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つまり、そういう事だ

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町や村だろうと森だろうと耳は忙しなく警戒し音を拾う。前にあるのは祠。ちょっと焦げ臭いけど、伏せてウトウトしていた。魔狼が森の神様、か。
今頃霧の森どうなってるか。洞窟は蜘蛛の巣すごい事なってそうだ。熊角獣が縄張りを奪っただろうか。

・・・はぁ。

犬の形なれど溜息くらい吐ける。
俺、本当に住処に帰れるんだろうか。いや、まだ帰ってる最中だ。弱気でどうする。何とかなる。
草や小枝を踏む小さな音に、スッと嗅ぎ慣れてきた臭いが鼻に入った。
「お前、俺にマーカーしてるだろ。居場所特定の為か」
「あ、ばれてましたか。ここまで来て置いていかれるのも癪でして」
クロウは苦笑して答えた。見れば旅支度一式を持っている。
「出発するか」
「クルフェルがいるので長居は無用です」
「説明不足だな」
「あー…伝説の黒鉄魔狼様を探し続けてる女です。俺はたまたま召喚できてしまったけど、森から出ないと言われてるし、数は少ないので見る事も会う事も無い希少な古の魔獣です。魔力のある黒い魔獣だと魔狼様が変体してるのではと思い確証を得る為攻撃しまくるという、」

・・・それツチノコやモスマン発見!な感覚じゃないか。

「…もういい」
「あれでも五大魔術師です」
「…色々無理」
聞いてるだけでゾワゾワした。これは早々にこの村を出た方がいい。関わりたくない。
「お前、馬は」
「すぐ宿に入ったので未だです」
「…ああ」

俺はのそりと身体を起こした。
伝説だか神様とか自分の事を知らな過ぎるが、それは人間の世界が決めた事。どんな位置にいようが関係ないな。俺は獣で霧の森に居るべきもの。だと思う。
ブルルルッと身体を振るい払う。

「……」
じっとクロウを見た。
「何ですか」
「お前、馬買ってこい」
「えぇー、今からですか」
 グルルルルッ
「い、行ってきます」


馬を買って来いとは言った。青毛の馬を確保したのは褒めたいが、クロウを半目にして見た。余り威圧すると馬が暴れそうだ。それでもこれは納得出来ない。

 グルルルルッ
「すみません。…捕まりました」

銀華の君という名の元になった銀髪が焦げ燃えて左右長さが違う。顔も煤けて汚れていた。

「お前、魔狼!ついてく!」

ハァハァ興奮したのは減ったが、尻尾ブンブン振ってるのはクルフェルだった。こいつも耳や背中あたりが焦げてる。さっきスゴイ雷鳴轟音してたのお前らか。

「魔狼様~」
「魔狼、形もどれ、犬ちがう」
「魔狼様は、犬でも可愛らしく、これでいいんです」
「おおかみ、見たい、犬やめろ!」
「口の利き方が悪いです!魔狼様に向かってなんという!」
「シャズナル、お前、性格、かわった」
「魔狼様のおかげで目が覚めただけです」
「はあ?」
「それに今はしもべです、ねっ魔狼様!」

目をキラキラさせながら僕なのを喜ぶ美青年。

「…しもべ。あははは!し、も、べ!」

 イラッ

「うるさい、駄犬」

俺は騒がしいのは嫌いだ。低い声で牙を剥き出しながら言った。

「……しゃべった」

ポカーンとするクルフェル。

「うるさいとその喉噛み切るぞ。わかるか」

ブンブンと頭を上下に振った。

「俺は住処に帰るだけだ。それ以外は知らん。わかったか」

うんうんと頷く。が尻尾がブンブン回ってる。

「いくぞ」
「はい魔狼様」
「おー」

これはクロウと同類だ。つまり、逃げても追い掛けて邪魔されるのは確実。それなら近くで大人しくしてて貰おう。波風立てず静かに行きたいのは人の頃と同じ。ただ獣になって短気になったと思う。

なんでこう、次から次にうるさいのに絡まれるんだろう。



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