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第59話 ド・オデッセリアの攻防⑰ セント・インゴッド学院を救え⑨ ルミナとグルガム隊長

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 ルミナがふとそんなことを考えている間にも、スカルンの背骨から学院の外壁目指して飛び移ってきたルミナたちに、駆け寄ってくる人影があった。

 全身を銀色の鎧で覆って片手に長槍を持っていることから、多分この町を守っている兵士といったところだろう。案の定ルミナのその予測は当たっていたようで、こちらに向かって小走りに走りよると怒鳴り声を上げてくる。

「おいっなにをしている! ここはお前たちのような女子供が来るところではないぞ!」 

「なぁルミナ。助けに来てやったってのに、いきなりなお出迎えだな」

 カナタが小声でルミナに囁くと、声をかけてきた兵士にも聞こえていたようで、近寄ってくるなりいきなり怒鳴りつけてくる。

「なんだと!? 貴様っ自分を愚弄するか!」

「ってか、お前がいきなり怒鳴りつけてくるほうが悪いんじゃねぇか!」

 売り言葉に買い言葉で、ついついカナタも怒りの色をにじませて反論してしまう。

「こらっカナタ! やめなさい!」

「これっグラハムもじゃ! いきなりなにを怒鳴りつけておる!」

「これはグルガム隊長、怪しげな者たちが学院の外壁に飛び移ってきたので、尋問しようとしていたところであります」

「どんな事情があろうと、いきなり怒鳴りつけることはなかろう」

「しかし隊長、こいつらが我々に対してあまりにも無礼なもので」

「それは我々に対してではなく、いきなり怒鳴りつけてきたグラハム君一人に対してではないのかね?」

 そう言われたグラハムはうぐっと言葉に詰まりそうになりながらも、反論しようと口を開く。

「確かにそうかもしれませんが、しかしそれだけでは……」

「お主にも言いたいことはあるかもしれんが、今は有事の際という奴じゃからな、少し黙っておれ」

「わかりました」

 有事の際という言葉と、自分より立場が上な隊長に言われたグラハムはしぶしぶといった感じに口を閉じ
た。

「すまんのお嬢ちゃん。いきなり怒鳴りつけて、こやつも連戦に告ぐ連戦で気が立っておるんじゃ」

「いえ、それは仕方ありませんし、特に気にしてませんから」

「そっちの君もすまんかったの」

「いや、別にあんたに謝られても……」

「カナタ!」

 ルミナに叱られたカナタは、そっぽを向きながらもグラハムに対して頭を下げる。

「悪かったよ」

「これグラハム」

 自分たちの隊長であるグルガムに促されたグラハムは、納得のいかない感じではあったが憮然としながらもカナタに対して謝罪の意を述べる。

「こちらもすまなかったな」

「良いか二人とも、これで仲直りじゃ」

「わかったわね、カナタ」

「ああ」

「これグラハムもじゃ」

「了解しました」

 二人の返事を聞いたグルガムは、カナタとグラハムの手を取ると互いの手を握らせる。カナタとグラハムの二人は、互いに複雑な表情を浮かべながらも握手を交わした。

「これで本当の仲直りじゃ」

「ですね」

「こんな状況下で人間同士争っていたら、乗り越えられるものも乗り越えなれなくなるからの。それにしてもよく手綱を握っておるの」

「まぁカナタとは古い付き合いですから」

「みたいじゃな」

 と二人は微笑みあった。
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