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第二幕 現世邂逅
第百二十四話 川の上の戦い② 川の中に潜むもの②
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ステータスだけを見るに、地亀の俺に対して効果的な攻撃スキルは『噛み付き』の一つだけだし、中距離や遠距離系の厄介なスキルは一切持っていないが、地亀はゴツゴツとした硬い甲羅を背負っているせいで、基本的な防御力と火耐性が高い。そして水中にいる間は、火耐性にかなりの補正がかかるというところも厄介だ。
しかも地亀の奴は、攻撃力に関係なく、硬い岩肌を噛み砕くことのできるスキル『噛みつき』を有している。
このスキルは、はたから見たら一見単なる外れスキルに見えなくもないが、攻撃力に関係なく岩を噛み砕くことができるということは、火吹き人である俺の頑丈な岩肌をも、噛み砕くことができるかもしれないということになる。
水の中で上昇する火耐性に、火吹き人である俺の岩肌を噛み砕けるかもしれないスキルの『噛み付き』と、地亀は俺との相性が非常に好い能力を有している。
しかも地亀の奴が水中にいる限り、奴の火耐性がかなり補正される上に、奴の周りの水すらも、必然的に地亀の奴に味方するはずだ。
だとしたら、俺の火力重視のスキルだけでは、地亀の奴が水中にいる限り、決定打を与えられない可能性が非常に高い。
それに、奴の唯一の接近戦専用っぽいスキル『噛みつき』が、俺の岩肌にも通用した場合。
もし俺がまかり間違って水中に落下しようものなら、水中が主戦場である地亀のスキル『噛みつき』によって、俺の岩肌が噛み砕かれる。もしくは噛み千切られてしまうかもしれない。
そしてもしそうなった場合。ほぼ火系統のスキルしか持っていない俺は、地亀の主戦場である水中では、奴に致命的なダメージを与えることはできないだろう。
そうなれば今の俺に勝ち目はない。とまでは言わないが、水中で軒並みパワーダウンしてしまいそうな火系統のスキルが主体の俺では、かなりの苦戦を強いられることは間違いないはずだ。
ただここで一つ幸いなことは、ステータスを見る限り地亀は、地蜘蛛のように瘴気を吐き出す物の類(たぐい)ではないということだ。
ならここで無理をして戦う必要はないと考えた俺の取るべき手段は一つ。地亀の奴に俺の作り出したこの石の柱が壊される前に、この場を離れてさっさと先に進むことだ。
人はこれを戦術的進行という。
まぁ実際のところ俺との種族やレベル差から見て、一体だけなら何とかなりそうだとも思うが、念には念を入れてだ。
それに地亀を相手にするなら、わざわざ奴の得意な水中ではなく、地亀という名のわりに不得意そうな陸の河川敷辺りでやり合ったほうが、簡単に片付けることができそうだからだ。
そう結論付けた俺は、川を渡るために『集石』で、次の石の柱を作り出して飛び移る。
にしても、多分地獄門から這い出て来たんだろうが、さっき戦った地蜘蛛といい。この地亀と言い。地獄門から這い出てくる奴らは、厄介な能力をもってやがるなと、俺は心の中で愚痴らずにはいられなかった。
そうして俺が川の中に作り出した石の柱に着地した直後。
今度は今までとは比べられないほどの激しい揺れが、足元の石の柱越しに俺の体を襲った。
ちっ今度はなんだ? 俺が若干の苛立ちを含み石の柱を見下ろすと、先ほどまで一体だった地亀がいつのまにか数体に増えていて、次々と俺のいる石の柱に体当たりを仕掛けている光景が視界に入って来たのだった。
地亀って一体だけじゃなかったのかよ?
