上 下
134 / 165
学園編

しょーもない補正だから〜〜

しおりを挟む

 「えへへ、久し振り~!元気そうで何よりだよー、うんうん!」

 パタパタと宙を飛びながらアルカティーナに話しかけているのは、酷く懐かしい顔だった。

 「ナ、ナ、ナビ!?わ、ほんとに久しぶりですね…!ナビも元気そうで何よりです」

 以前、テレパシーで会話したことはありましたが、こうして直接面と向かって話すとは本当に久しぶりです。それにしても、天使って歳をとらないのですね。会った時から見た目が一切変わってません。

 「うん、元気元気~~!今日はちょっと暇ができたからー、ティーナに会いにきたんだ~!」

 「そうだったんですか。ナビはいつも忙しそうですね」

 「うん、だって僕~すっごく偉いもん!えっへっへ~~凄いでしょ~~」

 えっへんと胸を張るナビは、残念ながら神話にまで記載されている大天使には到底見えない。だが、彼は正真正銘の大天使だ。
 その大天使様は、「あ、そうそう~~」と思い出したようにアルカティーナに話を振る。

 「もうゲーム本番になってるけど~、大丈夫ー?やってけそー?僕、すっごく心配!」

 ティーナにはいろいろ、ヤバいフラグがあるからね~~というナビの言葉に、アルカティーナは顔を曇らせる。

 「やっていけるとは思いますが、正直フラグに関しては不安しかないですね」

 リサーシャという心強い助っ人がいるとはいえ、アルカティーナ1人ではフラグ回避の自信は一切ない。

 「う~ん。そうだよね~やっぱり。でも安心して!この世界はゲームじゃいからー、ヒロイン補正とか、そう言うのは無いよ~!だから、頑張ったらフラグ回避なんて簡単!…なはず~!勿論基盤のストーリーは変わらないし~、多少ゲーム補正はあるけど~、全部フラグに関係ないような、しょーもない補正だから~~」

 「しょうもない補正って………」

 逆に何故それが入って、フラグに関係する補正が一切入らないのか。意味がわからない。
まぁアルカティーナとしては、万々歳だが。
 それに、その『しょーもない補正』にアルカティーナは少し覚えがあった。

 「あ、それってあれですか?わたくしが校門くぐった瞬間、花びらがぶわーって舞ったんですけど、あれのことです?」

 「ピンポーン!大正解~~!!」

 「…まぁ確かにしょうもない補正ですね」

 「でしょ~~?ふふん」

 満足げに頷くナビを見つめながら、アルカティーナは考える。
フラグに関係するゲーム補正がないとなれば、バッドエンドやデッドエンドを回避できる可能性は格段に上がる。そうなると、アルカティーナも多少気が楽で安心するが、それはそれとして、ヒロイン補正が効かないとなると…

 「もしかして、ヒロイン様はリスク高めですか?」

 「うん、その通り~~。ヒロインは元々ゲームではリスク低めだったんだけどね~、補正が入ってない状態で、かつ今のあの感じだとーー……」

 「だと??」

 真剣にナビを見つめると、彼はへらっと笑いながら言った。

 「かなりマズイよね~~」

 このままじゃ、ティーナの代わりにあの子がバッドエンドまっしぐらかも~~、とのんびり告げるナビ。アルカティーナはポカンと呆気にとられていた。

 「ゲームの世界だから、彼女中心に回るものだと思ってたんですけど…違うのですね」

 ロゼリーナのことを不安に思いつつ、呟く。

 「うん、そーだよ~~。だからティーナ、頑張ってねー!!!僕、ずっとずうぅっと、ティーナのこと応援してるから~~!!」

 短い手足をブンブン振りながら必死に語りかけてくるナビに、アルカティーナは思わず噴き出した。

 「ふふっ、はい。ありがとうございます。頑張りますね!」

 すると、その答えに満足したのかナビは手をブンブン振ると、消えてしまった。

 「うん、頑張れ~~!バイバーイ!!また絶対会いにくるよ~~!!まったね~~」

 「はい、また!」

 手を振り返し、ナビが消えるのを見届けてから、アルカティーナは再びベッドに寝転がった。

 ーーわたくしには、応援してくれる人が沢山いる。みんながいる限り、わたくしはきっと大丈夫です!!


 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ティーナの希望の光が色濃くなる話でした。
いいことですね。
ですが、いいことの後にくるのが嫌なこと。
現実でも、ゲームでも、それは変わりません。と言うことで、ヒロイン様の次はいよいよ彼女のターンです。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます

葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。 しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。 お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。 二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。 「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」 アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。 「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」 「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」 「どんな約束でも守るわ」 「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」 これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。 ※タイトル通りのご都合主義なお話です。 ※他サイトにも投稿しています。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【完結】悪役令嬢エヴァンジェリンは静かに死にたい

小達出みかん
恋愛
私は、悪役令嬢。ヒロインの代わりに死ぬ役どころ。 エヴァンジェリンはそうわきまえて、冷たい婚約者のどんな扱いにも耐え、死ぬ日のためにもくもくとやるべき事をこなしていた。 しかし、ヒロインを虐めたと濡れ衣を着せられ、「やっていません」と初めて婚約者に歯向かったその日から、物語の歯車が狂いだす。 ――ヒロインの身代わりに死ぬ予定の悪役令嬢だったのに、愛されキャラにジョブチェンしちゃったみたい(無自覚)でなかなか死ねない! 幸薄令嬢のお話です。 安心してください、ハピエンです――

処理中です...