ。クルフェルよりヤバいヒエラルキー最上位だ。無視だ無視。
「…クロウ達はまだか」
「まだみたいだな」
「いつ終わる」
「ラズが終わりって思った時?それか術構築がうまくいったと思うか、満足した時ね」
「そうだな」
「まだ掛かるのか」
・・・なんだそのアバウトな基準は。それは要するに現在進行形という事だ。項垂れると長椅子に一緒に乗った子犬と目が合った。
くりんとした赤い目にもっちりした体躯で俺を見て尻尾を振る。擬態は完璧、癒しかよ。
「ところで魔狼殿、その魔物はどうした。見たところは赤目の魔獣だが魔力が弱すぎる。そして魔狼殿の魔力が一切感じられなくなった。結界抜けた後何か術を使ったのか?」
「…魔力が一切?俺は術は使わんぞ」
「マーカーしてなかったから急に消えて吃驚したよ?ルー、今ただの犬!えーと解析」
「術を使わない?あの魔力量を…勿体無い」
ロズゴは心底不思議に思ったようだ。
そんな勿体無い魔力量なのか俺。術なんて全然仕組みわからないし必要なかっただろ。確かに魔力が抑えれるなら魔族に居場所もばれないから出来るならと思ったが、俺は何もしていない。
子犬はぷりぷりな尾尻をまだ力一杯振って魔狼を見つめていた。
「あー!それ光球虫だよ。擬態するんだ。何でかルーに虫の魔力が纏わり付いてるし結界通過時に吸収でもしたのか?」
「は?吸収?」
いやだから俺は何もしていないぞ。あ!光が集束したのがあったな。あれでまさか勝手に吸収したって事か?それって不味くないか?チラリと視線をやると尾をふりふり首を右左傾げて俺を見てる。コレくそ可愛い普通に子犬なんですが。
「虫はこの場所限定生息だ。今まで生活に欠かせない神聖な虫で捕獲禁止だし特に調べたりしてないからな。魔族にしても弱い獣に興味ない。という事で魔狼殿が調べたら良い。あ、魔王様の言葉で追加で聞きたいんだが」
「えー、遊ぼうよ、ルー」
なんだこのくだり。デジャヴだ。また数日捕まるに違いない。断固拒否だ。
「ラズが使った転移で俺も地上に出せ」
「んー?」
「俺は住処に帰りたいだけだ。あいつらに黙って帰るのは気が引ける。ほら転移させろ」
魔王とラズゴはまた不意をつかれたという顔を見せた。なんだその反応。
「あははは!ルーは変な魔物!気が引ける?面白い、面白いよ!」
「は?」
「全くだ。まあ転移先の地を知らないから地図で確認もいる。遠ければ今の所魔王様よりラズの方が確実。進行度を見てきたらいい。魔王様、魔狼殿を地上へ」
「外門ー」
すっぽんぽんの子供では魔狼には服も無くどうしようもない。他に擬態は出来るかと尋ねたら子犬になったのだ。色々質問して子供の手でペシペシ叩かれるのも微妙だったからホッとした。子犬の前脚で地を叩くか頷きで返答してもらう事にした。
俺が気に入ったと一緒について来る事、違う大陸へ帰ると話しても来るという。虫と呼ばれるが高魔力の魔獣に入る魔物だという事、小さいものなら何にでも擬態可能で時間という概念を持っていたこと。無性別だということ。解ったのはこれくらいだ。
何故光らなくなったのかと生態など話せないので詳細は無理かと困惑して辞めた。
報酬は貰うと言ったが逃げて来た俺。クロウ達は仕事が終わっただろうか。
何にせよ一度合流して転移報酬を貰う事と短期間だったが一緒に過ごしたから挨拶くらいはしときたい。魔物に挨拶する習慣なんか無い。これは俺の中の人の気持ちの部分だ。
「元の場所に帰るべきか。時計塔近くの屋台だったな、まだ居ればいいが」
犬の姿の視点は低いから見回しても仕方が無い。高いとこから塔を見れればと視線をあげたら、子犬が俺の尾をくわえて引っ張った。
「そっちってことか?道知ってるのか?」
