俺と彼女と能力者

燈希 とうき

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俺と彼女と能力者

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 僕には妹がいた。
 2年前に事故で亡くなって以来僕は一人暮らしをしている。
妹は優しく、そして学校でも知らない人はいないというくらいの超絶美少女だった。
そんな事を思い出し、
 ふと空を見上げた。
悲しげな満月と、どこかで自分が嘲笑われているかのような孤独感が僕【桐原隼人】のお気に入りだ。
 生きていて楽しいと思った事はない。
そんな退屈な日々が一生続くと思うといてもたってもいられない。
 「いっそこんな世界なくなっちまえばいいのにな。」
 怪しげな雲が満月を覆い隠す。
 それに伴い、満月の光が消えた。
 まるでこちらを見るかのように。
 そっと僕の前から姿を消した。

 ある日の学校の帰り道。
 僕は誰かにつけられていた。
声をかけようにも、怖くてかけられやしない。
まず僕をストーカーする人がいる事自体が不自然すぎる。
 いや、逆で考えるんだ。
この人はあまりにも僕が美しいからきっとモデルスカウトしに来たんだ。
 うん。きっとそうだ、そうだったんだ。
歯を食いしばり自分の思い込みのまま声をかける事にした。
いや、でも待て。
そもそも本当に僕の事をつけているのか。
 つけているなら何故行動に出ない。
少しくらいの動きはあっていいはずじゃないか?
 やはりここは一度作戦を立ててから声をかけるべきじゃないのか。
しかし、後ろを振り向かない限りこいつの顔や声、そもそも性別すらも分からない。
どうすればいい。
 あまりにも深く考えすぎても時間の無駄だし、さっさと本題に入ろう。
 サッと胸ポケットからスマホを取り、若干髪を整えるかのように見せつつ、後ろを確認した。
ばれないようスマホを慎重に覗き込んだ。
 その時、僕は一瞬頭の中が真っ白になった。
 まるで人生半分を使い果たしたかのように。
 何かを思い出したかのように。

 そこに写っていたのは死んだはずの妹だった。
 あまりにも酷すぎやしないか。
 何故妹がここにいるんだ。
僕はすぐに喋り掛けようとしたが放心状態のため、何もかもが理解不能となり、その場で倒れた。
その後は何があったのかすら覚えていない。
 それくらい妹の事が好きだった。

 最初に見たのは白色の綺麗な天井。
 その次に見たのはその倍綺麗な看護師さん。
 そして次に見たのは。
見たのは。
やっと見れた。
2年ぶりの妹。
 昔と比べとても大人びた雰囲気の妹。
 そんな可愛い妹の第一声がこれだ。
「あっ起きたねお兄ちゃん!じゃあ始めよっか、能力者(ステルス)狩り!」
 この時の俺はまだ、いまの妹が何を言ってるのかすら分からず、ただ嬉しいという気持ちだけで溢れていた。
 この先何があるかも知らずに…

 
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