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第一章
全員集合①
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グスグスとぐずるポンコツオーナー。
もうこいつは使い物にならないと判断して先輩には俺が代わりに答えてあげる。
「蘇芳ですよ」
「へーそれじゃあ蘇芳玄都っていうんだ。知れて良かった。ありがとな」
そう言ってポンと俺の頭に手を乗っける先輩。
こういうことを自然とやっちゃうからダメなんだよなこの人は。天然タラシってやつだ。別に頭ポンくらいでどうとも思わないけど。
というかなんでオーナーの苗字なんて知りたがったんだろう。気にする価値ないのに………って、待てよ。
―――『蘇芳』?
蘇芳だと? なんっか聞き覚えあるぞ?
……この時ほど自分の優秀な脳を恨んだことはない。せっかく忘れかけてたのになんで思い出しちゃうかな!? 途轍もなく嫌な予感がするんだが……。
と、嫌な予感ほど当たるという言葉を最初に言った人には、もれなく呪いをプレゼントしてあげようと本気で思った。
―――その時、またもや鳴ったチリンチリンという音は死へのカウントダウン。
「おいクソ兄貴、俺のゴムどこに隠しやがった」
はい死んだ。さようなら千秋くん。
生まれ変わったら本物の男の子になってるといいね? もし女に生まれてももう『楽しそうだから』って理由だけで男装したらダメだよ?
だってほら……、
「あ? お前朝比奈千秋?」
その愚かな選択のせいでこんなことになってるから!!
悲劇!! まさしく悲劇だよ!!
あれ、楽しいことは!? 楽しいことどこいった!? 俺さっきから嘆いてしかいない気がするんだけど!?
「やっと来てくれたか! 倭人~お願いだよ人手不足なんだ。店手伝ってくれよ~」
「俺の知ったことか。それより早くゴム返せ。上で女待たせてんだよ」
「一言『手伝う』って言ってくれたら返す。五倍でも十倍でも返してやるから!!」
「……百倍」
百!? どんだけヤるつもりだお前!? 下半身元気過ぎるだろ!!
なんだ? その見た目からして超絶テクニシャンなのか?
―――絶対そうでしょやばいシてみたい。女辞めてからご無沙汰なんだよねぇ。ていうかもう絶対処女膜再生したよ完全復活だよ。
え、てことはまた痛い思いすんのかな? それは嫌だなぁ……って今男だから!! 何考えてんの俺!? どんだけ欲求不満なんだよ!!
……それもこれもこの男のせいだ。この歩くフェロモン量産機がいけないんだ!!
―――いやそうじゃないでしょ。意味不明な責任転嫁してる場合じゃないから。
「ひゃ、百倍か……今月の売り上げどんくらいだっけ……」
とかオーナーがアホなこと抜かしてる間にこの男からできるだけ遠ざからないと!!
そしてあわよくば俺のことなんて一欠片も残さず忘れてください……。
「……そいつはここでバイトしてんの?」
ってそんな人生甘くないよね!! 知ってた!!
高校まではなんだこの勝ちゲーとか思ってたけどそんな自分を全力で呪いたいよ! それその時だけだから! 男になる前だけだから! 男になった途端奈落の底に突き落とされるから!!
なんて現実逃避してる場合じゃないぞ。まだ道はある。まだ希望を捨てるには時期尚早だ!!
「いや俺は期間限定で今だけ―――」
「千秋ちゃんのこと? そうだよ? ちなみに売り上げナンバーワンな………いってえ!? 何!? 今なにで殴ったの君!?」
「鋼鉄でできたトレーですけど何か?」
「んな!? そんなの俺買った覚えないぞ!?」
「こんなこともあろうかと俺が自費で買いました。今使用したんで経費ください」
「なんて理不尽な!!」
頭を抱え込み若干涙目で喚くオーナー。否、疫病神。
むしろこれくらいで済んだと思え!! まじでふざけんなよ!? あんた何言ってくれちゃってんの!?
「……へぇ? ナンバーワン、ね」
クッソ!! なけなしの希望が木っ端微塵だよ!!
―――バアアアン!! ってバズーカ砲で粉々に砕け散った音が聞こえたよ!!
「イッテ!! なんでまた叩くの!?」
「これが壊れるまで叩くつもりです」
「何それ殺人予告!? 怖すぎ!!」
「壊れたら新しいの買ってくださいね。もちろん経費で」
「えええ!? いつからそんなバイオレンスな子になっちゃったの!? そんな娘に育てた覚えはありません!!」
……ッ、こんの、言ったそばから!! 本当にこの人脳みそ機能してない!! こんなのもう脳死状態と一緒だよ!!
「……《娘》?」
ほらね!! この男が聞き逃すわけないじゃん!? マジでどうしてくれるんだ! 末代まで呪ってやろうか!?
「……ッッ、いやほら言葉の綾だよ千秋ちゃん女の子みたいに美人さんじゃん? これは最早俺の娘でしょみたいな?」
もう一度光り輝く鋼鉄のトレーを、蘇芳倭人に見えないように振りかざしたら、顔を真っ青にして説明しだしたオーナー。
いや、ていうかそれなんのフォローにもなってない気がすんのは俺だけ?
