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本編
真実の、さらに真実④
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「エルフィー、駄目だよ。君と番にならないと、つがい解消薬の協賛権利をもらえないんだ」
「フェリックス……」
「睨まないでよ。可愛い顔が台無しだよ? まあ、僕の好みではないけどね」
ぐい、と顎を掴まれ、鼻で笑われる。俺が今まで見てきた麗しい顔じゃなかった。
狡猾で、他人を馬鹿にした嫌味な笑顔。
これが、フェリックスの本性!?
「君は……あっ!」
腕で顎を払われ、ひっくり返った俺は、床に背を打ち付ける。その上にフェリックスがまたがってきた。
「やめ……やめて……!」
抵抗するけど、手も足もまるで力が入らない。フェリックスは俺のブラウスの襟元を握り、左右に引っ張って釦を引きちぎろうとした。
「あー。そうだ、君には優しくしないとニコラがうるさいんだった。ニコラの方が酷いことしてるのにね? ま、いいや、優しく一枚ずつ脱がしてあげる」
「やめろ……! やめろ……!」
「はい、ベスト終わり。次はリボンをほどいて……ん? これ、あのときの笛か」
ブラウスの下に大事につけていたヒバリの笛に気づかれ、ぐい、と引っ張られる。いまだ痛むうなじに、革紐が食い込んだ。
「ふん。これ、変な音だったな。あの日、誰が鳴らしてるんだと思わず振り返って見ちゃたよ。エルフィー、君は童顔だけど、中身も子どもっぽいね。確かに素材は高価そうだけど、こんなのをピロロと鳴らして喜ぶんだから。あ……もしかしてクラウスからのプレゼント? あいつ、センス悪いね」
ふふふ、と笑って興味なさそうにペンダントを離す。俺は力のない手で、落ちてきたヒバリを握りしめた。
「どうして、どうして君はクラウスをそんなふうに言うんだ。どうしてクラウスを陥れようとするんだ。親友じゃないか……」
「親友だよぉ? クラウスは俺の価値を高めてくれる大事な人間だ。そこにいるだけで圧倒的な信頼感を与えるリュミエール国の若き黒豹。将来の国防長官。俺の親友としてこれ以上ない肩書でしょ?」
「な……」
「でもさ、あいつは俺を親友だと思ってないんだよね。真面目な男だから礼節を払った付き合いはするけど、腹は割らなかった……」
言い終わりに、フェリックスは口角の片側をひくつかせた。
「俺が、ベータしかいない商業流通科だから馬鹿にしていたんだ」
「そんなわけない! クラウスはそんな奴じゃない! クラウスこそ感じていたはずだ。君が腹の内を隠してるって! でもそれでも、君の善性を疑わなかったはずだ!」
だってクラウスは俺に言ったんだ。フェリックスも俺から真剣に告白されたら応じると思ったと。俺がフェリックスと結ばれても、俺が幸せならそれでいいかと自分を納得させたと。
それはフェリックスを友人だと思っていたからだ。
「フェリックスがこんな酷いことができる人間だなんてクラウスも誰も思っていなかったはずだ。君はアカデミーでとても立派だった。役員代表として皆から尊敬され、憧れを一身に浴びていたじゃないか!」
ニコラは俺を馬鹿だと、鈍いと言うけど、フェリックスは間違いなくアカデミーを盛り立てた功労者だ。
俺が五年間憧れた人……!
「ハッ! それなのに君は俺をコケにしたじゃないか。アーシェット公爵家の俺が……才色を兼ね備えたこの俺が目をかけ、愛人にしてやろうと思ったのに、君はやっぱり卑しいオメガだ。アルファに股を広げる淫乱オメガ!」
「ぅあっ!」
ダン! と肩を床に押し付けられ、膝の上に乗られて、結局服を破られる。濡れたブリーチズもずらされ、俺の肌が露呈した。
「ふん、真っ平らだね」
フェリックスの人差し指が、鎖骨の中心から胸の真ん中をつつっと辿る。
「いやっ……!」
もう駄目だ。ただでさえ体格差があるのに、ヒートを起こした状態でアルファに押さえつけられたら、ひとたまりもない。
このまま番にされてしまうのか……!
……いや、おかしい。ヒートが確かに来ていて、身体は性の快楽を求めて疼いているのに、目の前のアルファを求めてはいない。フェリックスのような優秀なアルファを前にして、理性をなくしていない。
フェリックスもまた、部屋に充満した俺のフェロモンを吸っているはずなのに、少しも当てられている様子がない。
つがいが解消された直後だから? フェリックスもラット化抑制剤を飲んでいた? いや、そんなはずない。なら、どうして? どうして?
「なに? その顔。この身体も。いくらオメガの肌が綺麗だからって、こんなおうとつのない身体じゃその気になれないよ。仕方ないなぁ……」
フェリックスは俺の胸の上に座り直し、トラウザーズの釦を開けた。
「咥えなよ」
目の前に萎えたペニスを突き付けられる。空気に触れたせいか、少しだけ膨張を見せた。そして、気づく。
「……! 亀頭球が、ない……!?」
「あ? ……そうか、オメガにしかわかんないもんね。オメガの前でしかアルファの亀頭球は出ないから」
亀頭球は、アルファがオメガと性交をするときにだけペニスの付け根に現れる、瘤のような生殖器官だ。挿入後、瘤で後孔に蓋をし、途中で抜けないように固定する。オメガを自分の獲物として捕らえ、子種を一滴も溢すことなく注ごうとする、アルファの本能の表れだ。
それが、ない。ラット化していなくても、フェロモンを吸った時点で勃起するはずだし、亀頭球が出てくるはずなのに!
