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これが俺の生きる道

17 お前は俺のものについて

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 引掛る。こう喉に小骨がある感じが続く。

「バルモンクさん」

 俺を放置して雑用をこなす執事を捕獲した。

「今日こそ執事の仕事を見習い執事として従僕たる面子にかけて教えて貰いたい、デス」
「おやおや。よく言えましたな」

 バル爺に頭を撫で撫でされた。

「…おい」
「おや、上司に対して」
「…仕事教えろ」

 あ、口が滑った。ぬっとバル爺の手が伸びニコニコと俺の頬を摘み捻った。

「あだだだ!」
「ふふ。口の悪い子ですな」

 うああ。なんて容赦の無い捻り。この狸爺め。頬をさすり恨めしげに見上げた。

「礼節の無い執事は駄目ですよ。勉学と常識を学びなさい」
「……常識」
「この国では来賓の茶は右から、帝国では左から。竜国の一族は隠然、帝国の魔人は隠滅の一族。そういった小さな事を沢山ですな」
「……何年も掛かる」
「だから見習いでしょう」

 …そんな先の見えない見習いなのか?今まで仕事を見てる方だったから知らなかったぞ。ちょい待てコラ。

「まさか…一生かかるとか」
「…かも知れませんね」
「まじ。だからそれを上司が教え、」
「レオ。私は忙しいです」
「だから手伝う」
「執事たるもの、上司の邪魔はしてはなりません。引き際や身の程を弁えるのも礼節ですな」
「…狸じじぃ」

 あっ。また口が滑った。バルモンクの目がキラリ。今度は両頬をぐにににっ、伸びる伸びる!

「あわわわ!」
「最近のレオは悪い子ですな。ふふ」

 お願いしてるのに。こうやっても何日も仕事を教えてくれない。おかしいだろ。その常識が足りないから教えて欲しいのに。勉強しろ勉強しろって母親か。酷すぎる。もう逆にストレスだ。俺は大人しくしてたのに。のんびり対処しながらいこうって。会社内のイジメかよ。我慢の限界だ。仕方ないから上司の上司フィルに直訴してやる。


 仕事がひと段落した頃を見計らい、夕刻フィルの部屋におしかけた。

「ははは」
「笑うな。仕事くれ」
「それで頬が赤いのか。可愛くなってる」
「いや、だから仕事を」
「俺は執事見習いの仕事は知らないな」

 クソ。何なんだ。転生パターンかっ飛ばして今が有るのに。これでも納得して妥協したんだ。なのに。どうにも自分がどうしたらいいのか。執事見習いって何なんだ。本当に俺は雇われてんのか。やっぱり上手いこと言って騙されてんのか。ぐぬぬぬ。

「俺、フィルの執事なんだろ」
「そうだな。俺の執事だな」

 それだ。フィルは当たり前の様に言う。通じて無い。フィルが言ったんだぞ。俺はジワジワとフィルの前にたった。

「レオ?」

 お前の執事なのに役に立ってないじゃ無いか。

「俺、何も出来ない事にイラついてんだよ」
「レオはちゃんと頑張ってるだろ」

 仕事が無くて飢えた。何も無い事に悔しくて意地になって。今も同じじゃないか。何なんだよ。わかれよ。手がわなわな震えて拳になった。

「フィルの執事…」
「俺の可愛いい執事だ」

 だから、だからそれだよ。なんか悲しくなって来たぞ、おい。

「レオ?」
「…役に立ちたいんだ」
「え、レオ?あ、あれ?」
「俺だって働ける。何か出来る。お前の執事なのに何も出来ないのは嫌だ。俺だって、仕事できる…俺は大人だ、て、何で、蔑ろにするん、だ、う…っ」

 結局はそれだ。お前ら子供扱いしやがって。俺は傷ついたぞ。俺は認められてない事に涙が溢れた。ただ泣いた。

「あ、ああ、レオ、レオごめん。泣くな」
「子供、扱い、やめ、ろ」

 顔を上げて訴えた。見た目は子供だが中身は転生マイスターの俺だぞ。馬鹿にしやがって。鼻水はでるわ。声は震えるわ。口はへの字だろ。そんな事はいいんだ。フィルは困った様な顔をした。俺の方がガチで困ってんだよ。

「レオ…」
「お前らが、俺を困らせ、てんだ。わかれ、よ。馬鹿に、すんなっ。俺だって、働けるんだっ」

 フィルはゴメン、悪かったと繰り返し言い続けて、俺を強く抱きしめた。

 俺は年甲斐も無く、いや十七だけど、もう悔しくて情けなくて。

 フィルの腕の中で溜めたものを吐き出す様に、大声でわんわん泣き続けたのだった。
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