しかもなんだ? 最後のは本心か? ……もうこのオーナーほんとやだ。やっぱ辞める。もうこんなとこ辞めてやる。
もうこいつは使い物にならないと判断して先輩には俺が代わりに答えてあげる。
「蘇芳ですよ」
「へーそれじゃあ蘇芳玄都っていうんだ。知れて良かった。ありがとな」
そう言ってポンと俺の頭に手を乗っける先輩。
こういうことを自然とやっちゃうからダメなんだよなこの人は。天然タラシってやつだ。別に頭ポンくらいでどうとも思わないけど。
というかなんでオーナーの苗字なんて知りたがったんだろう。気にする価値ないのに………って、待てよ。
―――『蘇芳』?
蘇芳だと? なんっか聞き覚えあるぞ?
……この時ほど自分の優秀な脳を恨んだことはない。せっかく忘れかけてたのになんで思い出しちゃうかな!? 途轍もなく嫌な予感がするんだが……。
と、嫌な予感ほど当たるという言葉を最初に言った人には、もれなく呪いをプレゼントしてあげようと本気で思った。
―――その時、またもや鳴ったチリンチリンという音は死へのカウントダウン。
「おいクソ兄貴、俺のゴムどこに隠しやがった」
はい死んだ。さようなら千秋くん。
生まれ変わったら本物の男の子になってるといいね? もし女に生まれてももう『楽しそうだから』って理由だけで男装したらダメだよ?
だってほら……、
「あ? お前朝比奈千秋?」
その愚かな選択のせいでこんなことになってるから!!
悲劇!! まさしく悲劇だよ!!
あれ、楽しいことは!? 楽しいことどこいった!? 俺さっきから嘆いてしかいない気がするんだけど!?
「やっと来てくれたか! 倭人~お願いだよ人手不足なんだ。店手伝ってくれよ~」
「俺の知ったことか。それより早くゴム返せ。上で女待たせてんだよ」
「一言『手伝う』って言ってくれたら返す。五倍でも十倍でも返してやるから!!」
「……百倍」
百!? どんだけヤるつもりだお前!? 下半身元気過ぎるだろ!!
なんだ? その見た目からして超絶テクニシャンなのか?
―――絶対そうでしょやばいシてみたい。女辞めてからご無沙汰なんだよねぇ。ていうかもう絶対処女膜再生したよ完全復活だよ。
え、てことはまた痛い思いすんのかな? それは嫌だなぁ……って今男だから!! 何考えてんの俺!? どんだけ欲求不満なんだよ!!
……それもこれもこの男のせいだ。この歩くフェロモン量産機がいけないんだ!!
―――いやそうじゃないでしょ。意味不明な責任転嫁してる場合じゃないから。
「ひゃ、百倍か……今月の売り上げどんくらいだっけ……」
とかオーナーがアホなこと抜かしてる間にこの男からできるだけ遠ざからないと!!
そしてあわよくば俺のことなんて一欠片も残さず忘れてください……。
「……そいつはここでバイトしてんの?」
ってそんな人生甘くないよね!! 知ってた!!
高校まではなんだこの勝ちゲーとか思ってたけどそんな自分を全力で呪いたいよ! それその時だけだから! 男になる前だけだから! 男になった途端奈落の底に突き落とされるから!!
なんて現実逃避してる場合じゃないぞ。まだ道はある。まだ希望を捨てるには時期尚早だ!!
「いや俺は期間限定で今だけ―――」
「千秋ちゃんのこと? そうだよ? ちなみに売り上げナンバーワンな………いってえ!? 何!? 今なにで殴ったの君!?」
「鋼鉄でできたトレーですけど何か?」
「んな!? そんなの俺買った覚えないぞ!?」
「こんなこともあろうかと俺が自費で買いました。今使用したんで経費ください」
「なんて理不尽な!!」
頭を抱え込み若干涙目で喚くオーナー。否、疫病神。
むしろこれくらいで済んだと思え!! まじでふざけんなよ!? あんた何言ってくれちゃってんの!?
「……へぇ? ナンバーワン、ね」
クッソ!! なけなしの希望が木っ端微塵だよ!!
―――バアアアン!! ってバズーカ砲で粉々に砕け散った音が聞こえたよ!!
「イッテ!! なんでまた叩くの!?」
「これが壊れるまで叩くつもりです」
「何それ殺人予告!? 怖すぎ!!」
「壊れたら新しいの買ってくださいね。もちろん経費で」
「えええ!? いつからそんなバイオレンスな子になっちゃったの!? そんな娘に育てた覚えはありません!!」
……ッ、こんの、言ったそばから!! 本当にこの人脳みそ機能してない!! こんなのもう脳死状態と一緒だよ!!
「……《娘》?」
ほらね!! この男が聞き逃すわけないじゃん!? マジでどうしてくれるんだ! 末代まで呪ってやろうか!?
「……ッッ、いやほら言葉の綾だよ千秋ちゃん女の子みたいに美人さんじゃん? これは最早俺の娘でしょみたいな?」
もう一度光り輝く鋼鉄のトレーを、蘇芳倭人に見えないように振りかざしたら、顔を真っ青にして説明しだしたオーナー。
いや、ていうかそれなんのフォローにもなってない気がすんのは俺だけ?
しかもなんだ? 最後のは本心か? ……もうこのオーナーほんとやだ。やっぱ辞める。もうこんなとこ辞めてやる。
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