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第78話 ド・オデッセリアの攻防? ルミナの魔王化と黒き魔竜⑨ ドラゴンブレス
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彼女は本能によるものか、はたまた一瞬で現在自分の置かれている状況を理解したのかはわからないが、イルは先ほどまで肩で荒く息をついていたというのに、一瞬で体内に残っている魔力を最大限にまで活性化させると、深緑の魔力をその身に纏い、自身の身体能力を爆発的に引き上げながら、自分のいる方角、そのさらに上空に向かって物凄い勢いで飛来するバリスタの矢に向かって、屋上から伸びでいる暖炉か何かの煙突を足場にして、凄まじい速度で垂直に駆け上がっていったのだった。
レンガ造りの煙突を駆け上っていく頼れるその小さな背中を見つめながら、カナタは今出せる限りの声を絞り出して叫んだ。
「いけ――っイル――ッ!」
イルはカナタの声援をその小さな背中に受けながら、一瞬で煙突の頂上までたどり着くと、駆け上がってきた勢いそのままに、なんら躊躇することなく飛来するバリスタの矢、雷竜の牙に向かって信じられないほどの速度で跳躍した。
イルに向けられたカナタの声に反応した人々がそちらを仰ぎ見たとき、彼らの目に飛び込んできたのは、先ほどあの巨人に大打撃を与えた一人の少女が、巨人にかわされてはるか上空を行くバリスタの矢に飛び込んでいく姿だった。
彼らの視線がイルとバリスタの矢に集中する中、イルは自分の跳躍した方角に飛来する雷竜の牙を射程に捕らえると、濃緑色の瞳をくわっと見開き叫び声を上げた。
「蹴技・螺旋っ!」
イルは飛び上がった勢いにさらに体を捻り回転の遠心力をかけると、自らの射程に捕らえた雷竜の牙と化しているバリスタの矢を、ミノタウロスに向かって蹴り返したのだった。
「いっけえぇぇぇっ!」
イルの蹴り技である蹴技螺旋によって、きりもみ状になった風と雷の力がありったけ付与されていた雷竜の牙は、狙いたがわず巨人の背後。斜め上から巨大な剣を持つミノタウロスの右肩に突き刺さると共に、回転する勢いそのままに、右肩に大穴を穿ちながら巨人の腕の中に入り込み、その内部を破壊しながら突き進んでいったのである。
そして数瞬の後には、巨大な剣を握り締めている巨人の右手の平に大穴を穿ちながら地面へと突き立ったのであった。それと同時に巨人が右手に握り締めていた巨大な大剣を取り落とした。
さすがに右腕。そのほとんどを内側からズタズタに貫かれては、さすがのミノタウロスといえど、巨大な剣を取り落とせざるをえなかったのである。
「グルォォオオオオォォオオ――ッ!」
そして守備隊やルミナたちが攻撃を加え始めて、初めてミノタウロスが怒りではなく痛みによる悲痛な叫び声を上げたのだった。
その瞬間を見ていたカナタが力の限り叫んだ。
「ルミナ――ッ!」
「わかってる! 今よっドゥルグッ!」
「うむっわかっているともルミナ女史! 任せたまえ!」
ルミナの指示に応じてドゥルグが一体化している黒竜で、右腕と共に力の大半を失って大きな隙を生んでいる青銅の巨人ミノタウロスに渾身の体当たりをぶちかました。
だがいくら右腕、そのほとんどを付け根から失い弱っているとはいえ、相手は青銅の巨人とも呼ばれるミノタウロス。一度や二度の体当たりでは倒すことはおろか、吹き飛ばすことも出来はしなかった。
このぐらいじゃ無理か。けど、カナタたちがくれたこの千載一遇のチャンス、逃すわけには行かないわ!
