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出逢いと因果
蕩ける夜 ❁✿✾ ✾✿❁︎
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既に一糸纏わぬ姿になっていた俺に保科様の重みがかかる。
指を絡ませて手を握ってくれるのが嬉しくて、きゅっ、と握り返した。
首筋や顎にかかる保科様の吐息が熱い。こんなの、保科様も心から俺を求めてくれているんじゃないかと勘違いしそうになる。
「ほしなさま……ぁンッ……」
唇が俺の胸に到着して、肌とは色が違う部分に舌を当てられると、意図せず高い声が漏れた。でも、恥ずかしいと思う余裕もなく、何度も舌が滑るたび、感じるままに声を発する。
「あ、ンンッ、や、アァンッ……」
以前にセントラルプロの一室で権藤さんに触られた時とは全然違う。相手が好きな人ってだけで、こんなにも感じ方が違うなんて。そして、こんなに嬉しいものだなんて。
気持ち良さと嬉しさで胸がいっぱいになる。満ち足りる、ってこんな時に使うんだろうか。
「保科様、保科様……」
愛しい名前を呼び続けながら、背を震わせるほどの快感に身を委ねた。
「百合、気持ち悪くはないか?」
保科様の舌が胸の先から離れ、胸骨から鎖骨、さらには顎から頬へと移る。どこを舐められたって気持ちいいに決まってる。だから 「気持ちいいか?」と聞いて欲しい。そうしたらすぐに頷くのに。
「ッ……保科様の意地悪……わかって言ってるでしょ」
「なにを? 聞かねばわからないよ」
悪戯する子供みたいな目。
ああ、もう。視線が合うと切なくて、苦しくて、胸ン中、掻きむしりたくなる。
「気持ちいい。触られてるところ、全部気持ちいっ……ンぁっ、やっ」
答えている途中なのに、保科様の右の指は俺の背中を滑り降り、尾てい骨まで一気に駆け抜ける。背筋にゾクゾクゾクッと電気が走り、体が勝手にくねった。
長く続く、手と唇の愛撫。いつの間にか保科様の手が俺の膝裏を押し上げていて、下半身があらわになっている。
けれど、これだけの快感を得てもそこはまだ硬くなりきらずに柔らかさを残していた。
────いつもこうだ。
俺だってなんの興味も持たずに生きてきたわけじゃない。学校に通っている時にはクラスメートと卑猥な会話になったり、いやらしい雑誌や映像を見て気持ちが昂ぶったこともある。
でも駄目なんだ。行為に及ぶシーンになると、途端に思考が閉ざされて、反応しかけた体が冷えていく。
結果、経験するのも怖いままで、今も童貞のまま。ほんと言うと、自分でだって、たまにしか出せない。
なぜって、欲情した自分を気持ち悪いと思うからだ。十三歳のあの日、俺に触れながら荒い息を吐いて、硬いものを背に当ててきたあの義父と同じ汚いものになりたくない。
「保科様。俺きっと、体がおかしいんです。今、すごく気持ちいいし、ちっとも怖くないのに駄目なんだもん。だから気にせず、もう後ろを慣らして下さい。勃たなくったって、後ろさえ使えれば陰間になれるんでしょ? ほら、後ろは意外といけちゃうかもだし」
やだな。情けないのと恥ずかしいのとでへらへらしちゃう。
「百合、そんなふうに笑うんじゃないよ。大丈夫。時間はたくさんあるんだ。ゆっくりゆっくり感じれば良いのだ」
保科様の綺麗な手が俺のかたちを確かめた。指だけでゆっくりと撫でることを繰り返し、一度離れ、次はしっかりと手の中に収まる。
「あったかい……」
俺が息をこぼすと、壊れ物を扱うように柔く力を込め、時間をかけて、俺の呼吸に合わせて上下する保科様の暖かい手。
「……ぁ……気持ち、いぃ……あんんっ」
保科様の体温が、握られた所からお腹まで波及して、下腹がきゅ、と攣縮した。凄く変な感覚なのに、もっと欲しくて、俺は自ら腰を揺らす。
「あっ、あっ、凄い気持ちいい。どうしよう、保科様、俺、変になる……っ」
「いいんだよ。おかしくない。百合、見てごらん。きちんと感じているから」
「あ……」
俺の……保科様の手の中で熱を持って、身を硬くしている。
先っぽからは透明の液がしたたって、保科様の指を濡らし、動きに連動してくちゅりと音まで立てて。
「や……あ……ごめんなさい。保科様の手が汚れちゃう」
「いいんだよ。私でこうなってくれて嬉しいんだ。このままじゃ辛いだろう? 一度放っておこう」
言うなり上下の律動が速さを増す。
こすれる音が大きくなれば、保科様の体が再び俺に被さり、舌が耳を這う。
脳内に直接ぴちゃぴちゃと響く保科様の舌の音は、体を余計に熱くした。
もう、どこもかしこも蕩けてしまいそう……!
「保科様、キス、キスしたい」
俺は必死で保科様にしがみついて懇願する。
「キス?」
「口を合わせたい。早く欲し……ん、ンンっ……」
気持ち良くて意識が飛んじゃう前に、保科様をもっと強く感じたい……!
