上 下
21 / 53
惚れ薬

惚れ薬

しおりを挟む
寮生活をしている受け。部屋に戻ると、同室の片思いの先輩がいた。

先輩は部活が忙しいし友人も多くいるのでほとんど部屋にいないのに珍しい。

「お疲れです…」

心の中では
「今日もイケメン!かっこいい!いい匂い!」
とドキドキなのに、悟られては駄目だと顔を逸らしてしまう。

「あのさ」
「は、はい!」

突然声をかけられた。
ニヤけそうになり可愛い系の顔をしかめる。

「お前って俺のこと嫌いだよな」
「えっ?」

違います。めちゃめちゃ好きなんです。しかも恋愛の意味で! 
なんて、言えるわけもなく。

「それで…お前と話したくて…まあ座るか」

促されて先輩のベッドに並んで座った。

うわ、ドキドキする。

「これ、飲みながら話そう」

先輩はお茶のペットボトルをくれた。キャップも開けてくれる。

優しい~。

緊張で喉が張り付いていたし、先輩がお茶をくれたのが嬉しくてゴクゴク飲んだ。

「…どうだ」
「どう?」
「俺の事、好きか?」
「へっ、なんでそれを!」
「え、本当に?」

何が本当なんだろう。しかしこれはチャンスだ。話がしたいと言ってくれたし、受けの事を嫌いなわけじゃなさそうだ。

「俺、先輩の事が好きです」
「すごい即効性だ…」
「即効性?」
「い、いや。その…俺も初めて会った時からお前が好きなんだ」
「うそ! 先輩がっ?……あっ…!?」

急に心臓が跳ね、体が熱くなった。目もジンジンする。

「先輩、熱い……」

手に持っていたボトルが落ちて、服を濡らした。目には涙が浮かぶ。

「っつ……」

先輩は受けの濡れた上半身を見て息を詰めた。胸が透けている。

「き、着替えを出す」

そう言って自分の服を出して着替えを手伝ってくれるが、大きな手が肌に触れ、受けはびくっと体を揺らした。

「先輩、なんか体が変ですぅ」

すごく敏感になっている。手が触れるたびに体がぞわぞわしてくる。

「先輩、好きぃ…抱きしめてぇ」

先輩も好きだと言ってくれた。臆することはもう無い。

もっと触れてほしくて体を寄せると、先輩はこらえきれずと言ったように抱きしめてくれた。

頬がこすれ、唇が当たる。

キスしてもらえる...! 
期待に胸を高鳴らせ、涙を一粒流して瞼を閉じた。

だが…。

「駄目だ! 惚れ薬で無理やり好きにならせるなんてやっぱり駄目だ」

べりっと体を引き剝がされる。

「え? 惚れ薬?」
「すまん、科学部のやつに貰ったから試してみようと。まさか効くと思わなくて」
「え、いえ、薬は効いてない…いや、効いているのかな??」

心だけじゃなく体も先輩を欲しているから、元々の好きが2倍になっているような気がする。

「そう、薬のせいだ。お前が俺を好きなんてあるわけない、俺達は男同士だし」
「それは違います! 俺は先輩を好きなんですってば!」
「薬の作用でそう思うだけだ。こんなの虚しいだけなのに、俺は情けない男だな。悪かった。俺と同室を嫌がってる様だったから、薬が切れたら余計気持ち悪いだろう。いつか襲ってしまうかもとなるべく部屋に戻らないようにしていたが、これで踏ん切りがついた。部屋を変えるよう寮長に言う」

切な気に言う先輩はやっぱりイケメンだが、そうやって一人で話をまとめてしまうなんてずるい。逃がさないから!

「だから、俺の話を聞いてくださいってば!俺は薬なんかなくても先輩が好きなんです!入寮した時からです。俺も一目惚れです!」

熱っぽくてふうふう言いながら先輩を押し倒した。どうにでもなれ!と唇を奪う。

「ん、んんっ」

初めてだけど想像だけは何度もしてきた。唇を挟んで、何度もちゅるちゅる吸って舌も動かした。先輩も夢中で応えてくれる。

「…まさか…本当に?」

顔が離れてから、しっとりと濡れた唇で先輩が言う。
頷く受け。

そうすると今度は先輩からキスしてきて、反対に押し倒される。

「んっ、先輩、好きっ」
「俺も好きだ、ん、んんっ」

先輩の手が、せっかく着替えた服を脱がそうとする。

ああ、今日両想いになって、今日結ばれるんだ…幸せ…。

「はーい!そこまで!」
「へっ!?」

バタンとドアが開いて、白衣を着た科学部の二人が入ってきた。
ちなみに一人は風紀委員長も兼ねている。

「うーん、ただの体力増強剤が精力増強にも効くとはな」
「うむ。新しく効用を足しておこう」

二人は甘い雰囲気をぶち壊してあーだこーだ言っている。

「は…?体力、増強剤?」

先輩が聞くと

「お前がうじうじしてるから後押ししてやったんだよ。こいつがお前を好きなことは見え見えだったから、きっかけさえあれば上手く行くだろうと嘘ついた。感謝しろ」
「そうだぞ。でも不純交遊は寮では禁止だ。卒業まで我慢しろ。じゃあな」
と言って出て行く二人。

残された受けと先輩はポカンとしていたが顔を見合わせ、改めて告白し合う。

「先輩きっかけを作ってくれてありがとうございます」
「お前が勇気を出してくれたからだ。ありがとう。好きだ…」
「大好きです。先輩…」

自然と唇が重なる。

その後禁止事項を守れるはずもなく、鍵をしっかりと締めて濃厚な時間を過ごす受けと先輩なのである。

*その頃、科学部の風紀委員じゃない方はほくそ笑んでいた。
「あいつら、今頃サルだろうな。実は本当に精力増強剤だったんだよなぁ…俺も相棒に試してみよ。風紀委員長が風紀を乱すところ、最高だろうなぁ」

おしまい

しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

【完結】王弟殿下の欲しいもの

325号室の住人
BL
王弟殿下には、欲しいものがある。 それは…… ☆全3話 完結しました

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

帰宅

papiko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

泡沫でも

カミヤルイ
BL
BL小説サイト「BLove」さんのYouTube公式サイト「BLoveチャンネル」にて朗読動画配信中。

処理中です...