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最終章 おわりのはじまり

リュドリュークは俯かない

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 くそっ! くそっ! くそっ!

 俺はリュドリューク・アレグエッドだぞ!
 この国の王子だ!!!

 それなのに、なぜこんな仕打ちを受けなければならない!!!

 俺はエドワード・キッドソンと共に、処罰としてロンド地区へ送られた。

 エドワードはキッドソン家の所有する屋敷で、魔導師団のシェ・アイシクルと共にそれなりの暮らしをしていた。

 それだと言うのに、俺は前線で兵士として働かねばならなかった。犬小屋かと思うほどに狭い建物の牢獄のように狭い一室で寝食をする。ベッドは硬いし食べ物だって質素で口に合わない。毎日、稽古があり身体はボロボロになった。

 最悪だ、その一言しか出てこなかった。

 ある日、俺が訓練から抜け出して散歩をしていると肌が雪のように白く銀色の髪をした者が現れた。
 どう見ても『絶対王政主義国家 ルジエナ』の者だった。その国出身の者は総じて肌が白く銀色の髪をしている。

「リュドリューク・アレグエッドだな。」

 男はじっと俺を見据えた。

「内部情報のリーク、及び我が国の軍を領内へ誘導すれば、身の安全を保障し更にルジエナで一生涯困らない生活を提供しよう。」

 男は取引を持ちかけてきた。
 想定外の出来事だった。

「それは、つまり……俺にスパイになれと?」
「端的に言えば、そういうことだ。」

 転機だと思った。
 こんなにも早くこの生活を抜け出せる手段が手に入るとは、俺はツイていると本気で思ったものだ。

 俺はすぐに承諾をした。
 王都にいつ戻れるかなんてわからない。不透明なものを信じるよりも目の前の確かなものだ。

 そして、俺は情報収集やルジエナの者たちを手引きする準備をしていた。

 しかし、上手くはいかなかった。

「リュドリューク・アレグエッド。国の機密情報を他国へ流し、そしてこの国に敵を招き入れようとした。幾つかのスパイ行為により、身柄を拘束する。」

 エドワードが俺の行動に気づいたのだ。

 その結果、俺は罪人たちが強制労働を強いられる炭鉱で罰を受けている。

 俺は、王族だ。
 こんなところで野蛮な者たちと同様に労働を強いられていいのか? 良いわけがない!!

 そもそも、スパイをしたのだって俺をあんなところに居させたせいだ。最初からもっと高待遇にしていればスパイなんてしなかった。

 正当防衛だ、俺は悪くなんかない。

 刑罰を受けることになり、俺は王族の身分を剥奪された。だが、俺は諦めてはいない。

 必ず、ここから抜け出して反旗を翻すのだ。
 そして俺が王になり、この国を動かす。

 俺をこんな目に合わせた者たちは、全員処刑だ。
 特にユシュニス・キッドソンは自分の手で始末してやる。俺との婚約を続ければ良かった、と泣き喚いても許すものか。

 あの日、あんなにも俺に恥をかかせたのだ。
 もしかすると、エドワードが俺のスパイ行為に気がついたのも彼女の策略かもしれない。そう考えると尚更怒りが湧いてくる。

 いつか、俺の手で彼女の全てを奪う日が楽しみだ。だが、俺の成し遂げたいことはそれだけではない。

 リマの評判を取り戻す。

 必ず後世まで『優しく素晴らしい聖女だった』と彼女の名前を遺してやるのだ。死しても尚、後ろ指を刺される存在であってはならない。

 きっと、あの場で俺に言った言葉は俺を巻き込まないための嘘だ。俺を守ってくれたのだ。
 王子ではない俺に価値がない、なんてそんな酷いことをリマが本心で言うわけがない。

 俺が彼女を庇い、父上に処罰されることを危惧してのことだ。彼女はずっと俺をそばで見てきた。俺が王になることを心から望んでくれていた。

 大丈夫だ、リマ。
 俺は君のことをよくわかってる、君が俺のことを愛してくれていたということも。

 しかし、彼女の思いとは裏腹に俺はこうしてここにいる。ロンド地区の時よりも酷く辛い日々があり、何度も心が折れそうになる。

 すまない、リマ。
 君が俺を救ってくれようとしたのに、俺は処罰を受けてしまった。

 だが、俺は屈しはしない。
 君の名誉を取り戻すまで、絶対に諦めない。
 どんな苦境に立たされても、下を向かずに立ち向かってやる。

 そう心に決め、俺は持っていたツルハシをガン! と岩に叩きつけた。
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