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学園編

誰かこの悪魔から僕を守って!?

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 「ちょっと何その哀れみの視線!僕をそんな目で見ないで!?ってか僕はそもそもクレディリア嬢に用があって……それがどうしてこんな間違いだらけな状況にっ!!」

 どうやら先程から言っていた『君』とはアルカティーナのことだったらしい。早とちりをしてとんだ勘違いをしてしまった。
頭を抱え叫ぶチルキデンに、アルカティーナは少々申し訳なく思いつつ微笑んだ。

 「まぁチルキ殿下。わたくしに御用だったのですか?というか、言ったそばから『間違』ってらっしゃいますよ?」

 「?間違い……って、何が?」

 思い当たる節がなかったのか、チルキデンを始め皆がアルカティーナに疑問の念を抱いた。思わず問うたチルキデンに、アルカティーナは仕方ないですねえとばかりに笑みを深め…………

 「『そもそも』じゃなくて『ほもほも』、でしょう??」

 さっきご自身で仰っていたではないですか。
 そう告げたアルカティーナは、チルキデンには鬼や悪魔のように見えたとか、見えなかったとか。

 「誰かっ!誰かこの悪魔から僕を守って!?」

アルカティーナは至極真っ当かつ正当なる意見を言っているつもりだったのだが、初対面であるチルキデンにそんなことがわかるわけもなく。とんだ性悪女だ、と頭の中でアルカティーナの評価がグンと下がった瞬間だった。

 「はぁ。まぁいいや。それより僕の要件を手っ取り早く話すよ」

 「はい」

 これ以上話を盛り上げられては困るとばかりにチルキデンは本題を切り出した。

 「単刀直入に言うよ。クレディリア嬢、僕の婚約者になってくれない?」

 「はい…?」

 唐突の出来事に頭が追いつかなかったアルカティーナの背後で、何やら金属音がした。振り返ってみると…

 「ティーナ、早くその変態から離れなさい」  

 ルイジェルが隣国の第二皇子に剣先を向けていた。これに焦ったのは、他でもない。アルカティーナ自身だった。

 「お兄様!?や、やめてください…!隣国の皇子に刃を向けるなど、不敬にもほどがありますよ!それこそお兄様の首が飛ぶかもしれません!だから、すぐにその剣をしまってください…!チルキ殿下が目を瞑ってくださる内に、早くっ!」

 「…うん、最後の最後に僕の名前を省略しなければ、至極真っ当な意見だったね」

 はは、と力無く笑うチルキデンの目は死んでいた。だが意外なことに、その表情に刃を向けられたことへの恐怖は一切感じられない。
アルカティーナに言われて渋々剣をしまったルイジェルは不機嫌オーラを隠そうともせず、チルキデンに尋ねた。

 「で?隣国からお越しの変態皇子はうちの可愛い可愛い妹に婚約者になれと?そう仰るのですか、そうですか」

 「いや、違う。正確に言えば、婚約者の振りでいいんだ!」

 慌てて首を振るチルキデンの言葉に、アルカティーナはおやと目を見張った。

 「振り、ですか。それはまた何故です?」

 何となく、その裏に複雑な理由があることを察したアルカティーナ。チルキデンはゆっくりと、その背景を話し始めた。

 
 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 次回はチルりんのターン、つまりチルりん視点のお話となります。はい。
 えっ?嫌な予感しかしない?
いやいや、そんな、まさか。
ここ最近シリアス回(?)が続いた(?)から、今のうちにネタをぶっ込めるだけぶっ込んどこうとか、そんなこと。考えてませんよ?ホントですよ、はい。
 
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