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第一幕 地獄世界に転生した
第一六話 武人死人対餓鬼王
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黒く長い残バラな髪。白い死に装束は、黒い死に装束へとかわり、死に装束をまとめる帯の色も黒へと変わる。
先ほどまでは、帯を使い器用に腰に差していた黒刀も一回り太く大きくなり、背中に吊るす形となって、存在感をました。
武人死人は、背中に吊るした一回り大きくなった刀を掴み、地を駆ける。
当然目標は、餓鬼王だ。
武人死人の接近に気づいた餓鬼王は、腐餓鬼時代とは比べ物にならないほどの巨大な咆哮を上げる。
「ぐがあああああっ❗」
餓鬼王のスキル『大威圧』だ。
普通、大威圧クラスの威嚇を受ければ手足がすくみ、その場で硬直してしまうはずなのだが、武人死人は餓鬼王と同格の化け物であるために、餓鬼王のスキル『大威圧』は通じていないようだった。
餓鬼王のスキル『大威圧』をものともせずに突き進んだ武人死人は、餓鬼王に刀の間合いまで近づくなり、背中に背負っていた黒く野太い刀を一線させる。
降り下ろされた刀を、餓鬼王は右腕であっさりと払いのける。
餓鬼王の常時発動スキル『硬化』だ。
これにより、餓鬼王は、ナマクラ刀などの生半可な刃物では、一切の手傷を受け付けなくなる。
だが相手も武人死人の名を冠する餓鬼王と同格の死人だ。
そのため刀を払いのけることには成功したものの刀を受けた右腕に、裂傷が走った。
「ぐうううう」
右腕に裂傷を、受けた餓鬼王が、忌々しげに武人死人を睨みつける。
たが、武人死人は怯まない。
餓鬼王に殺されたり、喰われた同胞たちの仇を討つためか、一心不乱に刀を振るうのみだった。
もちろん餓鬼王とてただ黙ってみているわけてはなかった。
餓鬼王は武人死人の連撃に、身をさらしながら丸太のように野太い腕を左右に振り回す。
単純な攻撃ではあるが、餓鬼王と武人死人では元々の体格や戦い形が違う。
餓鬼王は、恵まれた筋肉と体格やしぶとさを生かした近距離の肉弾戦。
かたや武人死人の方は、得物である刀を使った中距離戦だ。
近づけば餓鬼王が有利になり、離れれば武人死人が有利になる。
一撃の餓鬼王と、連撃の武人死人といった感じだ。
餓鬼王は、中距離から放たれる武人死人の連撃を喰らい続け、体中に裂傷のような刀傷を負って全身血まみれになるが、未だその動きは衰えす、かたや武人死人は、餓鬼王の攻撃をかわし続けてはいるが、いつまでたっても、致命的なダメージを与えられないために精神的にも肉体的にも、疲弊していった。
そんな感じに餓鬼族と死人族の頂点同士の戦いは、お互いに決め手がなく繰り広げられていた
先に業を煮やしたのは、餓鬼王の方だった。
餓鬼王は武人死人が自分の間合いの外から行う攻撃にいらついていたのか、一撃を喰らうつもりで、討って出てきたのだ。
武人死人はそれを好機と受け取ったのか、前に出てくる餓鬼王の左側面を駆け抜けるようにして、大上段から黒い刀を振り下ろす。
先ほどまでなら、武人死人の一撃は、餓鬼王の硬質の肌に阻まれて、せいぜいが裂傷を負わせる程度だったのだが、今度の武人死人の一撃は、しっかりと黒い刀を両手で握りしめ、さらに大上段から己の全体重を乗せてきた斬り落としだったために、武人死人とすれ違った餓鬼王の右腕。その付け根からものの見事に斬り落とされていたのだ。
「ぐがああああああああああっっっっ!?」
自分の体を襲う予想外の痛みに、餓鬼王が絶叫を響き渡らせる。
まずい。このままだと餓鬼王が負ける。
餓鬼王の腹の中にいた俺は、気配探知によって、餓鬼王がかなりのダメージを受けたことを悟ると、腹をくくった。
やるならここしかない。
