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平凡なβの俺が幼馴染のαに恋をしている話

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「えっ!? 樹、何して……」
「!」

 佑都の驚いた顔を見て、途端に我にかえる。
 お、俺、ここで何てことを……。

「まさか樹、オメガだったのか?」
「なわけないだろ! 佑都だってさっき帰り道で言ったじゃないか。俺はベータだってわかってるって」

 あの時、事実なのにちょっと傷ついている俺がいた。俺はどうしたって佑都と番えないベータなんだって思うと切なくて。
 今も言いながら唇が震えている。

「でもこれ、まるでオメガの巣作り……それに、今、俺のことが好きだって聞こえたけど、まさかお前」
 佑都の顔が強張る。
「そうだよ! 知らなかっただろ。俺はずっと佑都をそういう目で見てた! 好きなんだよ。佑都が好きなんだ!」

 もう隠していられなくて、佑都の言葉をさえぎり、両腕にすがりついてカミングアウトをする。
 ジーンズのファスナーの下が張りつめているけど、見られたっていい。どうせもう、嫌われて終わりだ。

「お前、勃って……!」
 祐都が俺を振り払う。肩をいからせてふぅふぅと荒い息を吐き、目を血走らせて、まるで獣のようだ。
 そうだよな。気持ち悪いよな。幼馴染の服にうもれて、欲情してる俺なんか。

 絶望感に襲われて立ち上がる。
 すると。

「ふざけてんじゃ、ないよな?」
 祐都に腕を掴まれ、ベッドに背中を押し付けられた。
「は? こんなこと、ふざけてやるかよ。て、いうか。祐都……?」

 俺の脚を割って下半身を重ねている祐都のそこも、俺と同じに……いや、俺以上の質量と硬さを持って、俺のものに当たっている。

「え? これ、え……?」
 今まで以上にうるさくなる鼓動を感じながら見上げると、舌なめずりをする祐都の顔。

「……樹はオメガばかり見てるから、オメガが好きなんだとばかり思ってたよ」
 長い指が俺の頬に触れ、首筋を伝う。
 腰をゆる、と動かして、互いのものが擦り合うようにされた。

「んっ……ゆう、と。違う……俺は、お前が好きだから、お前と番えるオメガが羨ましくて……ぁ、んっ」

 唇が耳たぶに触れる。ぞくぞくとしたものが背中を駆け上がった。

「それ、ほんと?」
「ほんとだよ。でもお前は? お前こそオメガが好きなんじゃないのか?」

 耳の中に直接声を入れられて、熱くなった体をよじれるけれど、佑都がこんなことをする意図がわからなくて、聞く。
 からかっているだけならやめてくれよ。俺の心も体ももう限界だ。

「ばーぁか。樹がいっつもオメガを見てるから、俺こそオメガならお前に好きになってもらえたのにな、ってオメガを憎らしく見てたんだよ」
「まじかよ……」
「まじだよ」

 獲物を捕らえた獣のようだった祐都の目が、優しく光る。
 ちょっと泣いてるみたいにも見えた。
 でも俺も同じで。
 知らないうちに目を潤ませていたみたいで、祐都が目の端を拭ってくれた。
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