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第二幕 現世邂逅
第八十九話 鑑定不可
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「ふんっそんなおもちゃを使わねば、我が屍鳥の攻撃を防げぬとはな。やはり雑魚か」
道人は集石によって、石壁を作り身を護った俺を見下ろしながら、心底落胆したようなため息をつく。
「それにしても、地獄から這い出してきた鬼がいると聞き及び。あわよくば式にでもしようと思って見に来てみれば、それがよもやこんな雑魚とはな。これなら数を頼りに押し寄せる餓鬼の方がまだ使えるわ」
道人は鼻で笑いながら弱者を見る目で俺を見下す。
俺は道人に見下ろされながらも、何とかこの場で生き残る活路を見出そうと、鑑定を発動させて道人を凝視する。
だが、道人が一瞬目を見開き俺を睨み付けただけで、俺の鑑定さんが弾かれて鑑定を阻害されてしまう。
な!? マジか!? 初めて鑑定を弾かれた俺は、驚愕に眼を見開いて、思わず道人を見つめてしまっていた。
「鑑定を弾かれたのがそんなに驚きか? 最上級の悪鬼羅刹の類ならばともかく、貴様のような下級鬼の扱う鑑定など、我には通じぬ」
どうやら俺の鑑定さんを弾いたことや、大鬼たちや餓鬼の群れをあっさりと葬り去ったことからみても、この道人という陰陽師は、明らかに玲子たちとは強さの次元が違うようだった。
そのことを改めて認識した俺は、気を引き締めつつも、名を聞き姿を目にしただけで殺意がわく道人という陰陽師に、一泡吹かせてやりたくなった。
好き勝手言いやがって、こうなったら俺が雑魚かどうか。自分の体で確めてみりゃあいい。
そう思った俺は、地面に膝をつき思うように力の入らないまま、地に両手をつくと、俺のことを好き勝手言いまくる道人という陰陽師の足元に向かって、人がギリギリ死なない程度。否、この道人という陰陽師がギリギリ死なないと思われる威力の『火線』を迸らせる。
「ふんっ児戯だな」
道人が鼻を鳴らし、そうつまらなそうに呟くと、俺が道人目がけて迸らせた『火
線』は、道人の足元まで到達すると、まるで虫けらを踏み潰すように、道人の履いている草鞋に踏みつぶされただけで、あっさりとかき消されてしまった。
な!? さすがの俺も、ある程度手加減していたとはいえ、ここまで簡単に『火線』が破られるとは全く思っていなかったので、思わず言葉を詰まらせてしまう。
「ふむ。我が屍鳥の放つ死喰い羽(しくいばね)をこれだけ受けて、まだ動くか。胆力はなかなかあるようだが、いかんせん餓鬼洞から這い出て来た悪鬼にしてはいささか弱すぎるわ。これではやはり我が式にするにはあたいせぬな」
数多くの餓鬼を葬って来た俺の攻撃スキル『火線』をあっさりと撃ち破った道人は、落胆した口調で呟いた後、俺に向けて左手をかざしながら呪を唱えた。
「悪鬼羅刹の力を身の内から喰らいて、その身を滅ぼさん。『屍喰』(しっくい)救急如律令」
素早く呪を唱え終わった道人の左手の平から、人の腕の骨ほどの先の尖った幾つもの白く太い骨が出現し、俺の体に向かって射出された。
この程度の速度ならかわせる。と思った俺は、素早くその場で立ち上がって道人の攻撃をかわそうとするも、なぜか俺の体は思うように動かずに、その場に何とか立ち上がれただけで、道人の射出した先端が鋭く尖った白い骨を、まるで田畑に立たされている棒立ちのカカシのように、四肢にグサグサグサッとまともに喰らってしまう。