このまま餓鬼王の腹の虫に居続けるつもりがもうとうない俺は、ありったけのMPと呪力を込める。
狙うは、武人死人が餓鬼王に止めを刺すその一瞬。俺はその一瞬にすべてをかけると、虎視眈々と狙い力を溜めていた。
餓鬼王の右腕を斬り落とした武人死人は今が好機! と、両手で黒い刀を振りかぶりながら、餓鬼王の懐に飛び込んだ。
もちろん餓鬼王とて、ただ武人死人が、飛び込んでくるのを黙ってみているわけではない。手近にあった餓鬼の死骸を投げつけてけん制する。
だがその攻撃は武人死人も予想していたのか、軽く身をそらしただけでかわし、そのまま餓鬼王に接近して、黒い刀を振り下ろそうとするが、次の瞬間、武人死人が目を開いていた。
なぜなら、餓鬼の死骸を投げつけてこちらに攻撃してきていたはずの餓鬼王が、右腕を失いながらも、一切ひるまずに巨大な体躯を武人死人に押し付けるように、牙をむき出しにして、武人死人を頭から喰らおうと突撃してきたからだ。
捨て身ともおわえるような。まったく予想だにしていなかった餓鬼王の突撃に、武人死人は一瞬目を見開くが、そちらから来てくれるとは好都合とばかりに、餓鬼王の突撃してくる勢いを利用して、
「きええええええいっ!」
と、気合の雄たけびを上げながら、餓鬼王の巨大な頭に両手で振りかぶっていた黒き刀を叩きつけてきた。
カウンター気味に武人死人の攻撃を真っ正面から受けた餓鬼王の頭は、脳天からひびが入り裂け始めた。
瞬間、俺が餓鬼王の体内から武人死人の口腔目がけて、ありったけのMPと呪力を込めた大火を解き放った。
武人死人は、まったくの予想していなかった俺の大火による攻撃を、口腔内に呑み込んだ一瞬後。体内から火達磨になり、燃え尽きていった。
そして俺は、もうすでに武人死人の一撃により頭を勝ち割られて、死に体と化していたにもかかららず、持ち前のしぶとさで命を繋ぎ止めていた餓鬼王の体内で、残ったありったけのMPと呪力を使って大火を爆発させた。
こうして俺は、自分より格上の魔物である餓鬼王と武人死人を葬ることに成功したのだった。
先ほどまでは、帯を使い器用に腰に差していた黒刀も一回り太く大きくなり、背中に吊るす形となって、存在感をました。
武人死人は、背中に吊るした一回り大きくなった刀を掴み、地を駆ける。
当然目標は、餓鬼王だ。
武人死人の接近に気づいた餓鬼王は、腐餓鬼時代とは比べ物にならないほどの巨大な咆哮を上げる。
「ぐがあああああっ❗」
餓鬼王のスキル『大威圧』だ。
普通、大威圧クラスの威嚇を受ければ手足がすくみ、その場で硬直してしまうはずなのだが、武人死人は餓鬼王と同格の化け物であるために、餓鬼王のスキル『大威圧』は通じていないようだった。
餓鬼王のスキル『大威圧』をものともせずに突き進んだ武人死人は、餓鬼王に刀の間合いまで近づくなり、背中に背負っていた黒く野太い刀を一線させる。
降り下ろされた刀を、餓鬼王は右腕であっさりと払いのける。
餓鬼王の常時発動スキル『硬化』だ。
これにより、餓鬼王は、ナマクラ刀などの生半可な刃物では、一切の手傷を受け付けなくなる。
だが相手も武人死人の名を冠する餓鬼王と同格の死人だ。
そのため刀を払いのけることには成功したものの刀を受けた右腕に、裂傷が走った。
「ぐうううう」
右腕に裂傷を、受けた餓鬼王が、忌々しげに武人死人を睨みつける。
たが、武人死人は怯まない。
餓鬼王に殺されたり、喰われた同胞たちの仇を討つためか、一心不乱に刀を振るうのみだった。
もちろん餓鬼王とてただ黙ってみているわけてはなかった。
餓鬼王は武人死人の連撃に、身をさらしながら丸太のように野太い腕を左右に振り回す。
単純な攻撃ではあるが、餓鬼王と武人死人では元々の体格や戦い形が違う。
餓鬼王は、恵まれた筋肉と体格やしぶとさを生かした近距離の肉弾戦。
