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Ⅱ.入学編

28.入学式

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「姉様、早く行きましょう」
「婚約者の僕を差し置いて何を言っているのかな」
「お嬢様、ご命令さえあれば彼等を排除しますが」

 ──記念すべき入学式当日。
 そんな日に玄関前で言い争っている私達。

 なんだこの鬱陶しい図は。

「というかなんでザックまで一緒に行こうとしてるの?」
「あれ、言ってませんでしたか? 僕の魔法が認められて特別に入学を1年早めてもらったんです」
「な、なるほど…」

 アゼン様に続いてザックの入学時期もズレたなんて。ヒロインはゲーム開始時2年生だったから私と同学年でザックの1個上、アゼン様の1個下のはずだ。けれどこの場合はみんな同学年になるってこと? だとしたらゲームの開始時期が1年早まるのだろうか。本来はザックが入学するの待ってたもんな…。

 ここまで来るとゲームと違いすぎて混乱してくる。ちゃんと学園生活を送れるか不安だ…今まではある程度ストーリーを知っていると思っていたから自信に満ち溢れていたのに。まあ途中どんな展開になっても私の断罪イベントは変わらないだろうけど。

「本当のこと言いなよ。金の亡者である学園長を買収したくせに」
「殿下こそ、1年も入学を遅らせるほど仕事量が多いとは思いませんが。もしかして無能なんですか?」
「君は本当に不敬だね。王族侮辱罪で捕まえてあげようか?」
「いいですよ。権力を振りかざす男なんて姉様のタイプとはかけ離れているので僕も安心です」

「ああ、この会話をお嬢様に聞かせてやりたい…」
「え?」

 ゲームとの相違点に悶々としていると、側にいたモルナの呟きが聞こえたので顔を上げた。やば、そういえば3人の相手してなかった。

「いえ…それより早く行かないと遅刻してしまいますよ」
「ハッ!」

 そんなモルナの声でようやく私達はアルランデ邸を後にした。
 ちなみに学園の制度として1人までなら付き人を連れて行くことができるので、ゲームではアゼン様付きだったローレンスは今回私付きで学園に通うこととなる。本来の付き人であるモルナは何度も食い下がり抗議していたので、シナリオの矯正力が働いていたようだったが、結果ローレンスが勝ったあたりやはりゲーム通りにはいかないようだ。




 新入生の総代は例年最も成績が優秀な者が勤める。主に勉強と魔法が反映されるので私に声が掛かることを期待したのだが、実際は完璧王子様であるアゼン様が舞台に立った。
 まあ身分も年齢も上であるアゼン様を任命しないわけにはいかないわよね。うん、全然悔しくなんかありませんよ?

 そういえばヒロインはどこかな~? 人が多過ぎてわからない……まあゲームでは同じクラスだったしすぐに会えると思うけど。


 ──なんて呑気に考えていた私は勿論気付かなかった。

「なんでアゼンが今年入学しているの!? あそこにザックまでいるじゃない…!」

 1人あり得ない事実に狼狽えていた女子生徒には。
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