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第14話 勇者科の才女と魔王科の落ちこぼれ

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 立派な石で造られた巨城の中の二階にルミナたち勇者科の通う教室はあった。
 
 教室の広さは教師一人に生徒が三十人から四十人ほどが余裕で入れるほどはある。

 そして、石造りで作られている教室の窓枠には、開け閉めの自由に出来る精巧なガラスがはめ込まれている。

 しかも魔法を駆使した装置が設置されていて、夏は冷房。冬は暖房などが循環して、教室内を快適な温度で保つように作られている。

 で、肝心の教室の中はというと、上等な木材で作られた長い机に、これまた上等な木材で作られた長椅子が何段にも分かれて設置されていて、大きな大学の教室のようなつくりをしていた。

 そして、教室の中にいる何十人かの生徒たちは、白地のワイシャツのようなものの上から、入学時に学園で支給された薄めのブレザーといった感じの淡いブルーの制服を着込んでいた。ち

 なみに新入生である各生徒たちの襟元には、一年生の証である二本の赤い式線が引かれている。

 そして制服の下の部分は、男子は上着と同じ青のズボンで、女子は膝丈ほどの淡い青色のスカートである。

 もちろんこの学園では当然のことながら戦闘訓練など日常的に行われるので、女子はスカートの下に黒色のスパッツのようなものを着用していた。

 そして、皆足元はなめし皮で作られた上等な靴を身につけていた。

 この教室にいる生徒たちは、右のような服装をして、皆で長椅子に並んで腰をかけ授業を聞いているのである。

 そして、その大多数の生徒たちの中に、窓際の席でひときわ熱心に話を聞いているルミナの姿もあった。

 そして、今は歴史の授業が行われていた。

 歴史の授業はこの世界を知る上で欠かせないものだからだ。

「いいですかみなさん。つまり遥か昔おとぎ話として語られている伝説には、勇者が結界によって魔物を封じた建物なり、封印塚があるのです。ですからその場所はとても危険なのです。そのため決して不用意に封印が施されている場所などに近付いてはなりませんよ。わかりましたか?」

 黒板に魔法で拡大させた絵物語を投射しながら、一人の教師が指揮棒のようなもので指差して、片手で歴史書を開いて、この世界での歴史書に乗っているおとぎ話を語りながら説明していた。

「はいっミルズ先生」

 一人の女子生徒が挙手をした。

「はい。ミル・クラストさん。なにか質問ですか?」

 ピンクのフリフリワンピースを着込んだ中肉中背の中年女教師ミルズは、挙手をした生徒の名を呼び質問を促す。

「でもそれってかなり古い伝説じゃないんですか? 今更守っても意味ないと思うんですけど?」

「確かにそうね。実際のところ、私自身あの話はおとぎ話だと思っているしね。あまり気にしなくてもいいと思っています」

 ミルズは自分の失言に気付き口元に手を当てる。

「っと、このことは他の先生方には内緒よ」

 指を口元に当てし―っと笑いながら促した。

「はい♪」

 教室に笑いが漏れる。

「けどいいですか皆さん。おとぎ話の中のお話といえど、万が一ということがあるかもしれません。ですから、念には念を入れて力試しや遊び半分の気持ちで、かの伝説の勇者が封印を施した封印の地に赴いてはなりませんよ? わかりましたか?」

「は~い♪」

 ミルズの言葉に従い生徒たちは返事を返すと、それと同時に授業終了の鐘の音が鳴った。

「っと本日の授業はここまで。では皆さんまた来週」

 それだけ言うと、歴史担当の女性教師であるミルズは、授業終了の礼をしてそそくさと勇者科の教室を後にしていった。

 それと同時に窓際の座席に座って、熱心に授業を聞いていたルミナの周りに人だかりが出来る。

 カナタとは違い性格や容姿にも恵まれているルミナは、新入生歓迎会での活躍もあり、同学年では絶大な人気を誇っていたからだ。

 そのため授業が終わるたびに、ルミナの周りには毎回のように人の輪が出来上がっていた。ルミナに興味津々の女子生徒たちである。

 そのためルミナは授業が終わるたびに、毎回のように自分を取り囲んで談笑してくる女子生徒たちと、たわいない世間話や年頃の娘なら出るであろう色恋の話などで談笑していたのである。

 それがここしばらくの間勇者科で、ルミナが受けていた扱いであった。

 しかしその日は少し違っていた。
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