かたや武人死人の方は、得物である刀を使った中距離戦だ。
近づけば餓鬼王が有利になり、離れれば武人死人が有利になる。
一撃の餓鬼王と、連撃の武人死人といった感じだ。
餓鬼王は、中距離から放たれる武人死人の連撃を喰らい続け、体中に裂傷のような刀傷を負って全身血まみれになるが、未だその動きは衰えす、かたや武人死人は、餓鬼王の攻撃をかわし続けてはいるが、いつまでたっても、致命的なダメージを与えられないために精神的にも肉体的にも、疲弊していった。
そんな感じに餓鬼族と死人族の頂点同士の戦いは、お互いに決め手がなく繰り広げられていた
先に業を煮やしたのは、餓鬼王の方だった。
餓鬼王は武人死人が自分の間合いの外から行う攻撃にいらついていたのか、一撃を喰らうつもりで、討って出てきたのだ。
武人死人はそれを好機と受け取ったのか、前に出てくる餓鬼王の左側面を駆け抜けるようにして、大上段から黒い刀を振り下ろす。
先ほどまでなら、武人死人の一撃は、餓鬼王の硬質の肌に阻まれて、せいぜいが裂傷を負わせる程度だったのだが、今度の武人死人の一撃は、しっかりと黒い刀を両手で握りしめ、さらに大上段から己の全体重を乗せてきた斬り落としだったために、武人死人とすれ違った餓鬼王の右腕。その付け根からものの見事に斬り落とされていたのだ。
「ぐがああああああああああっっっっ!?」
自分の体を襲う予想外の痛みに、餓鬼王が絶叫を響き渡らせる。
まずい。このままだと餓鬼王が負ける。
餓鬼王の腹の中にいた俺は、気配探知によって、餓鬼王がかなりのダメージを受けたことを悟ると、腹をくくった。
やるならここしかない。
このまま餓鬼王の腹の虫に居続けるつもりがもうとうない俺は、ありったけのMPと呪力を込める。
狙うは、武人死人が餓鬼王に止めを刺すその一瞬。俺はその一瞬にすべてをかけると、虎視眈々と狙い力を溜めていた。
餓鬼王の右腕を斬り落とした武人死人は今が好機! と、両手で黒い刀を振りかぶりながら、餓鬼王の懐に飛び込んだ。
もちろん餓鬼王とて、ただ武人死人が、飛び込んでくるのを黙ってみているわけではない。手近にあった餓鬼の死骸を投げつけてけん制する。
だがその攻撃は武人死人も予想していたのか、軽く身をそらしただけでかわし、そのまま餓鬼王に接近して、黒い刀を振り下ろそうとするが、次の瞬間、武人死人が目を開いていた。
なぜなら、餓鬼の死骸を投げつけてこちらに攻撃してきていたはずの餓鬼王が、右腕を失いながらも、一切ひるまずに巨大な体躯を武人死人に押し付けるように、牙をむき出しにして、武人死人を頭から喰らおうと突撃してきたからだ。
捨て身ともおわえるような。まったく予想だにしていなかった餓鬼王の突撃に、武人死人は一瞬目を見開くが、そちらから来てくれるとは好都合とばかりに、餓鬼王の突撃してくる勢いを利用して、
「きええええええいっ!」
と、気合の雄たけびを上げながら、餓鬼王の巨大な頭に両手で振りかぶっていた黒き刀を叩きつけてきた。
カウンター気味に武人死人の攻撃を真っ正面から受けた餓鬼王の頭は、脳天からひびが入り裂け始めた。
瞬間、俺が餓鬼王の体内から武人死人の口腔目がけて、ありったけのMPと呪力を込めた大火を解き放った。
武人死人は、まったくの予想していなかった俺の大火による攻撃を、口腔内に呑み込んだ一瞬後。体内から火達磨になり、燃え尽きていった。
そして俺は、もうすでに武人死人の一撃により頭を勝ち割られて、死に体と化していたにもかかららず、持ち前のしぶとさで命を繋ぎ止めていた餓鬼王の体内で、残ったありったけのMPと呪力を使って大火を爆発させた。
こうして俺は、自分より格上の魔物である餓鬼王と武人死人を葬ることに成功したのだった。
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