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Ⅰ.出会い編
17.ターゲット3:ローレンス
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12歳になり数日経ったある日──それは突然やってきた。
「本日付けでルリアーノお嬢様専属騎士に配属されました。ローレンス・ベイリーと申します」
「ッ!!?」
朝の身支度が終わって優雅に過ごしていたら、ドアの向こうから長身の茶髪の青年が現れたのだ。
見慣れない…けれどどこかで見たような顔に首を傾げていれば、すぐに青年は私の前に跪き“その名前”を口にした。
そして聞いた瞬間目を見開いた。何故なら、ローレンス・ベイリーは3人目の攻略対象だからだ。
だけど何故彼がここにいるのかわからない。だって彼は──ゲーム上ではアゼン様の騎士だったから。
ベイリー侯爵家の次男で、剣を握らせれば右に出るものはいないとまで言われている天才剣士。そんな彼は14歳という前代未聞の若さで王太子殿下直属の騎士に任命されたのだが……。
一体どういうこと? アゼン様の騎士に任命されるまでは私から近付けないからと、その時期を今か今かと待っていたのに、まさか私の騎士としてやってくるなんて。
初めてシナリオ通りではないことが起きて戸惑う。これをラッキーとして受け流していいものか、それとも重く受け止めるべきなのか。
そんな風にぐるぐると思考が渦巻く中、次にローレンスが言った言葉。
──それによって私の思考は見事に吹き飛んだ。
「ああ……っ遂に念願叶いました! 毎日毎日夢見ていたルリアーノお嬢様の騎士になれるなんて! このローレンス、感激で興奮が冷めそうにありません。どうか暫しの間お見過ごしください……」
エメラルドの瞳をキラッキラさせてこちらを見たかと思えば、跪いたまま己の身体を抱きしめわなわなと震えているローレンス。
……待て待て待て。
誰だこれは? え? 本当にゲームに出てきたローレンス・ベイリー? 攻略対象3人目で合ってるの?
なんか私の記憶にあるキャラと全然違うんだけど……。
確かにゲームではアゼン様のことを崇拝していて絶対的な忠誠を誓っていた。アゼン様が危機に晒された時はとても必死になっていたと思う。そんなアゼン様大好きなローレンスをどうやって攻略しようか考えていたのだから。
だけどあの……
「ああ、ここまで全てが完璧な方に従えるなんて……これ以上ない喜びでございます。このローレンス、一生を捧げてあなた様に忠誠を誓います!!」
こんなに気持ち悪いまでの情熱はなかった。
うん、気持ち悪い以外の言葉が見つからない。なにこの温度差。なんで感じ取ってくれないの?
ほら側に控えている侍女達もドン引きしてるじゃない。さっきまでローレンスの美貌に色めきだっていたのに今ではお通夜のように静まり返っている。
ゲームでは大人な雰囲気が魅力だとか言われていたのに、コレには見る影もない。こんなのキャラクター詐称とクレームが入ってもおかしくないぞ。
一体何が彼をここまで変えてしまったんだ……。
「本日付けでルリアーノお嬢様専属騎士に配属されました。ローレンス・ベイリーと申します」
「ッ!!?」
朝の身支度が終わって優雅に過ごしていたら、ドアの向こうから長身の茶髪の青年が現れたのだ。
見慣れない…けれどどこかで見たような顔に首を傾げていれば、すぐに青年は私の前に跪き“その名前”を口にした。
そして聞いた瞬間目を見開いた。何故なら、ローレンス・ベイリーは3人目の攻略対象だからだ。
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エメラルドの瞳をキラッキラさせてこちらを見たかと思えば、跪いたまま己の身体を抱きしめわなわなと震えているローレンス。
……待て待て待て。
誰だこれは? え? 本当にゲームに出てきたローレンス・ベイリー? 攻略対象3人目で合ってるの?
なんか私の記憶にあるキャラと全然違うんだけど……。
確かにゲームではアゼン様のことを崇拝していて絶対的な忠誠を誓っていた。アゼン様が危機に晒された時はとても必死になっていたと思う。そんなアゼン様大好きなローレンスをどうやって攻略しようか考えていたのだから。
だけどあの……
「ああ、ここまで全てが完璧な方に従えるなんて……これ以上ない喜びでございます。このローレンス、一生を捧げてあなた様に忠誠を誓います!!」
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ゲームでは大人な雰囲気が魅力だとか言われていたのに、コレには見る影もない。こんなのキャラクター詐称とクレームが入ってもおかしくないぞ。
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