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これが俺の生きる道

番外編 ある執事の回想

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 私はバルモンク・ベルネッティ。
 一族は代々帝国魔人族の始祖といわれるアンフィル様の執事です。昔から全く変わらぬ容姿に性格に、仕事ぶりに尊敬し日々お仕えしています。

『それでも昔はやりたい放題の時期もあったな。不死ではないが長生きは飽くぞ』
 いつぞや苦笑しながら言いましたな。 
 私もお仕えして七十年ですが、まだまだ現役。魔人の平均寿命は百五十歳くらいでしたか。

 次の後継者をそろそろアンフィル様に面通しの上見習いをと考えていた折でした。小汚く、もうこと切れそうな子供を拾ってきたのは。
 私が世話をと言っても断り、
『拾ってきた自分が面倒を見る。仕事を増やすつもりはない』
 その子供に付きっきりになったアンフィル様。終いには、症状と患部にしか興味を持たないルースまでが世話を焼くのには驚きました。

 痩せ細り折れそうな子供。これのどこが良いのか全く理解できません。暇潰しという割にアンフィル様とルースは部屋に入り浸り子供を構い倒しました。物も贈りすぎです。ご子息ランス様の時には無かった事です。

 暫くして回復を見せたのは驚きました。口数少なく人を観察して話し、見た目とは裏腹な態度は狡猾さを感じ腹立たしくもありました。
 当たり前の如く受け入れ居直る子供は礼儀も足りず無礼極まりないと。
 アンフィル様が大事にするのであれば、対象に嫌悪があろうが護るのも執事の務め。仕方ないという気持ちも有りましたな。

 一人で出歩き行動するとき観察しました。思慮深く人に頼らず我が強い。しかしどこがバランスが悪いと感じ始めました。
歳も聞き驚きました。
 ルースが誂えた衣装はとても可愛らしく着こなす程の愛らしさ。しかし態度はこれはもう素直じゃ無い。 明らかに意地っ張りです。優しさに甘え切れないというか、我を貫こうとして明らかに無理をしている。いつか爆発すると思いました。

 それからです、アンフィル様がレオを構う気がわかるようになったのは。素直じゃない意地っ張りなだけと思うだけでレオがもう可愛くて仕方がないのです。参りました。私も孫が一人増えたようです。

 私なりに見護りレオが嫌がらない程度に介入しましたが。この子は一人の時は考え込んでばかりいるようでした。

 レオを可愛がるアンフィル様にも驚きました。こんな執着は見た事がありません。レオの態度は相変わらずですが何せ口が悪い。農家の出という事より他人を寄せ付けない口調ですな。それでも少しずつ素直な気もしました。

 体調もいいし頭も良く勉学も終わった頃でした。
 執事見習いを始めました。教えた書類整理も自分で能率化をはかる要領が良い賢い子だとわかり見直しました。
 時間はまだたっぷり仕事も沢山ある。少しずつ覚えて貰えたらそれで良いと思ってました。

 それも不味かったのでしょう。
 私も甘やかしていたと気付くのはレオが爆発した時です。
『役に立ちたい、俺も執事だ』
 訴えに目が覚めました。
 賢く可愛らしいレオ。
 私も一人前の執事になる様きっちり指導しなくてはと思い直しました。
 代々続く始祖様の執事は次代にレオを推薦しましょう。これは異例な事ですが。アンフィル様が制して下さるから大丈夫でしょう。
 しかしです、アンフィル様。あの告白の様な日からレオを見る目が何ともですな。いやらしくなってきておりますよ。私から意見する事は無いのですが。

「レオをどうするおつもりで?」
「手放さないのは確定だ。あれは俺のだ」
「では執事次代はレオと通知で」
「急いで一族を黙らせろ」
「御意」

 ニヤリと笑むアンフィル様。こんな楽しそうな顔は初めて拝見しました。
 私は主の忠実な僕の執事ですから。レオが少し不憫な気もしますが、それはそれですな。

「…なに」
「おや。私とした事がレオの可愛さに見惚れて考え込んでましたな」
「え、ええ?」

 おやおや、珍しく顔を赤らめて誠に愛らしい。私は滅多に褒め無いですからな。まったく困る程に可愛らしい方です。

「言葉使いが戻ってますな。それ位サラッと流さなくては客に対応出来かねますぞ」
「あ、はい。すみません」

 しゅんとなるレオ。少しずつ素直で表情も出やすいので前より扱いやすいですよ。ああ、これはアンフィル様が手を出す日が近そうですな。

「レオ、色々頑張りなさい」
「え?は、はい?」

 それを見守るのも執事たる務め。
 そろそろ香油に新しい夜着に新しい寝具など買い揃えておきましょうか。

 私は私の仕事をするのみです。




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