「はぁ……仕方ないね。誰にも言わせないよ? 俺がベータだってことは」
「……!」
「フェリックス……」
「睨まないでよ。可愛い顔が台無しだよ? まあ、僕の好みではないけどね」
ぐい、と顎を掴まれ、鼻で笑われる。俺が今まで見てきた麗しい顔じゃなかった。
狡猾で、他人を馬鹿にした嫌味な笑顔。
これが、フェリックスの本性!?
「君は……あっ!」
腕で顎を払われ、ひっくり返った俺は、床に背を打ち付ける。その上にフェリックスがまたがってきた。
「やめ……やめて……!」
抵抗するけど、手も足もまるで力が入らない。フェリックスは俺のブラウスの襟元を握り、左右に引っ張って釦を引きちぎろうとした。
「あー。そうだ、君には優しくしないとニコラがうるさいんだった。ニコラの方が酷いことしてるのにね? ま、いいや、優しく一枚ずつ脱がしてあげる」
「やめろ……! やめろ……!」
「はい、ベスト終わり。次はリボンをほどいて……ん? これ、あのときの笛か」
ブラウスの下に大事につけていたヒバリの笛に気づかれ、ぐい、と引っ張られる。いまだ痛むうなじに、革紐が食い込んだ。
「ふん。これ、変な音だったな。あの日、誰が鳴らしてるんだと思わず振り返って見ちゃたよ。エルフィー、君は童顔だけど、中身も子どもっぽいね。確かに素材は高価そうだけど、こんなのをピロロと鳴らして喜ぶんだから。あ……もしかしてクラウスからのプレゼント? あいつ、センス悪いね」
ふふふ、と笑って興味なさそうにペンダントを離す。俺は力のない手で、落ちてきたヒバリを握りしめた。
「どうして、どうして君はクラウスをそんなふうに言うんだ。どうしてクラウスを陥れようとするんだ。親友じゃないか……」
「親友だよぉ? クラウスは俺の価値を高めてくれる大事な人間だ。そこにいるだけで圧倒的な信頼感を与えるリュミエール国の若き黒豹。将来の国防長官。俺の親友としてこれ以上ない肩書でしょ?」
「な……」
「でもさ、あいつは俺を親友だと思ってないんだよね。真面目な男だから礼節を払った付き合いはするけど、腹は割らなかった……」
言い終わりに、フェリックスは口角の片側をひくつかせた。
「俺が、ベータしかいない商業流通科だから馬鹿にしていたんだ」
「そんなわけない! クラウスはそんな奴じゃない! クラウスこそ感じていたはずだ。君が腹の内を隠してるって! でもそれでも、君の善性を疑わなかったはずだ!」
だってクラウスは俺に言ったんだ。フェリックスも俺から真剣に告白されたら応じると思ったと。俺がフェリックスと結ばれても、俺が幸せならそれでいいかと自分を納得させたと。
それはフェリックスを友人だと思っていたからだ。
「フェリックスがこんな酷いことができる人間だなんてクラウスも誰も思っていなかったはずだ。君はアカデミーでとても立派だった。役員代表として皆から尊敬され、憧れを一身に浴びていたじゃないか!」
ニコラは俺を馬鹿だと、鈍いと言うけど、フェリックスは間違いなくアカデミーを盛り立てた功労者だ。
俺が五年間憧れた人……!
「ハッ! それなのに君は俺をコケにしたじゃないか。アーシェット公爵家の俺が……才色を兼ね備えたこの俺が目をかけ、愛人にしてやろうと思ったのに、君はやっぱり卑しいオメガだ。アルファに股を広げる淫乱オメガ!」
「ぅあっ!」
ダン! と肩を床に押し付けられ、膝の上に乗られて、結局服を破られる。濡れたブリーチズもずらされ、俺の肌が露呈した。
「ふん、真っ平らだね」
フェリックスの人差し指が、鎖骨の中心から胸の真ん中をつつっと辿る。
「いやっ……!」
もう駄目だ。ただでさえ体格差があるのに、ヒートを起こした状態でアルファに押さえつけられたら、ひとたまりもない。
このまま番にされてしまうのか……!
……いや、おかしい。ヒートが確かに来ていて、身体は性の快楽を求めて疼いているのに、目の前のアルファを求めてはいない。フェリックスのような優秀なアルファを前にして、理性をなくしていない。
フェリックスもまた、部屋に充満した俺のフェロモンを吸っているはずなのに、少しも当てられている様子がない。
つがいが解消された直後だから? フェリックスもラット化抑制剤を飲んでいた? いや、そんなはずない。なら、どうして? どうして?
「なに? その顔。この身体も。いくらオメガの肌が綺麗だからって、こんなおうとつのない身体じゃその気になれないよ。仕方ないなぁ……」
フェリックスは俺の胸の上に座り直し、トラウザーズの釦を開けた。
「咥えなよ」
目の前に萎えたペニスを突き付けられる。空気に触れたせいか、少しだけ膨張を見せた。そして、気づく。
「……! 亀頭球が、ない……!?」
「あ? ……そうか、オメガにしかわかんないもんね。オメガの前でしかアルファの亀頭球は出ないから」
亀頭球は、アルファがオメガと性交をするときにだけペニスの付け根に現れる、瘤のような生殖器官だ。挿入後、瘤で後孔に蓋をし、途中で抜けないように固定する。オメガを自分の獲物として捕らえ、子種を一滴も溢すことなく注ごうとする、アルファの本能の表れだ。
それが、ない。ラット化していなくても、フェロモンを吸った時点で勃起するはずだし、亀頭球が出てくるはずなのに!
「はぁ……仕方ないね。誰にも言わせないよ? 俺がベータだってことは」
「……!」
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