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26.宣戦布告
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「気が変わった」と平気で嘯くエトメール。
「ふふ、そう言う割には殺気が隠せてないわよ?」
「なんだ、バレてたか」
隠すつもりもないくせに、驚いた素振りをする。
そんな彼に笑みを深くして、跨っている足を退けた。
「…へえ? それはオレに殺されてもいいってこと?」
「あなたが本気を出せば、私なんて歯が立たないはずよ」
私が拘束を解いたことは意外だったのか、珍獣を見るような目で私を観察するエトメール。
「それはやってみないとわからないよ。試してみる?」
「いいえ。今やれば部屋が血だらけになってしまうもの。そんな血生臭い部屋では熟睡できないでしょう?」
「アハハ! 気にするとこそこ!? それって、オレが本気を出しても死なない自信があるって風に聞こえるけど」
「ええそうね。私はあなたなんかに殺されない」
「…面白いね。どうも虚勢ではなさそうだ。さっきの動きも驚いたし、キミは一体何者?」
エトメールは私に興味津々のようだ。金の瞳が爛々と輝いている。
彼の殺人術の前には皆等しく無力となる。
彼が一度殺そうと思った相手は必ず死ぬ。
彼は当たり前のように加害者だ。彼を傷つけられる人なんて誰もいない。
…そう思っているのでしょう。
「近い将来、あなたを殺すことができる人物よ」
だから私が、そんなの単なる自意識過剰だって思い知らせてあげる。
…今はまだ、弱っちくてできないけど。いつか必ず、ね。
「侯爵様、軽食をお持ちしました」
ミーグルが食事を持ってきたころ、金の瞳を持つ美しい彼は綺麗さっぱり姿を消していた。
エトメールの最後に見せた笑みが忘れられない。
そういえば、外見は攻略対象の中で一番タイプかな。
性格は今のところ皇帝陛下が一番だけど。
でもエトメールのスリル大好きなところは私と似ていると思う。
快楽殺人鬼と恋愛はちょっと嫌だけど、友達くらいならいいかもしれない。
…まあ、私が彼に今後殺されるようなことがなければだけど。
今日話した感じではすぐに殺されることはないと思う。
それなりに気に入ってくれたみたいだし。
とは言っても油断は禁物だ。
命がなければこの世界を思う存分楽しめない。
やっぱりまずは誰にも殺されないよう特訓が必要だな。
「侯爵様、ロペルを着替えさせたのですがどうでしょう」
もぐもぐとホットサンドを食べていると、使用人の制服に身を包んだロペルが目の前にやってきた。
「あら、案外似合うじゃない」
緊張した面持ちでもじもじしているロペル。
こんなかしこまった服なんて着たことないだろうから落ち着かないのね。
それにしても、見た目を整えた途端見違えた。
薄汚れていたグリーンの髪がエメラルドのようにキラキラと輝き、黒い瞳は黒曜石を思わせる。
これはなかなか、利用価値がありそうね。
「ふふ、そう言う割には殺気が隠せてないわよ?」
「なんだ、バレてたか」
隠すつもりもないくせに、驚いた素振りをする。
そんな彼に笑みを深くして、跨っている足を退けた。
「…へえ? それはオレに殺されてもいいってこと?」
「あなたが本気を出せば、私なんて歯が立たないはずよ」
私が拘束を解いたことは意外だったのか、珍獣を見るような目で私を観察するエトメール。
「それはやってみないとわからないよ。試してみる?」
「いいえ。今やれば部屋が血だらけになってしまうもの。そんな血生臭い部屋では熟睡できないでしょう?」
「アハハ! 気にするとこそこ!? それって、オレが本気を出しても死なない自信があるって風に聞こえるけど」
「ええそうね。私はあなたなんかに殺されない」
「…面白いね。どうも虚勢ではなさそうだ。さっきの動きも驚いたし、キミは一体何者?」
エトメールは私に興味津々のようだ。金の瞳が爛々と輝いている。
彼の殺人術の前には皆等しく無力となる。
彼が一度殺そうと思った相手は必ず死ぬ。
彼は当たり前のように加害者だ。彼を傷つけられる人なんて誰もいない。
…そう思っているのでしょう。
「近い将来、あなたを殺すことができる人物よ」
だから私が、そんなの単なる自意識過剰だって思い知らせてあげる。
…今はまだ、弱っちくてできないけど。いつか必ず、ね。
「侯爵様、軽食をお持ちしました」
ミーグルが食事を持ってきたころ、金の瞳を持つ美しい彼は綺麗さっぱり姿を消していた。
エトメールの最後に見せた笑みが忘れられない。
そういえば、外見は攻略対象の中で一番タイプかな。
性格は今のところ皇帝陛下が一番だけど。
でもエトメールのスリル大好きなところは私と似ていると思う。
快楽殺人鬼と恋愛はちょっと嫌だけど、友達くらいならいいかもしれない。
…まあ、私が彼に今後殺されるようなことがなければだけど。
今日話した感じではすぐに殺されることはないと思う。
それなりに気に入ってくれたみたいだし。
とは言っても油断は禁物だ。
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やっぱりまずは誰にも殺されないよう特訓が必要だな。
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もぐもぐとホットサンドを食べていると、使用人の制服に身を包んだロペルが目の前にやってきた。
「あら、案外似合うじゃない」
緊張した面持ちでもじもじしているロペル。
こんなかしこまった服なんて着たことないだろうから落ち着かないのね。
それにしても、見た目を整えた途端見違えた。
薄汚れていたグリーンの髪がエメラルドのようにキラキラと輝き、黒い瞳は黒曜石を思わせる。
これはなかなか、利用価値がありそうね。
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