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思春期②妊活Domの基礎知識
2/男を金で言いなりにする方法
しおりを挟む「こ、恋人昇格…て、なに勝手に約束してンだ。優輔」
クリスタルのタンブラーから酒をこぼす勢いで震える峰睦は口から飛び出そうな心臓を飲み込む。
この頃の優輔を例えるなら思春期。
友達と親密な関係を築く成長過程を大人として見守りたい。でも一人暮らしさせるのも、社会に出すのも、心配で心配で(なぜ俺を頼ってくれないのか…)だが実際は峰睦の我慢と引き換えに優輔が笑うようになった。
「お前、それ…婚約者じゃなくて父親の心境だぞ」
愛の素っ気なさに、耐え切れず不安が言葉に変わり溢れる。
「まさか俺以外の男を好きになって婚約解消とか?」
「俺に聞くな」
「あのガキを家に上げたら、若い性欲の餌食にされてメス堕ち確定」
「友達のひとりやふたり、黙って見過ごせ」
「優輔を寝取っておいてなんだその言い方…」
苛立つ峰睦だが優輔に呼ばれると即座に愛を退けて立ち上がる。
同棲しているのに優輔から挨拶以外、話しかけられることがない危機的状況を何とか打破したい峰睦は平然を装い部屋に入るとDVDを探してるようで、上の棚に手が届かないと踵を震わせていた。
「引っ越し先で見たいから…これ…借りてもいい?」
指の先にあるのは"恋人エッチ"が人気の甘いタイトル。
恥ずかしそうに催促をする目下、優輔は可愛らしく(やっぱり俺がいないと寂しいのか…)安堵する峰睦に対して「倫が観たいっていうから」おい、ちょっと待て。
新居であのガキとシコる不正行為を認めろと?
俺が他の男とやってるところを見るのは複雑じゃなかろうかと腹の底からムラッとする峰睦は優輔を後ろから抱きしめてマーキングに耽る。
昨今のアダルトは厳しい年齢制限が敷かれている。
男性しかいないこの世界では、深夜のピンク枠は大人が楽しむ為のものであり、性に関心が高い未成年は児童相談所の管轄で精神的なコントロールと行動観察で抑圧される。少年犯罪も低年齢化され法律が動き出す世の中では、今ある欲情をどう発散すればいいのか。
従来の有害な情報は統治され、もうアダルトの存在は手軽ではない。
だが18歳で解禁される性の領域にいる峰睦は先人の知恵となり、優輔の道標にならなければいけない…のだが凡そ性欲で向き合う矛盾さを持て余しているのが現状だ。
「そんな観なくても、俺とセックス…したいと思わないの?」
濃厚なジュニパーの香りに包まれる優輔は返事に戸惑う。
拒んでも、逃げ道を塞がれるのが怖くて、遠くで見ている愛に助けを求めても目を合わせてくれないことから、自分で解決しなければいけない問題だと気持ちを改める。
「前に触って…お仕置き…されたから、自分で処理する」
「お仕置き?俺が…??」
「うん。それに俺が妊娠したら困るでしょう。避妊手術を受けます」
「……え?」
「お金は自分で用意する。万が一のことがあったら俺…ひとりで育てるから」
結婚も、妊娠も望まない。
今までたくさん我儘を言ってごめんなさい。
どんなに厳しく躾けられても我慢すると、ここまで言い切る優輔は震えながら峰睦を見上げて、決意の涙が溢れる。
そんなことを強要したつもりは無いのに、そうか。優輔は…
(俺を、怖がっているんだ)
核心に触れた瞬間、峰睦からフェロモンの匂いが消えた。
「少し、考えさせてくれ」そのまま部屋を出る峰睦が家に戻ることはなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
優輔を泣かせたくない。
その原因が自分であることに気が付いた峰睦は、優輔の繊細さにはかつての自分にもあった筈なのに失われていることに傷つき、疲れ果てていた。
都内某ホテル、上級会員のみ利用できる専用ラウンジでフルートグラスを傾ける。
シャンパーニュトップメゾンは柑橘類のフレッシュな果実香に花の香りの華やかさ、蜜にトーストを合わせた香ばしさを漂わせて消えていく。
深いゴールドは優輔に贈った指輪にも似て、美しく儚い。
もし、優輔が妊娠したら…
そればかり考えて来た。
優輔とのマッチング率は10%未満、すれ違いばかりで未だセックスはしたことがないのに優輔は男を知って歪んだ快楽が蓄積する先に恐怖を蓄える。
(望まない妊娠を避ける為に避妊手術をして、俺と…)鬼畜の所業である。
それに引き換え峰睦は妊娠が前提セックスをする気満々。剥き出しの性欲で襲い掛かったら孕むまで激ピス種付けセックスで優輔が死ぬかも知れない恐怖に震え上がり、勃起するのも申し訳ない。
セックスを拒まれているわけではない。
基本メスDomは男がシェアしたがる性質があるので避妊をするのは悪いことじゃない。それで優輔が守れるのなら納得するべきだ。それは同時に俺を…男として求めない…決定打になってしまう。
(この俺が男を相手に人為的なミス?)
