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後編

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ナディアとエルトンは婚約関係となり、学園でも一緒に過ごすようになった。
見ても関係の変化は明らかであり、社交界でも二人の婚約は広まっていた。
その結果、学園内でも二人が婚約関係にあるという認識が広まっていた。

ブリトニーはそれが気に入らなかった。
まるで二人が幸せな姿を見せつけるように思えた。
彼女は自分がギャレットと先に婚約したのに、ナディアが幸せそうにエルトンと一緒にいることが不愉快だった。

だから彼女はナディアに何か言ってやることにした。

ナディアが一人のときを見計らい、ブリトニーが近づいた。
彼女の表情には自信と挑発的な笑みが浮かんでいた。

ブリトニーの接近に気付いたナディアはその様子を見て少し身構えた。

「ナディア、あなたがエルトンと婚約したって聞いたわ。おめでとう」

「ありがとう、ブリトニー」

ブリトニーの挑発的な態度には気づいていたナディアは、あえて微笑みを浮かべながら答えた。
その反応がブリトニーは許せなかった。

「でも、私たちのほうが幸せだと思うわ。ギャレットと婚約できなくて残念だったわね。エルトンとは仕方なく婚約したのかしら?」

「エルトンとはお互いが望んで婚約したの。私たちは同じ気持ちを抱いていたのよ」

ブリトニーは誇らしげに言ったというのに、ナディアにはまるで効果がなかった。
それどころか何の悔しさも見せないことに苛立った。

「そう、良かったわね。私とギャレットはもっと運命的なものを感じたわ。私のほうが幸せよ」

「それは良かったわ、ブリトニー。あなたが幸せなら私も嬉しいわ」

ブリトニーはナディアの反応にますます不愉快さを覚えた。

「あなたがそんなに幸せそうなのが気に入らないのよ!」

ブリトニーは思わず叫んでしまった。
当然、周囲の人々の視線を引き寄せることになる。

以前からブリトニーからナディアへの態度は知られていたが、こうも大声で不快感を口にしたことは初めてだった。
しかも相手の幸せを妬む発言に、周囲の人たちはブリトニーへ軽蔑の眼差しを向けた。

ブリトニーは周囲の視線に気付いたが、ここで負けを認めることはできず、謝罪するつもりもない。
あくまでも自分は強い立場として振る舞うことを選んだ。
根拠のない強い立場のような振る舞いは周囲の失笑を買った。





ブリトニーはギャレットと婚約していたが、実態は幸せとは程遠かった。
最近では彼からの扱いがますます冷たくなっていた。

ブリトニーがギャレットと一緒に出かける約束があった日のこと。
彼女は自分の美しさを引き立てるようなドレスを選び、髪を整え、彼との時間を心待ちにしていた。
しかし、約束の時間が近づいてもギャレットは現れなかった。
彼女は待ち続けたが、結局彼は姿を現さなかった。

後日問い詰めれば都合が悪くなったと言い、何も悪びれていなかった。
ブリトニーにとっては屈辱的な扱いだったが、婚約は簡単に破棄できるものではない。
彼女は不遇な状況を甘んじて受け入れるしかなかった。

そういった出来事はそれからも何度もあった。
ブリトニーはギャレットとの婚約を後悔した。
ナディアに張り合ってギャレットと婚約なんてしなければ良かったと後悔した。

そこに学園での失態が加わり、彼女はますます厳しい状況へ追い込まれていった。





ナディアとエルトンは婚約後の幸せな日々を楽しんでいた。
二人は学園の講義が終わった後、しばしば一緒に散歩をしたり、カフェでお茶を楽しんだりしていた。

「あなたと一緒にいると、毎日が特別なものに感じるわ」

ナディアは心からの思いを伝えた。
エルトンはその言葉に嬉しそうに微笑んだ。

「僕も同じ気持ちだよ、ナディア。君と一緒にいる時間が何よりも大切なんだ」

今度はナディアが嬉しそうに微笑む番だった。

このようにお互いを大切にし、言葉でも行動でも示している二人は幸せそのものだった。





その様子をブリトニーが偶然見てしまった。

「何なのよ……。ナディアのくせに……」

ブリトニーはギャレットに約束を破られ、一人で街を歩いていた。
そこでカフェで談笑するナディアとエルトンの姿を見つけてしまったのだ。

ブリトニーは悲しくなり、自宅へ帰ることにした。
冷たい態度を取るギャレットとの婚約を後悔し、一人の現状を悲しみ、どうしてこうなってしまったのかと考えた。

ナディアに張り合おうとしたのがそもそもの間違いだったのか、ギャレットと婚約したことが間違いだったのか。
彼女は悩み、自分以外の責任にしようと考えた。

そんなブリトニーだったが、一つだけ勝ち誇れるものが残されていた。

ナディアが婚約したがっていたギャレットと婚約したことだ。

それだけは数少ないナディアに勝った証明だった。





そもそもナディアがギャレットとの婚約なんて望んでいなかったことをブリトニーは知らないままだった。
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