最初に見た地亀が一体だけだったので、この場にいる地亀が勝手に一体だけだと思い込んでいた俺は、地亀のいる川に向かって慌てて気配探知を発動させる。
案の定というべきか、地亀のいる川に向かって俺が発動した気配探知には、地亀と思われる物の反応や、地亀よりも小さかったり大きかったりする複数の妖怪と思われる反応が引っ掛かったのだった。
はぁ。完全に油断した。河川敷にいた地蜘蛛の奴らだって、一体ってわけじゃなかったんだ。そもそも川の中の地亀が一体だけのはずがなかったんだ。
俺は先ほど目に見えていた地亀が一体だけだったので、この川には地亀が一体しかいないと勝手に思い込んでいた自分の考えを呪った。
といっても、特に俺のやるべきことは変わらない。地亀たちが石の柱を破壊する前に、この川を渡り切ることだ。
そう思った俺は、再び『集石』を発動させて石の柱を作り出すと共に、川を渡ろうと次の柱に向かって跳躍しようとするが、すんでのところで踏みとどまった。
なぜなら、今作り出したばかりの石の柱が何物かの手によって、根元からなぎ倒されたからだ。
バッシャアアアアアアンッといった水しぶきと共に、勢いよく空中に撒き散らされた石の柱の破片たちが、水面に叩きつけられて轟音を響かせる。
くそっ一体何がどうなっていやがる!? 俺は地亀たちが体当たりする石の柱の揺れに耐えながら状況を確認しようと、石の柱をなぎ倒した奴の気配を探った。
石の柱がなぎ倒された水面に浮かび上がってきたのは、体長三メーターほどの尖った岩肌のような亀の甲羅の中に、本物の鰐が入っているような姿をした地亀の姿だった。
あいつが体当たりをかまして石の柱をなぎ倒したのか!? 俺は鰐のような地亀の姿を凝視して鑑定する。
名前 なし
種族 鰐亀(ワニガメ) (地亀の進化体)
レベル 41/42
状態 普通
HP 248/248
MP 20/20
攻撃力65
防御力45
素早さ2+3=5 (水中移動時に限る)
呪力20
耐性
水耐性+15
炎耐性+25+20=45 (水中補正)
スキル
噛みつき レベル5 (強靭なあごの力を利用して、簡単に岩を砕くことができる。噛まれたが最後相手の息の根を止めるか、噛みついた部位を噛み千切るか引き千切るまで決してはなさない)
水の吐息(ブレス) レベル2 (口から一トンほどの小さな川のような水の塊を吐き出す)
常時発動スキル
水中遊泳 レベル3 (地上を移動するよりも、水中にいる時の方が動きに素早さ補正がかかる)
称号
獰猛(腹が減ったが最後たとえ仲間であろうと食らいつく)
貪欲(己の力を高めるためならば同族だろうと糧にする)
雑食 (草や木や肉など、ありとあらゆる食物を喰らうことができる)
特徴
地獄の川や湿地などに住み、地獄を徘徊する鬼や大鬼や死肉。果ては同族であろうと腹が減れば何でも喰らう。雑食性で非常に獰猛な性格をしている。
備考 地亀と同じく頑丈で、尖った岩肌ような亀の甲羅を持っているために、生半可な攻撃では、ほとんどのダメージを負わない。
そして頑丈な甲羅は、ただでさえ火に強いが、水中にいる間は、特に水の加護を受けているのではないかというほどに火に強くなる。
次のレベルまでの必要経験値189
しかも地亀の奴は、攻撃力に関係なく、硬い岩肌を噛み砕くことのできるスキル『噛みつき』を有している。
このスキルは、はたから見たら一見単なる外れスキルに見えなくもないが、攻撃力に関係なく岩を噛み砕くことができるということは、火吹き人である俺の頑丈な岩肌をも、噛み砕くことができるかもしれないということになる。
水の中で上昇する火耐性に、火吹き人である俺の岩肌を噛み砕けるかもしれないスキルの『噛み付き』と、地亀は俺との相性が非常に好い能力を有している。
しかも地亀の奴が水中にいる限り、奴の火耐性がかなり補正される上に、奴の周りの水すらも、必然的に地亀の奴に味方するはずだ。
だとしたら、俺の火力重視のスキルだけでは、地亀の奴が水中にいる限り、決定打を与えられない可能性が非常に高い。
それに、奴の唯一の接近戦専用っぽいスキル『噛みつき』が、俺の岩肌にも通用した場合。
もし俺がまかり間違って水中に落下しようものなら、水中が主戦場である地亀のスキル『噛みつき』によって、俺の岩肌が噛み砕かれる。もしくは噛み千切られてしまうかもしれない。
そしてもしそうなった場合。ほぼ火系統のスキルしか持っていない俺は、地亀の主戦場である水中では、奴に致命的なダメージを与えることはできないだろう。
そうなれば今の俺に勝ち目はない。とまでは言わないが、水中で軒並みパワーダウンしてしまいそうな火系統のスキルが主体の俺では、かなりの苦戦を強いられることは間違いないはずだ。
ただここで一つ幸いなことは、ステータスを見る限り地亀は、地蜘蛛のように瘴気を吐き出す物の類(たぐい)ではないということだ。
ならここで無理をして戦う必要はないと考えた俺の取るべき手段は一つ。地亀の奴に俺の作り出したこの石の柱が壊される前に、この場を離れてさっさと先に進むことだ。
人はこれを戦術的進行という。
まぁ実際のところ俺との種族やレベル差から見て、一体だけなら何とかなりそうだとも思うが、念には念を入れてだ。
それに地亀を相手にするなら、わざわざ奴の得意な水中ではなく、地亀という名のわりに不得意そうな陸の河川敷辺りでやり合ったほうが、簡単に片付けることができそうだからだ。
そう結論付けた俺は、川を渡るために『集石』で、次の石の柱を作り出して飛び移る。
にしても、多分地獄門から這い出て来たんだろうが、さっき戦った地蜘蛛といい。この地亀と言い。地獄門から這い出てくる奴らは、厄介な能力をもってやがるなと、俺は心の中で愚痴らずにはいられなかった。
そうして俺が川の中に作り出した石の柱に着地した直後。
今度は今までとは比べられないほどの激しい揺れが、足元の石の柱越しに俺の体を襲った。
ちっ今度はなんだ? 俺が若干の苛立ちを含み石の柱を見下ろすと、先ほどまで一体だった地亀がいつのまにか数体に増えていて、次々と俺のいる石の柱に体当たりを仕掛けている光景が視界に入って来たのだった。
地亀って一体だけじゃなかったのかよ?
