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 とりあえず走る。幸いもう学園に生徒はいない。
 走りながら絶叫した。

「神かみ紙カミィイイイ!!! オーロラァアアアア!!! いるんでしょ出てきなさいよォオオオ!!!」
『もう、なんだよ煩いなぁ』

 するとすぐさま反応が。いつものように頭に直接話しかけてくるオーロラ。

 てかなんでそんな余裕ぶっこいてんの!? あんたも見てたでしょ!? このとんでもなくオカシイ状況を!!

「ちょっと!? いいんですかアレ!? あなたのシナリオガン無視してますけど!? クロリエではなく私と結婚するとかほざいてますけど!?」
『ああソレねー、もういいかなー』
「は……はああああ!!?」

 いやいやなんだその手のひら返しは!? あんなにシナリオにこだわってたじゃん!! 役割がどうとか言ってたじゃん!! 私を好きになるのはエドウィンの役割じゃないでしょ!?

『実はさー、この前エドウィンを僕の世界に呼び出したんだよ』
「え……?」
『ほら、君も小さい頃一度来たことあるでしょ?』

 ああ、あのメルヘンチックな世界ね。

『全然クロリエを好きになる素振りないからさ~。ていうかほぼ君としか行動してないし?』

 いやそれな。私もクロリエ虐めたいのにエドウィンが常にひっついてるせいでなかなか大変だったわ。

『だから君の時みたいに僕の世界に呼び出して教えたんだよ。エドウィンはクロリエを好きになってもらわなきゃ困るって』

 まじかよ。
 まさかのエドウィン神様に会ってた~~~。
 ああ、だからさっきアイツがどうとか言ってたのか。神様をアイツ呼ばわりって……命知らずな奴だな。まあ私も心の中でクソ紙クズ野郎とか罵ってるけど。

 それにしても、『好きになれ』とか神様ほんとに言ったんだ。私が唯一それ言われたら無理だなぁと思ったことを……。
 でも確かにそうなるようにシナリオは組まれていたわけだし、私のように転生という名のバグを生じない限りそのシナリオに背くことはないはずだ。
 一体彼に何が起きてる……?

『でも彼は拒んだ。キャンディス以外を好きになることなんてできないってね』

 エ、エドウィンンンンン。
 そこは素直に従っとけよ。何拒んでんだよ。
 そんなこと言ったら呪いが……

『だから君にしたように彼に呪いをかけようとした。クロリエに3日連続でキスしなかったら死ぬ呪いを』

 あの、毎度のことだけど呪いの内容が悪どい。

 なんなの、神様どんだけ鬼畜なの。
 さすがに可哀想だよ。好きでもない人にキスしなきゃ死ぬって。
 私的にもエドウィンにはクロリエを好きになって欲しいけど、さすがにちょっと……。
 それに私がどんなに彼を虐めても嫌いにならなかったように、キスしてたら好きになるとは限らないし……。

『そしたら彼なんて言ったと思う? “キャディ以外とキスするくらいなら死んだ方がマシだ”―――って』

 うーわ、言いそう。

 あれ、だけどエドウィン全然死ぬ気配ないよね?? 具合悪くなった素振りもない。
 まだ呪いをかけられて3日経ってない? それとも私に隠れてクロリエとキスを!?

 ……いや、まあ別にいいんだけどね。それはそれで。私にはなんの被害もないわけだし。
 本当に彼等に恋心が芽生えたら私は自由だし……うん。
 別になんとも思ってないし。

『はあ……何か勘違いしてるみたいだけど、彼に呪いかけてないから』
「え……?」
『なんとあの男、この僕を脅してきたんだよ? 僕これでも神様だよ? 神脅すとかあり得ないからね?』

“キャンディス以外を好きになる気なんてさらさらないから呪いなんてどうでもいいけど……その代わり、死ぬまでの3日間全身全霊でお前が作った世界とやら壊すから。そうだなぁ……とりあえず学園の人間くらいなら全員殺せるかな?”

『―――ってさ』
「!!?」
『ねえ、彼ヤバくない? 僕彼のことそんな殺人鬼に作った覚えないんだけど』

 うん、ヤバイ。ていうか怖い。いや怖いなんてもんじゃない。
 え、なんなの? エドウィンあんたアレなの?
 好きすぎて病んじゃうやつ?? ヤン&デレなわけ??

 おいおいおいおーい。
 乙女ゲームではそんな描写なかったじゃん??
 小さい頃虐められてたせいで捻くれてたり腹黒かったりはしたけども……。
 そんな明らかヤヴァイ奴じゃなかったじゃん??

 ちょ、神様どうすんだよそんな危ないやつ。
 ほっといたらマジで世界滅ぶよ?? お前が丹精込めて作ったこの世界灰と化すよ??

『うん、だからもうエドウィンのことはいーや。この世界壊されるくらいなら諦める。君にあ・げ・る』

 いや、いらねええええ!!!!
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