「百合、可愛い百合」
保科様が名を呼んでくれる。
でも違うんだ。そうじゃない。
「悠理、だよ」
「うん?」
ちゅ、くちゅ、と音を立てて、一通り俺の口の中を撫でてから、ほんの少し、唇に休憩をくれた。
「俺のほんとの名前。悠理って言うんです」
「……ゆうり」
「そうです。嬉しい。保科様、だいすき。もっと呼んで? ……っ、アッ、もう、俺……ふぅ、ん……ンアッ……」
「ゆうり、ゆうり……」
二人の声が重なる。
俺は再び力を込めて保科様の体にすがりついた。
指を絡ませて手を握ってくれるのが嬉しくて、きゅっ、と握り返した。
首筋や顎にかかる保科様の吐息が熱い。こんなの、保科様も心から俺を求めてくれているんじゃないかと勘違いしそうになる。
「ほしなさま……ぁンッ……」
唇が俺の胸に到着して、肌とは色が違う部分に舌を当てられると、意図せず高い声が漏れた。でも、恥ずかしいと思う余裕もなく、何度も舌が滑るたび、感じるままに声を発する。
「あ、ンンッ、や、アァンッ……」
以前にセントラルプロの一室で権藤さんに触られた時とは全然違う。相手が好きな人ってだけで、こんなにも感じ方が違うなんて。そして、こんなに嬉しいものだなんて。
気持ち良さと嬉しさで胸がいっぱいになる。満ち足りる、ってこんな時に使うんだろうか。
「保科様、保科様……」
愛しい名前を呼び続けながら、背を震わせるほどの快感に身を委ねた。
「百合、気持ち悪くはないか?」
保科様の舌が胸の先から離れ、胸骨から鎖骨、さらには顎から頬へと移る。どこを舐められたって気持ちいいに決まってる。だから 「気持ちいいか?」と聞いて欲しい。そうしたらすぐに頷くのに。
「ッ……保科様の意地悪……わかって言ってるでしょ」
「なにを? 聞かねばわからないよ」
悪戯する子供みたいな目。
ああ、もう。視線が合うと切なくて、苦しくて、胸ン中、掻きむしりたくなる。
「気持ちいい。触られてるところ、全部気持ちいっ……ンぁっ、やっ」
答えている途中なのに、保科様の右の指は俺の背中を滑り降り、尾てい骨まで一気に駆け抜ける。背筋にゾクゾクゾクッと電気が走り、体が勝手にくねった。
長く続く、手と唇の愛撫。いつの間にか保科様の手が俺の膝裏を押し上げていて、下半身があらわになっている。
けれど、これだけの快感を得てもそこはまだ硬くなりきらずに柔らかさを残していた。
────いつもこうだ。
俺だってなんの興味も持たずに生きてきたわけじゃない。学校に通っている時にはクラスメートと卑猥な会話になったり、いやらしい雑誌や映像を見て気持ちが昂ぶったこともある。
でも駄目なんだ。行為に及ぶシーンになると、途端に思考が閉ざされて、反応しかけた体が冷えていく。
結果、経験するのも怖いままで、今も童貞のまま。ほんと言うと、自分でだって、たまにしか出せない。
なぜって、欲情した自分を気持ち悪いと思うからだ。十三歳のあの日、俺に触れながら荒い息を吐いて、硬いものを背に当ててきたあの義父と同じ汚いものになりたくない。
「保科様。俺きっと、体がおかしいんです。今、すごく気持ちいいし、ちっとも怖くないのに駄目なんだもん。だから気にせず、もう後ろを慣らして下さい。勃たなくったって、後ろさえ使えれば陰間になれるんでしょ? ほら、後ろは意外といけちゃうかもだし」
やだな。情けないのと恥ずかしいのとでへらへらしちゃう。
「百合、そんなふうに笑うんじゃないよ。大丈夫。時間はたくさんあるんだ。ゆっくりゆっくり感じれば良いのだ」
保科様の綺麗な手が俺のかたちを確かめた。指だけでゆっくりと撫でることを繰り返し、一度離れ、次はしっかりと手の中に収まる。
「あったかい……」
俺が息をこぼすと、壊れ物を扱うように柔く力を込め、時間をかけて、俺の呼吸に合わせて上下する保科様の暖かい手。
「……ぁ……気持ち、いぃ……あんんっ」
保科様の体温が、握られた所からお腹まで波及して、下腹がきゅ、と攣縮した。凄く変な感覚なのに、もっと欲しくて、俺は自ら腰を揺らす。
「あっ、あっ、凄い気持ちいい。どうしよう、保科様、俺、変になる……っ」
「いいんだよ。おかしくない。百合、見てごらん。きちんと感じているから」
「あ……」
俺の……保科様の手の中で熱を持って、身を硬くしている。
先っぽからは透明の液がしたたって、保科様の指を濡らし、動きに連動してくちゅりと音まで立てて。
「や……あ……ごめんなさい。保科様の手が汚れちゃう」
「いいんだよ。私でこうなってくれて嬉しいんだ。このままじゃ辛いだろう? 一度放っておこう」
言うなり上下の律動が速さを増す。
こすれる音が大きくなれば、保科様の体が再び俺に被さり、舌が耳を這う。
脳内に直接ぴちゃぴちゃと響く保科様の舌の音は、体を余計に熱くした。
もう、どこもかしこも蕩けてしまいそう……!
「保科様、キス、キスしたい」
俺は必死で保科様にしがみついて懇願する。
「キス?」
「口を合わせたい。早く欲し……ん、ンンっ……」
気持ち良くて意識が飛んじゃう前に、保科様をもっと強く感じたい……!
「百合、可愛い百合」
保科様が名を呼んでくれる。
でも違うんだ。そうじゃない。
「悠理、だよ」
「うん?」
ちゅ、くちゅ、と音を立てて、一通り俺の口の中を撫でてから、ほんの少し、唇に休憩をくれた。
「俺のほんとの名前。悠理って言うんです」
「……ゆうり」
「そうです。嬉しい。保科様、だいすき。もっと呼んで? ……っ、アッ、もう、俺……ふぅ、ん……ンアッ……」
「ゆうり、ゆうり……」
二人の声が重なる。
俺は再び力を込めて保科様の体にすがりついた。
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