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Ⅱ.入学編

54.勧誘

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 自信を持ってミシェルにそう告げた。
 なんだかんだ言ってミシェルはヒロインだ。邪魔なライバルがサポート役になる──こんな魅力的な誘い断れないでしょう?
 そう思ったのだけど……

「は? やだ。もう諦めるって言ったじゃん」
「えっ…」

 なんとあっさり断られてしまった。
 解せぬ。絶対この提案に乗ると思ったのに。

「な、なんで? アゼン様もザックも超優良物件だよ? 勿体無くない?」
「しつこい」
「じゃ、じゃあローレンスは? この前だって二人で仲良さそうに話してたじゃない! いい感じなんじゃないの?」
「はあ? あの男といつ──ああ、あの時ね。フン、何が仲良くよ。私は脅されてたの!」
「えっ…おど!?」

 ちょっと何言ってるかわからない。
 確かにローレンスは少し気持ち悪いところがあるけれど、誰かを脅すなんて──

「か、勘違いじゃ…」
「ああもうウザイ! もうほっといて! せいぜい逆ハーでもなんでも楽しんでなさいよ!」

 フン! と力任せに言った後ミシェルは廊下を駆けて行ってしまった。

「ちょっと! 話はまだ──きゃ!?」

 慌てて追いかけようとしたのだが、走り出そうとした瞬間何かにぶつかって尻餅を付いてしまう。

「いった……」
「すみません。僕の前方不注意で……大丈夫ですか?」

 格好悪く地べたに投げ出された私の目の前に、一つの手のひらが差し出される。
 その手を辿ると、そこには優しそうな男子生徒が立っていた。
 
 あれ、この人何処かで──ってそんなことよりミシェル!

「大丈夫です。私の方こそごめんなさい」

 彼の手を借りて立ち上がる。そしてそのままミシェルの後を追ったのだった。





「はあっ、はあっ……ふう……ミシェル、逃げ足だけは速いのね……」

 結局、ミシェルのことは捕まえられなかった。
 まだ話の最中だったのに、本当せっかちなんだから。

 しかし私はまだ諦めない。ミシェルと仲良くなり、攻略対象達とも距離を取るにはこれしかないのだ。
 どうにかしてミシェルをその気にさせないと……。

「どうしたんだよ? そんなに息切らして」

 壁に凭れかかって呼吸を落ち着かせていると、影から見知った顔が姿を現した。

「ダ、ダリル王子…?」
「よう、愛しのルリアーノ姫」

 ニヤリと美麗な顔を歪めるダリル王子。
 私はそれに対してうげっと心底気持ち悪そうな顔をする。

「やめてください。鳥肌立ちました」
「ふーん? その割には顔赤いけどな」
「み、見間違いでしょう。それより何故一年の階へ? 二年生は用事なんてないですよね?」
「そんなのお前に会いに来たに決まってんだろーが」

 全く、変に鋭いのは困ったものだ。全力で話を逸らしたわけだが、ダリル王子はあっさりと質問に答えてくれた。

「私に? 一体何故?」
「…お前、それ素で聞いてんのか? だとしたら相当鈍いな」
「はい?」
「まあいい。もうすぐ生徒会メンバーが正式に決まるだろう?」

 ああ、そういえば今朝先生がそんなことを言っていた。私には関係ないことだと思ってあまり話を聞いていなかったけど。

「それが何か?」
「勧誘しにきたんだよ」
「…誰を?」
「お前を。次期生徒会長の俺がな」

 若干呆れたような視線を向けるダリル王子。
 え、だって……私が生徒会に? と、予期せぬことに一瞬戸惑ったが、そういえばゲームでルリアーノは副会長だった気がする。
 完全に失念していた。まさかここでシナリオの強制力が発揮されるとは。
 でも私はまだ一年なのに…しかも生徒会長はアゼン様ではなくダリル王子。それなのにこうやって勧誘されるとは、どうなっているのだろう。
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