上 下
121 / 165
学園編

準備はできた?

しおりを挟む

 リリアム学園は全寮制の学校である。
だから、アルカティーナもリリアム学園に通う6年間は家を出ることになる。

 そして現在。
対面式の後、自クラスにて自己紹介等を終えて解放されたアルカティーナは帰宅していた。
一度荷物を取るために帰宅したのだが、いよいよ寮へ出発する!という段階で、行く手を阻まれていた。



 「ティーナ!!行かないでっ!僕を捨てるの!?捨てないで!!」

 ダンボールの中の子犬みたいなことを言い出したのはーー最も、子犬は喋らないがーーお父様です。涙目でしがみ付いて来られても、全寮制なので仕方ないのですけど。

 すると何を思ったのか、今度はお兄様が勝ち誇ったように言いました。

 「はは、残念でしたね父上!僕は生徒だから毎日ティーナ会うことができる!」

 それを見て、呆れた様子で溜息をつくお母様はいつも大変そう。
 
 「そうは言っても、ルイジェルは今年で最高学年でしょう?たかだか一年ぽっきりのことじゃない」

 「たかが一年、されど一年、ですよ母上!」

 息子のドヤ顔に再び溜息をつき、諦めたように首を振るお母様。「あぁダメだわ、この子もう末期ね。気がついてたけど」とか何とかいう呟き声が聞こえたのは気のせいだと信じたいですね。

 気を取り直して、マーガレットはアルカティーナに笑いかける。

 「さ、ティーナ。準備はできた?」

 「はいお母様!わたくし、学園で立派なレディになって帰ってきますから、待っててくださいね」

 にっこり笑ってそう伝えると、未だに腰にしがみついたままのマリオスが叫んだ。

 「僕も!僕も待ってるよおおお!」

 続いてルイジェルである。

 「僕も待ってるよ!」

 「嬉しいですけど、お兄様は待たずに学園に行ってくださいね?」

 アルカティーナの最もな言葉に、ルイジェルはしょんぼり肩を落とすと「はい、ごめんなさい」と小さな声で答えた。
そもそも、既に寮入りしているルイジェルは、対面式が終わった今、帰宅する必要は一切なかったのである。それを、「ティーナが寂しくないようについて行かないと!」だの何だのと言って、無理矢理アルカティーナをつけてきたのだ。シスコンにも程がある。

 「ティーナが居なくなっちゃうなんて寂しいわね…連休には帰ってくるって約束してちょうだいね?」

 「はい、勿論ですお母様!」

 元気よく返事をしたアルカティーナを見たマーガレットは、安心したように微笑む。
ルイジェルの「いや、帰らずともいい。連休は僕と一緒にデートをしよう、そうしよう」という台詞に、その笑顔はすぐに凍りつくこととなったが。

 「では、そろそろ行きますね。行ってきますお母様、お父様」

 「「行ってらっしゃい!」」

 手を振って、お兄様と一緒に家を出ます。
門の前で待ってくれていた馬車に二人で乗り込むと、馬車はすぐに動き出しました。
小さな窓から外を覗くと、涙と鼻水でベトベトの顔で手をブンブン振るお父様と、綺麗で、でも寂しげな顔で手を振るお母様がいました。
二人が小さくなって見えなくなるまで手を振った後は、何だか眠くなって…ふと目が覚めた頃にはもう、学園寮前に着いていました。


 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 次はいよいよアメルダちゃんのターン!
婚約者様について詳細がわかります、多分!

 それにしても東京行きたい。
行きたい行きたい行きたい行きたい。
池袋か横浜か渋谷か新宿に行きたいよお。

って、あれ?
ほか三つはともかく横浜って行ってどうするんでしょうかね。横浜港に向かって「海だー!」とか叫ぶんですかね?あ、あれです。青春の1ページ的な。
うん、やめとこう。

 以上、水瀬のくだらないコメント欄でしたw

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪女のなみだ

じじ
恋愛
「カリーナがまたカレンを泣かせてる」 双子の姉妹にも関わらず、私はいつも嫌われる側だった。 カレン、私の妹。 私とよく似た顔立ちなのに、彼女の目尻は優しげに下がり、微笑み一つで天使のようだともてはやされ、涙をこぼせば聖女のようだ崇められた。 一方の私は、切れ長の目でどう見ても性格がきつく見える。にこやかに笑ったつもりでも悪巧みをしていると謗られ、泣くと男を篭絡するつもりか、と非難された。 「ふふ。姉様って本当にかわいそう。気が弱いくせに、顔のせいで悪者になるんだもの。」 私が言い返せないのを知って、馬鹿にしてくる妹をどうすれば良かったのか。 「お前みたいな女が姉だなんてカレンがかわいそうだ」 罵ってくる男達にどう言えば真実が伝わったのか。 本当の自分を誰かに知ってもらおうなんて望みを捨てて、日々淡々と過ごしていた私を救ってくれたのは、あなただった。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

もう彼女でいいじゃないですか

キムラましゅろう
恋愛
ある日わたしは婚約者に婚約解消を申し出た。 常にわたし以外の女を腕に絡ませている事に耐えられなくなったからだ。 幼い頃からわたしを溺愛する婚約者は婚約解消を絶対に認めないが、わたしの心は限界だった。 だからわたしは行動する。 わたしから婚約者を自由にするために。 わたしが自由を手にするために。 残酷な表現はありませんが、 性的なワードが幾つが出てきます。 苦手な方は回れ右をお願いします。 小説家になろうさんの方では ifストーリーを投稿しております。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

そして乙女ゲームは始まらなかった

お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。 一体私は何をしたらいいのでしょうか?

婚約破棄はいいですが、あなた学院に届け出てる仕事と違いませんか?

来住野つかさ
恋愛
侯爵令嬢オリヴィア・マルティネスの現在の状況を端的に表すならば、絶体絶命と言える。何故なら今は王立学院卒業式の記念パーティの真っ最中。華々しいこの催しの中で、婚約者のシェルドン第三王子殿下に婚約破棄と断罪を言い渡されているからだ。 パン屋で働く苦学生・平民のミナを隣において、シェルドン殿下と側近候補達に断罪される段になって、オリヴィアは先手を打つ。「ミナさん、あなた学院に提出している『就業許可申請書』に書いた勤務内容に偽りがありますわよね?」―― よくある婚約破棄ものです。R15は保険です。あからさまな表現はないはずです。 ※この作品は『カクヨム』『小説家になろう』にも掲載しています。

【完結】悪役令嬢エヴァンジェリンは静かに死にたい

小達出みかん
恋愛
私は、悪役令嬢。ヒロインの代わりに死ぬ役どころ。 エヴァンジェリンはそうわきまえて、冷たい婚約者のどんな扱いにも耐え、死ぬ日のためにもくもくとやるべき事をこなしていた。 しかし、ヒロインを虐めたと濡れ衣を着せられ、「やっていません」と初めて婚約者に歯向かったその日から、物語の歯車が狂いだす。 ――ヒロインの身代わりに死ぬ予定の悪役令嬢だったのに、愛されキャラにジョブチェンしちゃったみたい(無自覚)でなかなか死ねない! 幸薄令嬢のお話です。 安心してください、ハピエンです――

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

処理中です...