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XLVIII 飼いならされた猫-I

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「ッあ、……ん、」

 診療所の二階。快楽に慣れた自身の嬌声が、彼の部屋に響く。
 此処へ来て、今日で約半月が経とうとしていた。当初彼とは、身体を重ねるのは月に一度だけと約束を取り付けていた。しかし実際は、ほぼ毎日。彼と同じタイミングでベッドに入る日は、必ずと言って良い程身体を重ねる様になっていた。
 此処に来た当初は、お互いの性器を指や舌で刺激し果てるだけの行為であった。しかし私がその行為に慣れ始めた頃合い、お互いの性器を触れ合わせる迄に発展した。そして半月が経過した今、触れ合わせるだけでは物足りず、性器の挿入――つまりはセックスをする様になった。

 処女喪失の痛みは計り知れないと、本で読んだ事がある。しかし、実際私が初めて彼を受け入れた時、痛みは殆ど感じなかった。更には、女性は体内で快楽を得る事は難しいと言われているのにも関わらず、思わず嬌声を上げてしまう程の快楽を得た。それは、彼が医者であり知識があった故のものなのか。それとも女性経験が無いという話が嘘で、豊富な経験が齎したものなのか。

「あぁ……だめ、待って」

 蜜壺の奥を貫く様な力強い律動を、彼の肩を強く押して制す。
 
「もう果てそうですか? 今日は随分と早いですね」

「先生も、今日は余裕無さそうだね。激しくしすぎなんじゃない?」

「人間なんですから、その時によって気分も変わるでしょう。今日は、貴女を徹底的に虐めたい気分なんです」

「なにそれ、卑劣――」

 自身の言葉が最後まで紡がれる前に、彼が再び律動を始める。
 
「あっ……ちょ、と、待って……あっ、あっ……!」

 痛みにすら感じる程の快楽に耐えきれず、彼の首元にしがみつく。すると、彼が私の身体を包み込む様に優しく抱きしめた。

「――マーシャ」

 耳に唇を触れさせ、吹き込む様に囁かれるのは自身の名。低く甘いその声に、腰が痺れる様な感覚と共にお腹の奥が疼いた。
 
「本当に、名前を呼ばれるのが弱いですね」

 彼が揶揄う様にくつくつと笑い、舌先で私の耳朶を弄んだ後口に含み歯を立てた。
 その感触に肩が大きく震え、蜜壺に差し込まれていた彼の性器をきつく締め付ける。

「名前呼ばれるのが弱い、というより、耳が弱いんでしょうか」

「……うるさいな」

「まぁ僕としては、虐め甲斐があって楽しいですが」

「……最低。ってか、いつまで敬語なの? ほんと、一時ひとときも敬語崩れないよね」

「……」

 私の言葉に何か思う事でもあったのか、彼が私の顔をじっと見つめた。なんだか居た堪れなくなり、ふいと顔を逸らし彼から身体を離そうと身を引く。

「まぁ、いいんだけどさ。今日はもう終わりで良いんじゃない? 満足出来ないって言うなら、後で口でしてあげ、るから、ぁ」

 急に彼に腰を引き寄せられ、思わず言葉の語尾が崩れた。

「ちょっと、何、びっくりした……っん、ぁ……!」

 ぐり、と奥を擦る様に、強く押しつけられる。その感覚が蜜壺の最奥に伝わり、快楽となって自身を襲った。

「――此処でやめるとか、僕が許すとでも思ってんの」

 耳に吹き込まれた、普段と違う口調と声。そしてやや乱暴に、私の腰を数回揺する。

「っひ、……っあ、ぁあ」

 予期せぬ彼の言葉と行動に、絶頂に達する。今迄で最も強い快楽に身体の震えが止まらず、思わず彼の肩に爪を立てた。
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