偽りのSub～俺と結婚してください～

Dom≒Sub/嘘

21/密約された不悉なる想い▲

　(これは、やばい…)

　
　脱力して横に倒れた優輔は、意識が無い。
　まだ勢り勃つ、それ・・を見下ろすと付け根から股にかけて内膜が剥がれた様な凝血が滴り、危機的状況に悪寒が奔る。

　「起きろ、早く手錠を…優輔っ！！」

　鈍く広がる痛みと混濁の中でカタチ・と・カタチが認識できない優輔は唇を震わせながら(荒木田さん…)途切れる意識の淀みに峰睦を求めた。

　将来性有望なDom-01母体を傷付ければ罪に問われる。

　容疑者になってしまった愛は冷静に考察しながら、優輔の体が癒えるのを待つ。
　性行為から72時間以内に緊急避妊薬であるブロック剤を飲ませたいが処方には本人の申告が必要だ。100％効果があるとは限らないが妊娠させてしまった・・・・・・・場合、どのように隠蔽処理するか？
　今まで経験したことがない深刻な男らしい悩みの前に目覚める優輔は腹部の痛みに目を細めながら少し上がった息を付いた。

　「病院へ行こう」
　「このくらい平気。終わった後いつも熱出るし、少し休めば…」

　いつも？そんな話は聞いてない。
　炎症反応からの熱なのか、まさか感染ロストしたのでは？
　それなら好都合だと勝手な解釈にすり替える愛は冷静さに欠け、優輔の言葉に追い込まれる。

　「種は貰えたから、あとは妊娠できれば…」

　軋む体を揺り起こし、やっと立ち上がる優輔はおぼつかない足取りで着替え始めた。あの愚行は＜妊娠を前提とした既成事実＞だったなんて…何とか出産に漕ぎつけようとしている大胆な行動に愛は波止場となる気が利いた言葉なんて、何ひとつ浮かばない率直な意見を述べた。

　「子供なんか・・・できたら困る」
　「荒木田さんも同じようなこと言ってた。孕んだら…堕ろせ」
　「当たり前だろ」
　「ずっとゴムつけてるからおかしいと思ったら、結局それ？」
　「避妊だけじゃないセーフには意味がある。これ以上、俺を怒らせるな」
　「どうして？俺は子供を産まないと借金も返せないし、好きでもない男に弄ばれて何が当たり前なの？どうせ俺も、子供も…殺されるんだから好きにさせて」

　匂いで解る。
　感情的になる優輔の足の間から血混じりの体液が流れ落ちていた。乱暴な言葉使いに手が…出そうになるのを堪えるだけ、まだ理性は残っていた。

　「峰睦に嘘をついてまでそんな事…犯罪だぞ」
　「いいの？俺にしたこと全部バラすよ。赤ちゃんができたら…」




　……　乱　暴　した、一条さんのせいだよ。　……




　ボロボロ泣き出す優輔は声にならない声で話を続けるが、聞くに堪えがたい苦しい数々に抱きしめて謝罪するより他に今できる最善を見出せない愛は、身勝手な行為で優輔を傷付けたことを認めた。

　「全部話してくれて構わない、だから病院へ行こう」
　「一晩だけ待って…ちゃんと考えたい」
　「優輔、頼むから俺の言う事を…」
　「今まで好きにしておいて、まだそんな事いうの？」

　愛の腕の中で、堰を切ったように大きな声で泣き出す。
　優輔の痛みに引き裂かれる愛はこの後、大胆不敵に裏切られ次第に優輔への想いに身も心も染め上げられて往く。
　Domの純潔は禁猟区。一度でも足を踏み入れれば支配され何もかも奪われることが唯一絶対の悦びに変わるのがUsの運命だと知るまでの猶予は、あと3日。