四肢に白い骨を喰らった俺の姿は、まるで先ほど空から降り注いできた先の鋭く尖った白い骨の雨に全身を貫かれ、地面に縫い付けられて絶命した餓鬼たちの姿をなぞるように、仰向けで地面に体を縫い付けられて、動きを封じられてしまっていた。
道人は集石によって、石壁を作り身を護った俺を見下ろしながら、心底落胆したようなため息をつく。
「それにしても、地獄から這い出してきた鬼がいると聞き及び。あわよくば式にでもしようと思って見に来てみれば、それがよもやこんな雑魚とはな。これなら数を頼りに押し寄せる餓鬼の方がまだ使えるわ」
道人は鼻で笑いながら弱者を見る目で俺を見下す。
俺は道人に見下ろされながらも、何とかこの場で生き残る活路を見出そうと、鑑定を発動させて道人を凝視する。
だが、道人が一瞬目を見開き俺を睨み付けただけで、俺の鑑定さんが弾かれて鑑定を阻害されてしまう。
な!? マジか!? 初めて鑑定を弾かれた俺は、驚愕に眼を見開いて、思わず道人を見つめてしまっていた。
「鑑定を弾かれたのがそんなに驚きか? 最上級の悪鬼羅刹の類ならばともかく、貴様のような下級鬼の扱う鑑定など、我には通じぬ」
どうやら俺の鑑定さんを弾いたことや、大鬼たちや餓鬼の群れをあっさりと葬り去ったことからみても、この道人という陰陽師は、明らかに玲子たちとは強さの次元が違うようだった。
そのことを改めて認識した俺は、気を引き締めつつも、名を聞き姿を目にしただけで殺意がわく道人という陰陽師に、一泡吹かせてやりたくなった。
好き勝手言いやがって、こうなったら俺が雑魚かどうか。自分の体で確めてみりゃあいい。
そう思った俺は、地面に膝をつき思うように力の入らないまま、地に両手をつくと、俺のことを好き勝手言いまくる道人という陰陽師の足元に向かって、人がギリギリ死なない程度。否、この道人という陰陽師がギリギリ死なないと思われる威力の『火線』を迸らせる。
「ふんっ児戯だな」
道人が鼻を鳴らし、そうつまらなそうに呟くと、俺が道人目がけて迸らせた『火
線』は、道人の足元まで到達すると、まるで虫けらを踏み潰すように、道人の履いている草鞋に踏みつぶされただけで、あっさりとかき消されてしまった。
な!? さすがの俺も、ある程度手加減していたとはいえ、ここまで簡単に『火線』が破られるとは全く思っていなかったので、思わず言葉を詰まらせてしまう。
「ふむ。我が屍鳥の放つ死喰い羽(しくいばね)をこれだけ受けて、まだ動くか。胆力はなかなかあるようだが、いかんせん餓鬼洞から這い出て来た悪鬼にしてはいささか弱すぎるわ。これではやはり我が式にするにはあたいせぬな」
数多くの餓鬼を葬って来た俺の攻撃スキル『火線』をあっさりと撃ち破った道人は、落胆した口調で呟いた後、俺に向けて左手をかざしながら呪を唱えた。
「悪鬼羅刹の力を身の内から喰らいて、その身を滅ぼさん。『屍喰』(しっくい)救急如律令」
素早く呪を唱え終わった道人の左手の平から、人の腕の骨ほどの先の尖った幾つもの白く太い骨が出現し、俺の体に向かって射出された。
この程度の速度ならかわせる。と思った俺は、素早くその場で立ち上がって道人の攻撃をかわそうとするも、なぜか俺の体は思うように動かずに、その場に何とか立ち上がれただけで、道人の射出した先端が鋭く尖った白い骨を、まるで田畑に立たされている棒立ちのカカシのように、四肢にグサグサグサッとまともに喰らってしまう。
四肢に白い骨を喰らった俺の姿は、まるで先ほど空から降り注いできた先の鋭く尖った白い骨の雨に全身を貫かれ、地面に縫い付けられて絶命した餓鬼たちの姿をなぞるように、仰向けで地面に体を縫い付けられて、動きを封じられてしまっていた。
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