最初に見た地亀が一体だけだったので、この場にいる地亀が勝手に一体だけだと思い込んでいた俺は、地亀のいる川に向かって慌てて気配探知を発動させる。
案の定というべきか、地亀のいる川に向かって俺が発動した気配探知には、地亀と思われる物の反応や、地亀よりも小さかったり大きかったりする複数の妖怪と思われる反応が引っ掛かったのだった。
はぁ。完全に油断した。河川敷にいた地蜘蛛の奴らだって、一体ってわけじゃなかったんだ。そもそも川の中の地亀が一体だけのはずがなかったんだ。
俺は先ほど目に見えていた地亀が一体だけだったので、この川には地亀が一体しかいないと勝手に思い込んでいた自分の考えを呪った。
といっても、特に俺のやるべきことは変わらない。地亀たちが石の柱を破壊する前に、この川を渡り切ることだ。
そう思った俺は、再び『集石』を発動させて石の柱を作り出すと共に、川を渡ろうと次の柱に向かって跳躍しようとするが、すんでのところで踏みとどまった。
なぜなら、今作り出したばかりの石の柱が何物かの手によって、根元からなぎ倒されたからだ。
バッシャアアアアアアンッといった水しぶきと共に、勢いよく空中に撒き散らされた石の柱の破片たちが、水面に叩きつけられて轟音を響かせる。
くそっ一体何がどうなっていやがる!? 俺は地亀たちが体当たりする石の柱の揺れに耐えながら状況を確認しようと、石の柱をなぎ倒した奴の気配を探った。
石の柱がなぎ倒された水面に浮かび上がってきたのは、体長三メーターほどの尖った岩肌のような亀の甲羅の中に、本物の鰐が入っているような姿をした地亀の姿だった。
あいつが体当たりをかまして石の柱をなぎ倒したのか!? 俺は鰐のような地亀の姿を凝視して鑑定する。
名前 なし
種族 鰐亀(ワニガメ) (地亀の進化体)
レベル 41/42
状態 普通
HP 248/248
MP 20/20
攻撃力65
防御力45
素早さ2+3=5 (水中移動時に限る)
呪力20
耐性
水耐性+15
炎耐性+25+20=45 (水中補正)
スキル
噛みつき レベル5 (強靭なあごの力を利用して、簡単に岩を砕くことができる。噛まれたが最後相手の息の根を止めるか、噛みついた部位を噛み千切るか引き千切るまで決してはなさない)
水の吐息(ブレス) レベル2 (口から一トンほどの小さな川のような水の塊を吐き出す)
常時発動スキル
水中遊泳 レベル3 (地上を移動するよりも、水中にいる時の方が動きに素早さ補正がかかる)
称号
獰猛(腹が減ったが最後たとえ仲間であろうと食らいつく)
貪欲(己の力を高めるためならば同族だろうと糧にする)
雑食 (草や木や肉など、ありとあらゆる食物を喰らうことができる)
特徴
地獄の川や湿地などに住み、地獄を徘徊する鬼や大鬼や死肉。果ては同族であろうと腹が減れば何でも喰らう。雑食性で非常に獰猛な性格をしている。
備考 地亀と同じく頑丈で、尖った岩肌ような亀の甲羅を持っているために、生半可な攻撃では、ほとんどのダメージを負わない。
そして頑丈な甲羅は、ただでさえ火に強いが、水中にいる間は、特に水の加護を受けているのではないかというほどに火に強くなる。
次のレベルまでの必要経験値189
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