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学園編

魔法の言葉で!

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 対面式の後、アルカティーナ達はクラスごとに教室へと誘導された。
そして現在。
アルカティーナは友人達と語らっている。
何故かアメルダの姿が見えないので、一人少ない状態ではあるが。

 「あぁぁあああ!!最っ高!」

 カメラのようなものを見つめながら歓喜の声を上げるのはリサーシャである。頰を紅潮させ、かなり興奮しているようだがアルカティーナには何が原因でそうなったのかが分からない。
ちなみに、カメラはユグドーラの開発品なのだそうだ。万能か。

 「見てよティーナ、これ!!これっ!!」

 「あ……はい、良かったですね」

 冷たく接しているわけでは決してありません。
どう反応していいのか分からないのですよ。

 興奮した様子で見せられたカメラ画面には、普通の写真が写っていました。
具体的に言えば、ディール殿下とステファラルド様が仲睦まじくお話していらっしゃるところをとらえたものだったのです。
お二人とも攻略対象だからなのか、背景には見覚えのある花びらが舞っていました。そして何故か、わたくしやヒロイン様の時は普通の花びらだったのに、その写真に写っていたのは真っ赤な薔薇でした。
何か特別な意味でもあるのでしょうかね?
というかまず、リサーシャの興奮の意味がわからないのですが。

 「も~!反応薄いなぁ!ディーステよ!ディーステ!あーでもステディーも捨てがたいっ!」

 「あの……人間の言葉喋って下さい」

 「喋ってますけど!?」

 やいのやいのと騒いでいると、周りからやけに見られていることに気がつきます。

 「同じクラス嬉しすぎるー!」

 「俺、同じクラスになるためにこの一年死ぬ気で勉強したんだ…報われてよかった」

 「こんなに近くにアルカティーナ様がっ」

 「生まれてきてよかった…!!」

先生がいらっしゃらないからと言って初日から騒ぎすぎたでしょうか…。皆んなこちらをチラチラと見て何か話していますし。

 不安になってゼンを見上げると、ゼンはふわりと笑って首を振った。

 「多分、お嬢様の思っていることは間違ってるので気にしない方がいいですよ」

 よくわかりませんが、ゼンがそういうのであれば、そうなのでしょう。
アルカティーナは安心して、リサーシャと会話を続ける。

 「それにしてもリサーシャ…対面式の直前まで姿が見えないと思ったら、これを撮ってたんですね?」

 「うん!そうなの!萌え死にするかと思ったわ~。いや、マジで」

 大真面目な顔で話すリサーシャに、アルカティーナは最早苦笑いだ。

 「でも大丈夫何ですか?一国の王子様を盗撮するとか……」

 「それは大丈夫!2人には魔法の言葉で納得してもらってから撮ったから!」

 「魔法の言葉………??」

 アルカティーナは首をかしげる。
対して、ゼンは顔を引きつらせた。
何だ、その嫌な予感しかしないものは。

 「そ!魔法の言葉で!『私、生き別れの兄がいるんです…。よく覚えていないんですけど、貴方を見ていると何だか………。あっ…すみません、忘れて下さい……』って言っとけば大抵の年上の男は納得するわよ」

 「最低かよ!」

 思わず従者モードを解いて叫んだゼンに、リサーシャはケラケラと笑いを返した。

 「冗談冗談。本当は『私、新聞部に入ろうと思ってて……良かったら撮らせてくれませんか?』って言ったの」

 「成る程!リサーシャは新聞部に入りたいんですね!」

 「うん、面白そうだしね二人は部活どうするのー?」

 「わたくしはーー……」

 アルカティーナは答えようとしたその時、ガラリと音を立て、教室のドアが開いた。
先生が来たとかと思って見てみると、それは先生ではなく、アルカティーナ達がよく見知った顔だった。

 「アメルダ!もう、遅いわよ?どこ行ってたの」

 笑顔で駆け寄ったリサーシャを見つめるアメルダの瞳はしかし、虚ろだった。
震える唇で、アメルダは何とか声を絞り出す。

 「聞いて皆んな。私、婚約したの」

 久しぶりに近くで見たアメルダは。
今にも泣きだしそうに見えた。

 
 
 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 アメルダ、久しぶりにこんにちはです。
アメルダ主人公の恋愛小説いつか書こうかな。なんか楽しそう。
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