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4.憑依先は最高でした

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前世のぬるま湯とは比べ物にならないほどハードモードな人生というわけだ。

最高すぎる。

自分の思い通りになることなんて1つもない。
やることなすこと裏目に出るのだから。

自分以外全てが敵。
誰かを信用した瞬間殺されると言っても過言ではない。

親はクズで使用人もろくにいない。
一応侯爵令嬢という身分なのにこれっぽっちも恵まれていない。

前世とはあまりにも違う。──最高だ。

そんな最高な世界、すぐに死んでは勿体ない。
とりあえずこの身に降りかかる死亡フラグは全てへし折らないと。
その過程ですら最高に面白いだろう。

苦労して苦労してようやく幸せを掴み取った時、どれだけの達成感を得られるのだろう。
前世では一生感じることのできない感覚なのは間違いない。
想像するだけで興奮に体が震える。


──そしてもしその幸せに飽きたら、死のう。

どんなことをしても絶対に死ぬことはなかった悪役令嬢。
そんなある意味難攻不落な悪役令嬢が自ら死を選んだ時、ヒロインや攻略対象達はどんな顔をするのか。

もしかしたらその瞬間が一番面白いかも。






「え、衛兵!! あの女を引っ捕らえろ!! 皇太子に攻撃した罪で処刑してやるっ!!」

長い間気を失っていたクソダサ男──もとい攻略対象の1人、暴君皇太子が目を覚ました途端高らかに言い放った。

おかげで最高な未来に想いを馳せていた至福なひと時が台無しだ。

──コイツ、マジでうるさい。殺していいかな?


なんてね。冗談冗談。
これから私の人生を最高に面白おかしくさせてくれる貴重な人物の1人なのに、易々と失ってしまうのは得策ではない。

それに武器もないし、この体貧弱すぎてさっき皇太子を投げ飛ばしただけで腕が痛いし、多分現状じゃ殺せない。


ああ、早くしないと衛兵に捕まってしまう。
……果たして捕まった後、無事に脱出できるだろうか?
それも面白そうだけど……。

うん、そんな保証はないな。




とりあえず今は逃げよっと。
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