転じて、やり損じている…なんて、恥ずかしくて、誰にも言えない反省会。
百獣の王と呼ばれた峰睦がたったひとりの少年に恋慕して何もできない、なんて…ドラマみたいなことってあるんだなとシャンパンを飲み干すとチャイムが鳴った。
バトラーに通されたのは、優輔。
峰睦を追いかけてホテルに押しかけて来て、また…とんでもないことを言い出す。
「急にいなくならないで」
慌てて走って来たのか、顔色が悪い優輔は泣きながら…
すごい離れた所に立っている。
近づいても一定の距離を置くので、どうしようもない状況に困惑する峰睦は言葉もなく椅子に掛けた。
「何しに来たんだよ…」
「荒木田さんが怒ってるから、謝りに来ました」
「俺、そんなに態度悪い?」
「怒るのも無理ないよね、俺…勘違いしてたみたいで」
リュックを下して深呼吸する優輔がいうには。
峰睦が欲しがっていた結婚指輪は、あまりにも高価で買ってあげられないこと。
そして、峰睦の慰み者として自分が相応しくない…と、続けて謝罪。
「あの日、男の人と…してるの…見て…俺、解ったんだ」
「……うん、なに?」
「俺は荒木田さんに恥かかせてる。だから俺のこと、嫌いなんだよね?」
「(いや、めっちゃ好きなんですけど…)嫌いだとは言ってない」
「俺は好きだよ。初めて会った時から、荒木田さんのことしか考えられない」
「そう、なんだ…」
「荒木田さんカッコいいしエッチな匂いがして、もう我慢できません」
え、ちょっと何言ってるか分からない。
優輔…え?離脱症状で、またおかしくなっているのか。
(※離脱症状:フェロモンの副作用で情緒不安定になる症状)もう我慢できない、とは?
「荒木田さんの体が有料なら、買う。いくらなの?」
峰睦の収入は世界Dom長者番付に名乗りを上げる総資産世界3位圏内、時間給でいえば億千万。
1分で7000万稼ぐ秒速の男として知られる俺を『買う』だと?
働く車のデザインが斬新なラウンドジップの小さな財布に幾ら入ってるのか知らないが、ここはひとつ…
「1分1万が相場だ」
「わかった。じゃあ3分で、お願いします」
マジで払う気だ。
もうちょっと無理な金額にしておけばよかったと激しく後悔していると、二つ折りの財布から札を3枚、指が震えてうまく取り出せない優輔は、何度も自分を落ち着かせる為に深呼吸をしていた。
初めて見るキッズ財布の構造も然ることながら、子供を相手に体を売るなんて思ってもみなかった事態に一番焦っている峰睦は流し目で平然を装う。
「お、お金…数えてください」
「震えてるけど、大丈夫?」
「あ、あの…3分間は俺だけの荒木田さんってことで、いいですか」
「何するかだけ、聞いてもいい?」
「キス…したい」
「オプション5000円になります」
「払いますっ!!あと、下の名前で呼んでもいいですか」
気分は売専。
優輔の男らしい要求に支払われた分だけは従うと答えると35.000円を受け取り、ストップウォッチが見えるようにテーブルに置く。
今はこんなだけどオラオラ系に豹変して…
「さっさとしゃぶれよ」バッキバキに強制フェラ決めて精子を飲め。
自分でエロいケツマン広げて見せろ。
ヒクつかせやがって、どんだけ男とやりまくってんだ?
この淫乱と尻を叩かれながら優輔に攻められたい妄想が止まらない峰睦は「いい?始めるよ」ボタンをタッチするとゼロ並びの数字が走り出した。
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