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昂る縹の熱情
第24話 哀悼の意を捧げる
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テーブルの上にブランドを象徴する花模様の大皿を並べる。
「しんちゃーん、ご飯できたよ」ドアが開くとシシマル猛進。続いてしんちゃんがドレスシャツのカフスボタンを外して、眼鏡をカウンターに置く。
「お疲れ様です。ワインこれでいい?」
「任せる。で、今日は?」
「シーフードのごはん、パエリア」
「へぇ、こんなの作れるのか」
「炊飯器レシピだけどね」
シシマルには鶏ささみのゆで肉とカット温野菜に、特別な日に食べる缶詰。
お座りのルーティンからヨシで食べ始める。
「ああ、美味い。半年前に知っていれば……なぁ? まゆ」
不動産で成功した高給取りとのデートは、フレンチか寿司と相場が決まってる。
頭の悪いガキなら特別な演出や、高級なプレゼントという非現実に舞い上がり、代償として体を許すけど、私は食わず嫌いが激しくて、高級と名の付くものは殆ど食べれない。
物より現物支給
そんな調子で半年付き合ってきたしんちゃんが健康診断に引っかかり、食事の用意をした事がきっかけで今に至る。
「僕と半年付き合ってみて、どう?」
「どうって。聞き分けが良いし、体の相性もいい。顔も俺好み」
手を拭きながらフォークを置くタイミングで、お皿にサラダを取り分けて渡す。
「ただ、もう少し我儘でもいいかな」
「僕より我儘な男なんているの?」
「負けず嫌いという点においては相当、我が強い。でも表現力の豊かさに欠ける。というより、視野が狭い。まゆくらいの年ならもっと皆、弾けているだろう」
「まぁ、大学の友達は吐くまで飲むとか、今しかできないことを詰め込んでるね。確かに」
「……だろ?もっと純粋に生きることを愉しまないと」
自分で聞いておいて何だけど、こういう話は苦手。
酔っぱらってセックスしてる方がずっと楽で、無責任で。
嫌なこと全部、忘れられる。
それは言えなかったけど、笑おうとしても口角が上がらず、哀しい顔してるとわかっていながら、目を細めるだけで精一杯な私を気遣ってくれるこの男もまた私を大切に愛してくれる。
半年も辛抱強く私と居られるのだから、大した者だ。
「今夜は泊ってくれるよな?」
「最初からそのつもりだけど」
「彼氏はいいのか。それとも、喧嘩して帰れないのか?」
「やめて、そういうのじゃないから」
「同棲してるんだろ?あそこのマンションは間取りも、住人の個人情報も把握している。俺を誰だと思っているんだ」
何も言わず、アイスクリームを食べて誤魔化すつもりだったけど、しんちゃんの質問に答えられる筈もなく、気持ちを漂わせていた。
「僕は与えられた物しか選べないし、自分しか好きじゃないから、誰かを選ぶことはできない。だから皆で僕を切り分けて、食べたらいいよ」
「俺だけのものになる気はないのか」
「ごめん。そんな贅沢、考えた事なかった」
「そこで俺のこと好きって、甘えないと。下手くそ」
顎をくすぐられて、首を傾げる。
「脚じゃなくて心を開いたら、どうなんだ」
口数の多い男だ。
こんな子どもに銭を溶かして、どうせ抱き尽くす癖に。
どうして男は「好き」を欲しがるのか?
自分には無い感情に共感できないまま、携帯に届く着信音は、声に掻き消され夜を明かす。ふたりで居るのに、独りぼっちの寂しい私は、体温だけを求めていた。
「しんちゃーん、ご飯できたよ」ドアが開くとシシマル猛進。続いてしんちゃんがドレスシャツのカフスボタンを外して、眼鏡をカウンターに置く。
「お疲れ様です。ワインこれでいい?」
「任せる。で、今日は?」
「シーフードのごはん、パエリア」
「へぇ、こんなの作れるのか」
「炊飯器レシピだけどね」
シシマルには鶏ささみのゆで肉とカット温野菜に、特別な日に食べる缶詰。
お座りのルーティンからヨシで食べ始める。
「ああ、美味い。半年前に知っていれば……なぁ? まゆ」
不動産で成功した高給取りとのデートは、フレンチか寿司と相場が決まってる。
頭の悪いガキなら特別な演出や、高級なプレゼントという非現実に舞い上がり、代償として体を許すけど、私は食わず嫌いが激しくて、高級と名の付くものは殆ど食べれない。
物より現物支給
そんな調子で半年付き合ってきたしんちゃんが健康診断に引っかかり、食事の用意をした事がきっかけで今に至る。
「僕と半年付き合ってみて、どう?」
「どうって。聞き分けが良いし、体の相性もいい。顔も俺好み」
手を拭きながらフォークを置くタイミングで、お皿にサラダを取り分けて渡す。
「ただ、もう少し我儘でもいいかな」
「僕より我儘な男なんているの?」
「負けず嫌いという点においては相当、我が強い。でも表現力の豊かさに欠ける。というより、視野が狭い。まゆくらいの年ならもっと皆、弾けているだろう」
「まぁ、大学の友達は吐くまで飲むとか、今しかできないことを詰め込んでるね。確かに」
「……だろ?もっと純粋に生きることを愉しまないと」
自分で聞いておいて何だけど、こういう話は苦手。
酔っぱらってセックスしてる方がずっと楽で、無責任で。
嫌なこと全部、忘れられる。
それは言えなかったけど、笑おうとしても口角が上がらず、哀しい顔してるとわかっていながら、目を細めるだけで精一杯な私を気遣ってくれるこの男もまた私を大切に愛してくれる。
半年も辛抱強く私と居られるのだから、大した者だ。
「今夜は泊ってくれるよな?」
「最初からそのつもりだけど」
「彼氏はいいのか。それとも、喧嘩して帰れないのか?」
「やめて、そういうのじゃないから」
「同棲してるんだろ?あそこのマンションは間取りも、住人の個人情報も把握している。俺を誰だと思っているんだ」
何も言わず、アイスクリームを食べて誤魔化すつもりだったけど、しんちゃんの質問に答えられる筈もなく、気持ちを漂わせていた。
「僕は与えられた物しか選べないし、自分しか好きじゃないから、誰かを選ぶことはできない。だから皆で僕を切り分けて、食べたらいいよ」
「俺だけのものになる気はないのか」
「ごめん。そんな贅沢、考えた事なかった」
「そこで俺のこと好きって、甘えないと。下手くそ」
顎をくすぐられて、首を傾げる。
「脚じゃなくて心を開いたら、どうなんだ」
口数の多い男だ。
こんな子どもに銭を溶かして、どうせ抱き尽くす癖に。
どうして男は「好き」を欲しがるのか?
自分には無い感情に共感できないまま、携帯に届く着信音は、声に掻き消され夜を明かす。ふたりで居るのに、独りぼっちの寂しい私は、体温だけを求めていた。
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