心の中でそう叫ぶとルミナはすぐさま次の指示を飛ばす。
「ドゥルグッそのまま奴を門に放り投げて!」
「まかせたまえ!」
ルミナに言われるがままに黒竜と一体化しているドゥルグは、魔竜化して得た鋭い爪を相手のわき腹辺りに突き刺すと共に、右腕を失ったミノタウロスをブラック・ドラゴンの強靭な筋力を使って力任せに巨大な冥界の門のある方角へと投げ飛ばしたのだった。
「今よドゥルグ! あいつに思いっきりドラゴンブレスをぶちかますわよっ!」
「うむ。任せたまえ! ルミナ女史!」
ルミナが真紅の瞳を見開くと共に、今自身の持っているありったけの魔力を黒竜に注ぎ込んだ。
「ハアアアア――ッ」
ルミナから注ぎ込まれる魔力を受けたドゥルグは、一体化している黒竜の体内で瞬時にその魔力をドラゴン自身の力へと変換させていく。そして、『ドラゴンの力』に変換された魔力。その全てが黒竜の口腔へと集まり始めると、黒竜の口元がドラゴンブレスの淡い輝きを放ち始める。
そして、放たれる竜の一撃。
「この牛の化け物め! 僕たちの渾身の一撃を喰らいたまえっ!」
「グルガアアァァァァアアア――――ッ!」
「いっけえええ!」
ドゥルグと黒竜とルミナの雄叫びと共に、口腔に集められたドラゴンブレスは強烈な光と一緒に物凄い勢いで、巨大な石造りの冥界の門のまん前に投げ飛ばされたミノタウロスへと向かって吐き出された。
レンガ造りの煙突を駆け上っていく頼れるその小さな背中を見つめながら、カナタは今出せる限りの声を絞り出して叫んだ。
「いけ――っイル――ッ!」
イルはカナタの声援をその小さな背中に受けながら、一瞬で煙突の頂上までたどり着くと、駆け上がってきた勢いそのままに、なんら躊躇することなく飛来するバリスタの矢、雷竜の牙に向かって信じられないほどの速度で跳躍した。
イルに向けられたカナタの声に反応した人々がそちらを仰ぎ見たとき、彼らの目に飛び込んできたのは、先ほどあの巨人に大打撃を与えた一人の少女が、巨人にかわされてはるか上空を行くバリスタの矢に飛び込んでいく姿だった。
彼らの視線がイルとバリスタの矢に集中する中、イルは自分の跳躍した方角に飛来する雷竜の牙を射程に捕らえると、濃緑色の瞳をくわっと見開き叫び声を上げた。
「蹴技・螺旋っ!」
イルは飛び上がった勢いにさらに体を捻り回転の遠心力をかけると、自らの射程に捕らえた雷竜の牙と化しているバリスタの矢を、ミノタウロスに向かって蹴り返したのだった。
「いっけえぇぇぇっ!」
イルの蹴り技である蹴技螺旋によって、きりもみ状になった風と雷の力がありったけ付与されていた雷竜の牙は、狙いたがわず巨人の背後。斜め上から巨大な剣を持つミノタウロスの右肩に突き刺さると共に、回転する勢いそのままに、右肩に大穴を穿ちながら巨人の腕の中に入り込み、その内部を破壊しながら突き進んでいったのである。
そして数瞬の後には、巨大な剣を握り締めている巨人の右手の平に大穴を穿ちながら地面へと突き立ったのであった。それと同時に巨人が右手に握り締めていた巨大な大剣を取り落とした。
さすがに右腕。そのほとんどを内側からズタズタに貫かれては、さすがのミノタウロスといえど、巨大な剣を取り落とせざるをえなかったのである。
「グルォォオオオオォォオオ――ッ!」
そして守備隊やルミナたちが攻撃を加え始めて、初めてミノタウロスが怒りではなく痛みによる悲痛な叫び声を上げたのだった。
その瞬間を見ていたカナタが力の限り叫んだ。
「ルミナ――ッ!」
「わかってる! 今よっドゥルグッ!」
「うむっわかっているともルミナ女史! 任せたまえ!」
ルミナの指示に応じてドゥルグが一体化している黒竜で、右腕と共に力の大半を失って大きな隙を生んでいる青銅の巨人ミノタウロスに渾身の体当たりをぶちかました。
だがいくら右腕、そのほとんどを付け根から失い弱っているとはいえ、相手は青銅の巨人とも呼ばれるミノタウロス。一度や二度の体当たりでは倒すことはおろか、吹き飛ばすことも出来はしなかった。
このぐらいじゃ無理か。けど、カナタたちがくれたこの千載一遇のチャンス、逃すわけには行かないわ!
心の中でそう叫ぶとルミナはすぐさま次の指示を飛ばす。
「ドゥルグッそのまま奴を門に放り投げて!」
「まかせたまえ!」
ルミナに言われるがままに黒竜と一体化しているドゥルグは、魔竜化して得た鋭い爪を相手のわき腹辺りに突き刺すと共に、右腕を失ったミノタウロスをブラック・ドラゴンの強靭な筋力を使って力任せに巨大な冥界の門のある方角へと投げ飛ばしたのだった。
「今よドゥルグ! あいつに思いっきりドラゴンブレスをぶちかますわよっ!」
「うむ。任せたまえ! ルミナ女史!」
ルミナが真紅の瞳を見開くと共に、今自身の持っているありったけの魔力を黒竜に注ぎ込んだ。
「ハアアアア――ッ」
ルミナから注ぎ込まれる魔力を受けたドゥルグは、一体化している黒竜の体内で瞬時にその魔力をドラゴン自身の力へと変換させていく。そして、『ドラゴンの力』に変換された魔力。その全てが黒竜の口腔へと集まり始めると、黒竜の口元がドラゴンブレスの淡い輝きを放ち始める。
そして、放たれる竜の一撃。
「この牛の化け物め! 僕たちの渾身の一撃を喰らいたまえっ!」
「グルガアアァァァァアアア――――ッ!」
「いっけえええ!」
ドゥルグと黒竜とルミナの雄叫びと共に、口腔に集められたドラゴンブレスは強烈な光と一緒に物凄い勢いで、巨大な石造りの冥界の門のまん前に投げ飛ばされたミノタウロスへと向かって吐き出された。
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