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視線
視線に気づかない攻め×視線に気づいてもらえない受け④
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あ! 生きてる! 怪我をたくさんして色んな機械が繋がってるけど、僕が生きてる!
僕は体に戻ろうとした。でもどうしてか自分の体なのに入れない。
どうしてだよ~!
「受け君…!」
僕が泣き出すと、彼も涙を流した。そして、僕の名を読んでくれた。
攻め君、僕の名前、知っていてくれたの?
「なあ、目を覚ましてくれよ。君が作った向日葵を、君から俺にくれよ」
え?どうしてそのことを?
「昨夜妹から聞いたよ。君が俺をずっと見ていてくれたって。妹とは親の離婚で別々に暮らして疎遠になっていたんだけど、同じ高校に来たのをきっかけに再会したんだ。でも、うまく接することができなくて」
攻め君はその日から毎日お見舞いに来てくれて、目覚めない僕に話しかけてくれた。
「そんなある日、よく人助けをしている君が妹と同じ園芸部だと知った」
え?僕が君の真似で人助けをしていたのも知っていたの?
「それがきっかけで、妹とも話せるようになって、君の素敵なところをたくさん聞いたよ。妹は君が好きだったようだけど、君の俺への気持ちに気付いていたんだ。でも人の思いを勝手には言わないやつだから、俺はずっと気付かないままで、この思いを閉じこめて卒業しようとしていた」
え?え?待って情報過多。
霊体だと頭が回りにくいんだ。わかりやすいように言ってよ。…と言ってももちろん届かない。
僕はここにいるのに、攻め君に声も視線も届かない。
「妹から君が事故に遭ったと聞いて、いても立ってもいられないよ。受け君。目覚めたら、君に言いたいことがある。だから早く目覚めてくれ」
攻め君、それって……。
その日から、僕は体に戻ろうと頑張った。でも何度やっても戻れない。
時はもう、七月になろうとしていた。
ある日、攻め君が向日葵を持ってやって来た。夏になったから本当の向日葵だ。
「受け君。目覚めてくれ。早く君の声が聞きたい。君と目を合わせたい。しっかりと、触れ合いたい……!」
攻め君、僕もだよ。君に僕の思いを届けたい、君を見つめたい。君に、触れたい!
「受けくん、好きだ」
攻めくん、好きだ!
声が重なった。攻め君が好きだと言ってくれた!
その瞬間。
「ん……」
嘘みたいに軽かった体が急に重苦しく痛くなる。ずいぶんガチガチになって指まで動かしにくい……え?
「え…?受け、君? …か、看護師さん!受けくんが!」
あ、れ? 僕、下から攻め君を見てる。これって、もしかして戻った…?
────5日後。僕はたどたどしいながらも言葉が話せるようになり、体を動かせるようになった。
「受け君、よかった。よかった!」
攻め君が男泣きに泣く。僕も涙がたくさん出て、看護師さんに心配されてしまう。
「たくさん泣いてしまった。でも、受け君に再会できて嬉しい。ずっと見ていたよ。君が一生懸命人助けをする姿も、花を変えてくれる姿も。君はいつも俺から目をそらしていたね」
「そんなつもりはなかったのに、そう見えいたんだね…でも、好きだったんだ。ずっとずっと攻め君が好きだったんだ」
「うん。俺もだよ。やっと言える。受け君、大好きだよ」
乾いた唇に、温かい唇がそっと重なった。
床頭台には新しい向日葵の花。生命力にあふれて、これからの僕の回復を示唆してくれている気がした。
僕は体に戻ろうとした。でもどうしてか自分の体なのに入れない。
どうしてだよ~!
「受け君…!」
僕が泣き出すと、彼も涙を流した。そして、僕の名を読んでくれた。
攻め君、僕の名前、知っていてくれたの?
「なあ、目を覚ましてくれよ。君が作った向日葵を、君から俺にくれよ」
え?どうしてそのことを?
「昨夜妹から聞いたよ。君が俺をずっと見ていてくれたって。妹とは親の離婚で別々に暮らして疎遠になっていたんだけど、同じ高校に来たのをきっかけに再会したんだ。でも、うまく接することができなくて」
攻め君はその日から毎日お見舞いに来てくれて、目覚めない僕に話しかけてくれた。
「そんなある日、よく人助けをしている君が妹と同じ園芸部だと知った」
え?僕が君の真似で人助けをしていたのも知っていたの?
「それがきっかけで、妹とも話せるようになって、君の素敵なところをたくさん聞いたよ。妹は君が好きだったようだけど、君の俺への気持ちに気付いていたんだ。でも人の思いを勝手には言わないやつだから、俺はずっと気付かないままで、この思いを閉じこめて卒業しようとしていた」
え?え?待って情報過多。
霊体だと頭が回りにくいんだ。わかりやすいように言ってよ。…と言ってももちろん届かない。
僕はここにいるのに、攻め君に声も視線も届かない。
「妹から君が事故に遭ったと聞いて、いても立ってもいられないよ。受け君。目覚めたら、君に言いたいことがある。だから早く目覚めてくれ」
攻め君、それって……。
その日から、僕は体に戻ろうと頑張った。でも何度やっても戻れない。
時はもう、七月になろうとしていた。
ある日、攻め君が向日葵を持ってやって来た。夏になったから本当の向日葵だ。
「受け君。目覚めてくれ。早く君の声が聞きたい。君と目を合わせたい。しっかりと、触れ合いたい……!」
攻め君、僕もだよ。君に僕の思いを届けたい、君を見つめたい。君に、触れたい!
「受けくん、好きだ」
攻めくん、好きだ!
声が重なった。攻め君が好きだと言ってくれた!
その瞬間。
「ん……」
嘘みたいに軽かった体が急に重苦しく痛くなる。ずいぶんガチガチになって指まで動かしにくい……え?
「え…?受け、君? …か、看護師さん!受けくんが!」
あ、れ? 僕、下から攻め君を見てる。これって、もしかして戻った…?
────5日後。僕はたどたどしいながらも言葉が話せるようになり、体を動かせるようになった。
「受け君、よかった。よかった!」
攻め君が男泣きに泣く。僕も涙がたくさん出て、看護師さんに心配されてしまう。
「たくさん泣いてしまった。でも、受け君に再会できて嬉しい。ずっと見ていたよ。君が一生懸命人助けをする姿も、花を変えてくれる姿も。君はいつも俺から目をそらしていたね」
「そんなつもりはなかったのに、そう見えいたんだね…でも、好きだったんだ。ずっとずっと攻め君が好きだったんだ」
「うん。俺もだよ。やっと言える。受け君、大好きだよ」
乾いた唇に、温かい唇がそっと重なった。
床頭台には新しい向日葵の花。生命力にあふれて、これからの僕の回復を示唆してくれている気がした。
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