子犬はぶんぶん頭を縦に振り肯定した。元々この地下都市に息づく光球虫だから町を知っているのだろう。
「よし、案内を頼もう」
魔狼は擬態した子犬のぷりっとした尾尻を見乍ら、緑を抜けて町の喧噪に歩いて戻っていくのだった。
「ルー!やっふー!」
「来たか。見つける手間が省けた」
魔王とロズゴはまだ同じ場所にいた。
魔王は魔狼を見て呑気に笑顔で両手をぶんぶん振っている。
魔狼の目には不思議な事に今まで見えてなかった結界がくっきりと魔族二人にも魔力とでもいうのか身体を包むもやっとしたものが見えることに首を傾げる。
「…報酬を貰いにきた」
「ルー、あざおー!だいぶすっきりしたの」
あざおって何だっけ。首を傾げた俺を見てロズゴが首を傾げる。マッチョが太い首傾げたって可愛く無い。魔王にはチラッと視線だけで対応してマッチョをみる。
「あっ、ルー、なんだその視線!」
魔王は苦手だ。小さい手で菓子を鷲掴みにしてボロボロこぼしたり口の周りに沢山付けてもっもっと可愛く食べてようが苦手だ。クルフェルよりヤバいヒエラルキー最上位だ。無視だ無視。
「…クロウ達はまだか」
「まだみたいだな」
「いつ終わる」
「ラズが終わりって思った時?それか術構築がうまくいったと思うか、満足した時ね」
「そうだな」
「まだ掛かるのか」
・・・なんだそのアバウトな基準は。それは要するに現在進行形という事だ。項垂れると長椅子に一緒に乗った子犬と目が合った。
くりんとした赤い目にもっちりした体躯で俺を見て尻尾を振る。擬態は完璧、癒しかよ。
「ところで魔狼殿、その魔物はどうした。見たところは赤目の魔獣だが魔力が弱すぎる。そして魔狼殿の魔力が一切感じられなくなった。結界抜けた後何か術を使ったのか?」
「…魔力が一切?俺は術は使わんぞ」
「マーカーしてなかったから急に消えて吃驚したよ?ルー、今ただの犬!えーと解析」
「術を使わない?あの魔力量を…勿体無い」
ロズゴは心底不思議に思ったようだ。
そんな勿体無い魔力量なのか俺。術なんて全然仕組みわからないし必要なかっただろ。確かに魔力が抑えれるなら魔族に居場所もばれないから出来るならと思ったが、俺は何もしていない。
子犬はぷりぷりな尾尻をまだ力一杯振って魔狼を見つめていた。
「あー!それ光球虫だよ。擬態するんだ。何でかルーに虫の魔力が纏わり付いてるし結界通過時に吸収でもしたのか?」
「は?吸収?」
いやだから俺は何もしていないぞ。あ!光が集束したのがあったな。あれでまさか勝手に吸収したって事か?それって不味くないか?チラリと視線をやると尾をふりふり首を右左傾げて俺を見てる。コレくそ可愛い普通に子犬なんですが。
「虫はこの場所限定生息だ。今まで生活に欠かせない神聖な虫で捕獲禁止だし特に調べたりしてないからな。魔族にしても弱い獣に興味ない。という事で魔狼殿が調べたら良い。あ、魔王様の言葉で追加で聞きたいんだが」
「えー、遊ぼうよ、ルー」
なんだこのくだり。デジャヴだ。また数日捕まるに違いない。断固拒否だ。
「ラズが使った転移で俺も地上に出せ」
「んー?」
「俺は住処に帰りたいだけだ。あいつらに黙って帰るのは気が引ける。ほら転移させろ」
魔王とラズゴはまた不意をつかれたという顔を見せた。なんだその反応。
「あははは!ルーは変な魔物!気が引ける?面白い、面白いよ!」
「は?」
「全くだ。まあ転移先の地を知らないから地図で確認もいる。遠ければ今の所魔王様よりラズの方が確実。進行度を見てきたらいい。魔王様、魔狼殿を地上へ」
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