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視線
視線に気づかない攻め×視線に気づいてもらえない受け②
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季節外れの向日葵は目を惹くだろうし、太陽のような彼のイメージにぴったりだ。それに、花言葉は「あなたを見つめています」だ。
どうか、僕の視線に気付いてほしい。
「あっ、おばあさんが危ない!」
学校へ行く道を進んでいると、おばあさんが横断歩道を渡りきれずに赤になりかけて立ち止まっている。
僕は人を助けるのは下手だけど、見過ごせない。必死でおばあさんを助けに向かった。
「ありがとう、ありがとう、ごめんなさいね。ありがとう」
よかった。助けられた。おばあさんは涙を流して手を合わせてまで感謝してくれる。ただ向日葵は駄目になってしまったので持っていけない。
けれど初めて人助けができたから告白は上手にできる気がする。
僕は卒業式に向かった。
そうしたらなんと!式は終わっているじゃないか。
救急車が来るのを待っておばあさんを見送ったりしてたからだ…。
僕は自分の卒業証書もさておき、急いで彼を探した。
「いた!…攻め君!」
でも攻め君はたくさんの人に囲まれ、幾人もの人から告白を受けて、僕の声には最後まで気が付いてくれなかった。
ああ、やっぱり僕って、攻め君の視界には入らないんだと思い知らされる。
攻め君はクラスの人と打ち上げに移動した。
僕はせめて最後に姿だけでも焼き付けたくて、後を付いて行った。まるでストーカーみたいだけど、僕はストーカーも得意だったみたいだ。存在が地味過ぎて、攻め君どころか攻め君の友人にも見ていることに気付かれない始末だ。
だからしばらく彼の姿を追うことにした。いつかは気付いてもらえるかもしれいないという期待もあった。
でも、彼はやっぱり気付いてくれない。打ち上げが終わった彼をもう一度呼び止めたけれど、声は届かなかった。
こんな惨めなことってあるだろうか。
そしてさらに見てしまった。おそらく家路に向かっているだろう彼を途中で呼び止めた子がいた。
あれはなんと園芸部の後輩ちゃんだ!
彼女は攻め君に抱きつき、攻め君に頬を包まれていた。それから門が閉まる直前の夕方の学校へ行って、温室に入る。
僕はふたりに気づかれないよう後をつけ、温室にも入った。立派なストーカーだって言われてもいい。気になるんだ。
少し離れて隠れたからふたりの声はところどころ聞こえない。
でも後輩ちゃんは僕が育てた向日葵をハサミで切ってまとめると、攻め君に渡したんだ。
「好きだったの! ずっと好きだったの! どうして気付いてくれなかったの!」
…えっ! さっき道での様子でも思ったけれど、そういうことなのか。実はふたりは顔見知りで、彼女も密かに攻め君を想っていたのか。
……後輩ちゃん。僕を応援すると言ってくれたのは、嘘だったんだね。
攻め君はどう答えるのだろう。
「俺だって、ずっと好きだった。でも俺が見つめようとすると、決まって目をそらして逃げるように行ってしまっていたから!」
…ああ、そうだった。
彼女は「先輩は見てていいですよ」とか言いながら、攻め君のクラスでは早々に教室を出たがっていた。攻め君を意識しすぎていたんだね。
そして攻め君は彼女の視線には気付いていたんだ。だから僕のことなんて視界に入らないはずで…。
「うう…」
裏切られた気持ちで涙が溢れる。僕は園芸部用品の影にうずくまって待って泣き、疲れてそのまま温室で一夜を過ごしてしまった。
どうか、僕の視線に気付いてほしい。
「あっ、おばあさんが危ない!」
学校へ行く道を進んでいると、おばあさんが横断歩道を渡りきれずに赤になりかけて立ち止まっている。
僕は人を助けるのは下手だけど、見過ごせない。必死でおばあさんを助けに向かった。
「ありがとう、ありがとう、ごめんなさいね。ありがとう」
よかった。助けられた。おばあさんは涙を流して手を合わせてまで感謝してくれる。ただ向日葵は駄目になってしまったので持っていけない。
けれど初めて人助けができたから告白は上手にできる気がする。
僕は卒業式に向かった。
そうしたらなんと!式は終わっているじゃないか。
救急車が来るのを待っておばあさんを見送ったりしてたからだ…。
僕は自分の卒業証書もさておき、急いで彼を探した。
「いた!…攻め君!」
でも攻め君はたくさんの人に囲まれ、幾人もの人から告白を受けて、僕の声には最後まで気が付いてくれなかった。
ああ、やっぱり僕って、攻め君の視界には入らないんだと思い知らされる。
攻め君はクラスの人と打ち上げに移動した。
僕はせめて最後に姿だけでも焼き付けたくて、後を付いて行った。まるでストーカーみたいだけど、僕はストーカーも得意だったみたいだ。存在が地味過ぎて、攻め君どころか攻め君の友人にも見ていることに気付かれない始末だ。
だからしばらく彼の姿を追うことにした。いつかは気付いてもらえるかもしれいないという期待もあった。
でも、彼はやっぱり気付いてくれない。打ち上げが終わった彼をもう一度呼び止めたけれど、声は届かなかった。
こんな惨めなことってあるだろうか。
そしてさらに見てしまった。おそらく家路に向かっているだろう彼を途中で呼び止めた子がいた。
あれはなんと園芸部の後輩ちゃんだ!
彼女は攻め君に抱きつき、攻め君に頬を包まれていた。それから門が閉まる直前の夕方の学校へ行って、温室に入る。
僕はふたりに気づかれないよう後をつけ、温室にも入った。立派なストーカーだって言われてもいい。気になるんだ。
少し離れて隠れたからふたりの声はところどころ聞こえない。
でも後輩ちゃんは僕が育てた向日葵をハサミで切ってまとめると、攻め君に渡したんだ。
「好きだったの! ずっと好きだったの! どうして気付いてくれなかったの!」
…えっ! さっき道での様子でも思ったけれど、そういうことなのか。実はふたりは顔見知りで、彼女も密かに攻め君を想っていたのか。
……後輩ちゃん。僕を応援すると言ってくれたのは、嘘だったんだね。
攻め君はどう答えるのだろう。
「俺だって、ずっと好きだった。でも俺が見つめようとすると、決まって目をそらして逃げるように行ってしまっていたから!」
…ああ、そうだった。
彼女は「先輩は見てていいですよ」とか言いながら、攻め君のクラスでは早々に教室を出たがっていた。攻め君を意識しすぎていたんだね。
そして攻め君は彼女の視線には気付いていたんだ。だから僕のことなんて視界に入らないはずで…。
「うう…」
裏切られた気持ちで涙が溢れる。僕は園芸部用品の影にうずくまって待って泣き、疲れてそのまま温室で一夜を過ごしてしまった。
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