ネクロマンサーズソード

鳴門蒼空

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№26 ガマの居城⑨ 巨人オデイロン① ジーンと巨人オデイロン

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「はぁはぁはぁここまでくればあとはあれを復活させるだけだ」
 
 ジーンが荒い息をつきながら逃げ延びた先は、城の裏側の城壁だった。

「巨人オデイロン。まさかこいつを使うことになるとはな」

ジーンは手足に枷をかけられて、野太い鎖で城壁につながれたまま死に絶えている巨大な巨人の亡骸を見上げながら、過去の出来事を思い出していた。

「ジーン。この巨人オデイロンには決して近付くな」

 エリスが手足に枷をかけられて、野太い鎖で城壁につながれたまま死に絶えている巨大な三階建ての家屋ほどもある巨人の亡骸を見上げて言った。

「近付くなっつってもよ。こんな干からびたでくの坊に何ができんだよ?」

 エリスと同じように巨人を見上げていたジーンが、エリスのほうを振り返って、干からびた巨人の亡骸をゴンゴンと裏拳で叩きながら言った。

「なにもできんさ」

「なら近付いてもいいじゃねぇかよ?」

「まぁな。ただこの巨人オデイロンは、生前人間たちを見境なしに喰い荒らし、殺戮の限りを尽くした凶悪なものだったと伝えられている」

「へぇこいつがねぇ。今は見る影もねぇわな」

 ジーンは今や鎖で城壁に拘束されて、身動き一つ取れなくなって、干からびた巨人の亡骸を見つめながら答えた。

「ああ、だがこいつは危険すぎる」

「なら、ネクロの力でこいつを復活させてやれば、ガマの野郎を始末できるんじゃねぇか?」

 エリスの言葉を聞いたジーンが、何とはなしに頭に浮かんだ言葉を呟いた。

「無理だな。奴の不死の力が我々の不死殺しの力を上回っている以上、私たちが甦らせたアンデッドでは、奴を始末することはできんさ。それに」

「それに、なんだよ?」

「我々程度のネクロの力では巨人族を甦らせたとしても、完全に制御下におくことなどできないだろう。よってジーン。この巨人オデイロンには手を出すな。手を出せば待っているのは自らの破滅だけだ」

 エリスがジーンの青い瞳をまっすぐに見つめながら答えた。

「わかったぜ」

 ジーンもエリスの青い瞳をまっすぐに見つめ返しながら、返事を返したのだった。
 
 過去のエリスとのやりとりを思い出しながらも、今奴を倒すにはこれしかねぇ。そう思ったジーンが、ネクロマンサーソードを抜き放ち、巨人の亡骸に向かって高く跳躍すると、気合の声を上げながら、巨人の亡骸の胸に深くネクロマンサーソードを突き刺すと共に、ありったけのネクロの力を注ぎ込んだのだった。

「あたしのネクロの力を受けて、不死となって再びこの世に甦りやがれっ巨人オデイロンッ! ウオオオオオオッ!!」

 ジーンのありったけのネクロの力を注ぎ込まれた巨人の亡骸の目に淀んだ光が宿ると共に、干からびていた身体に、死人を不死者として甦らせることのできるジーンのネクロの力が行きわたると、死に絶えて干からびていたはずのオデイロンの身体は、活力を取り戻し、巨人族特有の筋骨隆々の姿を取り戻していった。

 ジーンの死者を復活させることの出来るネクロの力を受けて、再びこの世に復活した巨人オデイロンが、大地を揺るがすような咆哮を上げた。

「グオオオオオォォォオオォォォオオオオオッッ!!」
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